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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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発表の前に

「ルリちゃん、本当にありがとう。撮影機材が加わればより、客観的に自分の演技を見られるから、皆の成長に繋がると思うわ!」

 お姉ちゃんは心から嬉しそうに感謝の言葉をオカルリちゃんに伝えた。

 オカルリちゃんは「いえ、出来ることをしたいと思っただけですし……両親も使って貰ってこそわかることもあるという方針なので、ある意味、皆さんを利用することになってしまうと思うので……」と困り顔で返す。

 お姉ちゃんは「あら、お互いに相手の力を借りて、良い結果を得ることを、利用とは言わないわ」と首を振った。

「支え合いとか、共存とかって言うのよ」

 私はお姉ちゃんが続けた言葉を聞いて、まだ『Win-win』は浸透してないのかと、妙なところに意識が向かう。

 正直、最近、言葉に詰まってしまう理由の一端ではあるので、私としては死活問題なのだけど、回りがそんな言葉もあるのねとサラリと受け入れてしまうので、何か不都合があるわけでは無かった。

 それでも、この世界で一般化していない言葉を使うのは、違和の波紋を広げてしまうかもしれない。

 既に『種』も私を認知している可能性は高いし、数多くやらかしているので、リーちゃん的には今更という評価をしているけど、それでも、まだ『種』側からアクションが無い以上、気付かれていない可能性も残っては居るはずなので、無駄かもしれないけど、ブレーキが踏める範囲は踏もうとは思っているのだ。


 オカルリちゃんの映像機材提供は、三年の先輩だけでなく二年生の先輩にも、大変喜ばれた。

 元の世界では、運動会や体育祭、あるいは授業のダンス振り付けを、スマホで動画撮影して皆で確認検証したりしていたので、映像の価値はもの凄くわかる。

 加えて、リーちゃんの補足によるとこの時代では、まだビデオ機材はもの凄く大きくて、一般家庭のほとんどに流通しきっているわけではない為、手軽に扱えるモノではないものなので、現物に触れたことが無い人がいてもおかしくないようだ。

 未知の機材を使えるというわけでワクワクするし、それが自分たちの演技に活かせるなら、テンションが上がるのは当然だと思う。

 そんなわけで、皆が浮き足立ってしまったところで、春日先輩が手を叩いて、皆の視線を集めた。

「はい! はい! 映像を利用した練習が出来るかもしれないってことに、意識が向いてしまうのは仕方ないけど、まだ、若草物語のオーディションの途中だって事を忘れないで頂戴」

 春日先輩の言葉に、心当たりがあるのであろう何人かの先輩が、少し気まずそうに皆が視線を逸らす。

 そんな面々を春日先輩は敢えて見ていない振りをして「えーと、さっきは三年生の感想の途中だったわよね?」と言いながら、お姉ちゃんに視線を向けた。

「そうね。凛花の……」

 頷いてしゃべり出したお姉ちゃんの口に手を当てて「姫について、語りたいのはわかるけど、まだ、部活中だから、後で姫に囁いてやってくれ」とまどか先輩がストップを掛ける。

 口を塞がれた瞬間は不服そうだったお姉ちゃんが、まどか先輩が言いたいことを言い終わって手を離した時には、どこかうっとりしたような顔で「囁く……」と小さな声で呟いた。


「正直、皆の演技はとても素晴らしかったわ」

 お姉ちゃんは一二年生を見渡しながら、改めてそう口にした。

「ただ、皆の演技の出来が良かっただけに、甲乙付けがたくてね。だから、本来は演技だけで決めるべきだとは思うのだけど、今回はそれに加えて見栄えという点も考慮に加えさせて貰うわ」

 申し訳なさそうな顔で皆を見渡しながら、お姉ちゃんはそう続ける。

 間を開けず、春日先輩が「部長が言う見栄えというのは、身長差を考慮するという意味よ」と説明を加えた。

 更に大下先輩が「四姉妹が並んだ時に、ジョーやメグに背の高い子、エイミーやベスに低い子を当てると言うことだ」と補足してくれる。

「なるべく、過去に使った衣装をも使い回したいから、そういった部分でも調整が入ると思って欲しい」

 まどか先輩がそう続けた後で、お姉ちゃんが「つまり、役の当落は上手いから下手だからということでは無く、全体のバランスや衣装の都合なども含めて決めるということね」と一年生を視界の中心に収めながら話をまとめた。

 つまり、役が決まらなかったとしても、落ち込まないようにということだと思う。

 頑張ったのに結果が伴わないのは悔しいことだし、落ち込むことだってあり得るはずだ。

 一年生は、千夏ちゃんはともかく数日前に練習を始めたばかりで、いきなり壁にぶつかったように感じてしまうかもしれない。

 そう思うと、お姉ちゃん達が役の決定に慎重な態度を見せるのは当然だった。


「では、これから若草物語の四姉妹、メグ、ジョー、ベス、エイミー役の発表をします」

 お姉ちゃんの宣言に、小さく喉が鳴った。

 皆を見渡した後、お姉ちゃんは「今回はダブルキャスト、つまりそれぞれの役に二人ずつ該当者を決めます。その後、A組、B組の二つのグループに分け、本番ではどちらかのグループが演じることになりますどちらの子がA組、B組に配役されるかは、何度か演技を合わせてから調整していきます。ここまでは良いですか?」と続け、皆が一斉に頷く。

 お姉ちゃんも一度大きく頷いてから「先にも言いましたが、様々な事情を加味して合格者を決めました。だから、選ばれなかったからと落ち込まないでください……その、自分が選ばれなかった理由を知りたい子は、後で三年生に聞くように」と告げて深く深呼吸をした。

「それでは、発表していきます」

しばらくの間、予定が立て込んでしまったため、更新が不安定になるかも知れませんが、更新可能な日は16時に掲載しますので、予めご了承ください。

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