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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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対策と本心

 クラスメイトから好評を得たことで、自分でも驚くほど気持ちが落ち着いているのを感じた私は、午後の授業に挑みながら、少し考える……というよりは、相談することにした。

『授業は良いのかの?』

 リーちゃんの問い掛けに、私は『確かに三十年前だと、元の世界での情報と違う部分もあるけど、数学は割と変化のない科目だから大丈夫』と返す。

 ノートの2/3を使って板書を取りつつ、リーちゃんに『それに、まったく聞く気が無いわけじゃ無いよ。軸足は授業に置くつもりだし』と伝えた。

 加えて、先生が重点的に説明している部分は、開いた1/3のスペースに書き取れている。

 気持ちの上でも、行動でも、授業と思考を両立できる事は示せてるはずだ。


『まあ、わらわとしては、主様の願いに、否はないのじゃがな』

 なんだかんだと、そう言って協力してくれるリーちゃんは本当にありがたい相棒だ。

 心の中で理解ある相棒への感謝の気持ちを膨らませていると、機械の身体か精神体しか持たないリーちゃんが必要の無い咳払いをしてくる。

 そういえば、照れる姿も可愛いなと、最近よく思うようになった。

『主様』

 明らかに苦情だとわかる呼びかけに対して、私は頭の中で謝罪する。

 即座に謝罪したせいか、リーちゃんはどこか、呆れと諦めの混ざった声で『わらわは構わぬのじゃが……主様はすぐ過剰反応をしてしまう故、急に声を上げないように気をつけるのじゃ。流石に声を出してしまっては、どのようにもフォローできるからの』と言ってきた。

 グサグサと心に刺さる言葉の数々は、否定できる部分がなく、私は悔しく思いながらも『がんばります』と返す。

 屈辱というか、敗北感のようなモノを私が抱いているのが伝わったのだろうリーちゃんは、どこか上機嫌に『主様なら出来ると信じて折るのじゃ』と挑発染みた言葉を放ってきた。


『やっぱり、リーちゃんに協力して貰うのが一番……だよね?』

『そうじゃなぁ、人間が出来る事で意思を示すと、後々ややこしいことになりかねんからの』

 私の能力のことを言いふらさないで欲しいというのが、望むところだ。

 この世界は、あくまで『種』によって生み出された虚構の世界である。

 例え、この世界の支配者になろうと、神様の代わりに収まろうと、アイドルとして芸能界に入ろうと、夢の中での出来事と相違は無いはずだ。

 まあ、唯一懸念があるとすれば、成長を果たした『種』の影響は元の世界にも現れるという点である。

 ただ、この世界は今のところ、過去の世界を映し出していると言うだけで、悪影響があるとも思えなかった。

 本来の『種世界』であれば、炎が荒れ狂っていたり、氷河期を思わせるほど寒冷化していたり、地面が揺れ続けていたり、水で満たされていたりと、明確な異常が起こっている。

 それが大火災や火山の爆発、急な冷え込み、大地震、大洪水といった異常気象や現象に繋がるのだ。

 今現在積極的に『種』を探さず、様子見を続けているのも、この世界が完成した時にどう影響するのかの予測が立っていないというのも大きな理由なのである。

 故に、世界に対して必要以上の刺激を与えるような変化は避けるべきなのだ。

 巫女衣装への服の変化やリーちゃんの存在伝えてしまったことなど、これまでのやらかしについても本来は避けるべき事であって、取り返しの付かないことの可能性はゼロではない。

 そんなわけで、これ以上の影響を避けるためには、話が大きくならないようにするしかないのだ。


『本当に、今更じゃと思うのじゃが……』

 リーちゃんの発言の裏に、今更隠蔽すること自体が無駄だとか、私がやらかすから意味ないんじゃないかという思考が読み取れるのは、私の彼女への理解度が上がったからなのか、今回は本心を隠す気が無いからなのかはわからないが、正直、頷ける部分は大きかった。

 どうせ思考を読まれるのだからと、私は諦めて、リーちゃんに『皆から持ち上げられるだけでも限界なのに、神社関係の人達まで持ち上げだしたら、心が持たない』と訴える。

 ちゃんと気持ちをコントロールできるようになっていれば、ある射場持ち上げられるのが当然なキャラクターに身も心もなりきれていれば、涼しい顔で受け止められたかもしれないのだが、そんなすキリは育っていないのだ。

 頭の中で自分の不甲斐なさと共に、どうしても割り切れないことを訴えた結果、リーちゃんが『まあ、主様の精神が安定していない状態では、緊急事態には備えられないからの』と、もの凄く譲歩の上で頷いて貰う。

 私としては多少情けないとは思うのだけど、それでも無理をして破綻するの方が無責任だと、自己弁護をして、心の状態を安定させて、健全に保つための作戦を考える方向で、リーちゃんの協力を取り付けることは出来そうだ。

 状況に安堵した私は、思わず溜め息を吐き出してしまう。

 タイミングが悪いことに、それに気付いてしまった先生に「林田、大丈夫か?」と声を掛けられてしまった。

「だ、大丈夫です、なんだか、少し疲労感があって」

 咄嗟にそう返す私に、先生は少し心配そうな顔で「そうか、お前は身体が悪いときいている。もし辛いなら保健室に行くか?」と言ってくれる。

 先生の気遣いがチクチクと罪悪感を刺激してきて、居たたまれない気持ちになる中、私はどうにか作り笑いを浮かべて「大丈夫そうです。ご心配ありがとうございます」と言って頭を下げた。

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