オーディション開始
改めて、皆を見渡しながら春日先輩が「今回は若草物語の配役のオーディションです」と言い、皆が静かに頷いた。
本番が迫ってくると、やはり緊張してくる。
そこそこいろんな経験を積んできた私で甲なのだから、他の皆は大丈夫だろうかと思って、周りを見渡した。
結果、全員に目が合う端から笑顔で頷かれる。
『これはあれじゃの、主様が緊張していると思って、皆、大丈夫だと永遠を送ってくれて折るようじゃの』
リーちゃんの見立てに、もの凄くしっくりきてしまった。
実際、キョロキョロと周りのこの様子を伺っていた私を、目が合った皆は見ていたわけだし、相手の目線でみれば、リーちゃんの言う様に写ったに違いない。
ちゃんと事実を伝えねばと思ったのだけど、リーちゃんに『主様、自分よりも緊張している相手がおるとじゃ、自分は落ち着けるというではないか、皆のために道化を演ずるのも年長者の勤めではないかの?』と言われてしまった。
私がそういう役回りをすることで、安心する子がいるかもしれない。
それならば、口を閉ざす以外の選択はないなと、緊張しているわけじゃないと説明するのは諦めた。
「皆には二役ずつ、オーディションを受けてもらう役を伝えてあると思うけど、まずはメインの四姉妹から決めていきます」
春日先輩の進行に合わせて、まどか先輩が移動式の黒板に、メグ、ジョー、ベス、エイミーと四姉妹の名前を書き出した。
まどか先輩が書き出し終えたのを確認してから、春日先輩は「時間が無いので、早速始めていきます」と宣言する。
皆が頷くと、春日先輩は「最初は長女のメグから、順番に、ジョー、ベス、エイミーの順番で進めていきます」と続けた。
改めて皆が頷くのを確認した春日先輩は、お姉ちゃんに目で合図をくりつつ「メグ役のオーディションを受ける子は、部長の演じるジョーを相手役に、演技をして貰います」と言う。
立ち上がったお姉ちゃんは好奇心に満ちた表示で「メグ! 私思うのだけど、やっぱりそれは濃いじゃないかしら?」と興奮気味に言った。
同時に、二年の先輩達が台本のページをめくり始める。
春日先輩は、得意げな顔をするお姉ちゃんを見て、困り顔を浮かべてから「オーディションで演じて貰うのは、ジョーがメグの恋心について指摘するシーンよ」と私たちを見渡すようにして言った。
「オーディションのシーンのセリフを言ってくれたってことね」
うんうんと頷きながら委員長は台本をめくっていく。
皆も委員長に続くように、ページをめくり、少しで遅れてしまった私も台本の該当のページに辿り着けた。
オーディションは想像よりも早く進行していった。
経験の差を考慮して、二年生の候補、一年生の候補という順番で、演技をして行く。
メグ役候補全員の演技が終わっても、合否は発表されず、その間ジョーの演技に入った。
ジョー役のオーディションは、先ほどのメグとジョーのシーンで行われ、メグ役にはまどか先輩が入る。
既にお姉ちゃんのジョーを何度も見てしまったこともあって、私だったら引き摺られて島そうだなと思ったけど、流石と言うべきか二年生の先輩達は独自色を見せてくれた。
さすが先輩だと覆ったのだけど、ユミリン達も負けてはいない。
ユミリンはただセリフを読み上げるわけではなく、自分の言葉のように自然にセリフを繰り出していた。
言い終えるまで集中を続けていたのか、終わりの声がかかると同時に、大きく息を吐き出して、ライバルと認め合った千夏ちゃんに笑みを向ける。
対して、千夏ちゃんも黙したまま笑みを返すというライバルらしいやりとりを交わし合った。
なんだかわかり合ってる様子の二人を見ていると、出所のわからないモヤモヤした感情がわき上がる。
とはいえ、これを言葉にしてしまえば、変に気遣わせることに案るのはわかるので、一旦胸の奥に潜めておくことにした。
私の割り振られたオーディションを受ける役は、ベスとエイミーだ。
最初に春日先輩が宣言したとおり、ベス、エイミーの順で実施する。
ベスの部屋に訪れたエイミーが、本を読んで貰うのを希望し、ベスがそれに応えるというシーンだ。
おそらくだけど、エイミーのオーディションで使うシーンも同じ場所だろう。
ちなみに、ベスの際の相方、エイミーはまどか先輩が演じるそうだ。
正直、まどか先輩の演技を見るまでは、演じている姿を上手く想像出来無かったのだけど、いざ目にしてみれば『エイミー』の正解を見せられたような気分になる。
それほどに、まどか先輩の演じるエイミーは完璧だった。
甘えたいと思いながらも踏み込めず、それでも僅かな機体を覗かせるいじらしい姿に、胸がキュッと締め付けられる。
見ているだけで、護ってあげなきゃとか、全力で願いを叶えてあげたいと思わせるまどか先輩のエイミーを見ていると、 まどか先輩や千夏ちゃんが、妹を欲しがる理由がちょっとわかってしまった。
緋馬織ではユイちゃんもマイちゃんもしっかりしていたから、こういう気持ちにはなら無かったなと思ったところで、私は気付きたくなかった事実に気付く。
この世界の私が、まどか先輩のエイミー並に頼りないというか、手を差し伸べたいと思ってしまう危なっかしさがあるように見えているのではないか……私は頭に浮かんだそれを頭をフルって彼方へ追いやった。
しばらくの間、予定が立て込んでしまったため、更新が不安定になるかも知れませんが、更新可能な日は16時に掲載しますので、予めご了承ください。




