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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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伝播と対策

 私が頷いてから少し、委員長はもの凄く皺の寄った自らの眉間をほぐしてから盛大に溜め息を吐き出した。

 それだけでもの凄く言い難いことなのだなと察する内容に、嫌な予感がもの凄い速度で膨らみ出す。

 溜め息を吐き出す時に真下を向いていた委員長の顔が持ち上がり、その顔に覚悟が宿った。

 聞きたくない気持ちで一杯だけど、耳を塞ぐわけにはいかないので、軽く唇を噛んで、委員長の口から放たれる言葉を待つ。

 そして、更に少しの間を置いてから「志津ちゃんが、思いっきり言いふらしたの、神主の神子さんや、大野先生、それに、氏子総会に集まるような幹部クラスの人達に」と勢い任せに委員長は一息で言い切った。

 荒く肩で息をしている委員長を見ながら、私は「まあ、仕方ないよ……うん」と声を掛ける。

 委員長はもの凄くゆっくりと床を向いていた顔を、首だけ捻って、こちらに向けると「神様のお使い扱いだけど、大丈夫?」とか細い声で聞いてきた。

 内容が想定外だったので聞き取りにくかったのもあって、私は「え?」と声を漏らす。

 一方、委員長は身体を起こしつつ、グッと触れそうな程近くまで顔を寄せて来て「神子さんや大野先生だけじゃなくて、ウチのお父さん達まで、神使の巫女が現れたに違いない、あの儀式もこの儀式も復活できないだろうかって真夜中まで大騒ぎだったけど……大丈夫だと思う?」と、引きつった顔で聞いてきた。

 委員長の表情に、私は正直怖じ気づいてしまう。

「ウチまで聞こえてたんだよぉ、熱の籠もった討論がぁ」

 サラッと齎された情報に、私は驚いて報告主である茜ちゃんを振り返った。

 バッチリと視線の合った私に、茜ちゃんは困った顔で「神社とぉ、ウチの間にぃ、大きな壁があるでしょぉ? だからぁ、普段はあんまり神社の音って聞こえてこないのよぉ……境内で遊んでる小学生の声もあんまり聞こえないのぉ」と情報を追加してくる。

 茜ちゃんの話を聞いて、恐る恐る視線を戻した私が目にした委員長は、沈痛な面持ちで深く頷いた。

 つまり、子供の遊び声を上回る音量の話し声が交わされる状況になっていたということだろう。

 その事に思い至った私に、委員長は「大丈夫、凛花ちゃんには、指一本触れさせないし、全力で護るから!」とかなり真剣な顔で言った。

 委員長の顔があまりにも硬くシリアスだったので「えっと……そんなに大変そうなの?」と尋ねた自分の声が、私が思うよりも不安そうに聞こえる。

 そんな私の言葉に答えてくれたのはオカルリちゃんだった。

「普通は起こらないことが起きたワケですからね。盛り上がらないわけはないですよ」

 オカルリちゃんは、腕組みをして深く頷いてから、声を潜めて委員長と茜ちゃんに「ところで、巫女装束の件は?」と問い掛ける。

 言われて、そう言えば衣装が変わったというごまかしのきかない出来事があったことを思い出した。

 そんな私の顔を見たオカルリちゃんは明らかに、私が忘れていたと察したと言わんばかりの困り顔を見せる。

 何か言わなければと思った私よりも先に、首を左右に振りながら委員長が「そこまでは、流石に」と答えを口にした。

 オカルリちゃんは「ふむ」と口にしてから「それなら、あまり騒ぎ立てると、神様のお気持ちを損ねてしまうかもしれないって、それとなく伝えるのはどうかな?」と私、委員長、茜ちゃんを見ながら言う。

 本当は私が何か言わなければいけない気もするのだけど、委員長に視線を向けることで、責任から逃げてしまった。

 対して、委員長は少し考えてから「……そうね。余り盛り上がったり、凛花ちゃんの話が尾ひれが付いて広まらないようにした方が良いわね」と私を見ながら言う。

 私は委員長に向かって大きく頷いて「そ、そうしてくれると、気持ちの上で、スゴく助かります」と伝えた。

 茜ちゃんは「凛花ちゃんはぁ、控えめだねぇ」と苦笑した後で、私の手に自らの手を被せるようにして握りしめながら「でもぉ、私もその気持ちはぁ、わかるかもぉ」と言ってくれる。

「凛花様が目立ちたくないのは皆わかってますから」

 そう言ってオカルリちゃんも微笑みかけてくれた。

「でも、どうするの? 神様のお告げがあったって、凛花ちゃんが言ったら、それはそれで収まらないんじゃない?」

 加代ちゃんが不安そうな顔で手を挙げながら言う。

「たしかに、お告げが聞けるってなったら、そもそも神様が光で歓迎を示したか持って話と重なって、逆に収拾つかなくなりそうだな」

 ユミリンの言葉は、私を含めて誰も否定できないくらいあり得ると思える内容だった。

「問題なければぁ、私がぁ、その役目を受けても良かったんだけどぉ」

 名乗り出てくれた茜ちゃんに、委員長は「あーちゃんは、お寺の子だから、不思議な力があるという説得力はあるけど……」と困り顔になる。

「氏子の誰かではなく、お隣のお寺の子に神託勝手なると、それはそれでややこしくなりそうですね」

 オカルリちゃんは委員長の言葉を引き継ぐようにして、そう言い添えた。

 結局そのまま、神様の意向を伝える術を思いつけず、とりあえず、後で話すことに決める。

 結果、午前の授業がやや上の空になってしまったにも拘わらず、私は上手いアイデアを思い付くことが出来無かった。

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