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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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朝の風景

 ユミリンを起こしたところで、お父さんも加わり全員で朝食を摂ることになった。

 廊下から流れこんできたお味噌の匂いは、お母さんの作ってくれたお味噌汁の匂いで、今日はご飯に鮭の塩焼きがメインのおかずで付く。

 お弁当にも入っているきんぴらゴボウや昆布の佃煮、ポテトサラダ、お漬物などの小皿に載ったおかずもいくつか並べられていた。

 席順は夕飯と同じく、お父さんお母さんが並んで、対面にユミリンを挟むように私とお姉ちゃんが並ぶ。

 お父さんは既にスーツに着替え終えていて、ネクタイだけ締めていない状態だ。

 ちなみに私もユミリンもお姉ちゃんも未だ制服に着替えていないので、お父さんだけ休日出勤みたいになってしまっているのが少し面白い。

 そう言えば、結構衝撃的だったのだけど、この時代は土曜日も普通に時間割が組まれていて、普通に授業が行われているようだ。

 京一として教育実習に行った先のベテランの先生から、完全週休二日制の前に、月に二回、第二、第四土曜が休みというテスト期間を挟んで移行されたという話を聞いていたので、知らなかったことでは無いけど、やはり驚きがある。

 一応、違和感を持たれないように、確認はしていないけど、会社なども未だ週休二日にはなっていなさそうだ。


 食事を終えたお父さんが鏡を確認せずに手慣れた所作でネクタイを締め終えると、私たちを順番に笑顔で見てから「それじゃあ、行ってきます」と口にした。

 私、ユミリン、お姉ちゃんが声を揃えて「「「いってらっしゃい」」」と返すと、満足そうに頷いたお父さんが今を出ていく。

 お母さんはお父さんの鞄を持って、その後を追うように玄関に向かって行った。

「さて、私たちは片付けをするわよ!」

 お姉ちゃんが少し大きめの声で、指示を出したのは、ユミリンがいるからと言うのもあるだろうけど、玄関で仲睦まじくしている両親の会話を聞かせないという意図もあるんだろうなと思う。

 何しろ、聞いているだけで恥ずかしくなりそうな熱を感じる会話を繰り出していた。

 私の分身であるハズの京一お父さんも月子お母さんに、出かけ際に愛を語らっていたのを聞いているので、血筋かもしれないと思う。

 そもそも私は玄関で、他にも誰かいるときに愛を語ろうとか思わないので、林田家の男子にだけ発言する要素なんだろうと思い込むことにした。

 ……と、余計なことを考えていると逆上せてしまいそうだったので、おかずを片付けてくれているお姉ちゃんの邪魔にならないように、食器類をユミリンと手分けして流しに運ぶ。

 おおよそ運び終わったところで、玄関から戻ってきたお母さんが「後は私がするから、皆は制服に着替えちゃいなさい」と声を掛けてきた。

 私、ユミリン、お姉ちゃんが、自分の手にしているものを流しや冷蔵庫に収めたところで、お母さんは「皆、ありがとうね」と労いの言葉を掛けてくれる。

 思わず笑みを浮かべてしまったのは私だけ花買ったようで、ユミリンもお姉ちゃんも照れたようにはにかんでいた。


 部屋に戻ってきて、ユミリンの使っていたお布団を手分けして片付けたところで、皆で一斉に着替えることになった。

「凛花、お医者さんでお腹をめくって見せるかもしれないから、今日はスリップじゃ無くて、シャツにしておいた方が良いわよ」

 そう言いながらお姉ちゃんは私のだと思われるタンスから半袖よりもやや袖の長いシャツと、白い靴下、それとブルマを出してくれる。

「ありがとう、お姉ちゃん」

 お礼を言ってそれらを受け取ると、お姉ちゃんが「お腹冷えそうなら毛糸のパンツにしておく?」と聞いてきたので、私は首を横に振って「これでいいよ」と返した。

 すると、横からユミリンが手を伸ばしてきて、受け取った服の一番上にあったブルマを掴む。

「体育用のじゃ無いけど、大丈夫? 薄くない?」

 ユミリンはそう言って私に聞いてきた。

 言われて気付いたけど、確かに体育の時に吐いたものとは記事が違っているように見える。

 その事に今気付いたばかりの私に、上手い返しを思い浮かべることは出来なかった。

 どう答えたら良いだろうと思っていると、お姉ちゃんが「体育用のだと、一日重ね履きするのは、蒸れたりするからー、寒かったら履き替える方が良いんじゃ無いかしら」と提案してくれる。

 私はお姉ちゃんに「そうする」と頷くと、ユミリンは「お腹痛かったら我慢しちゃ駄目だよ」と言って洗濯物の上に持っていたブルマを乗せた。

「いざとなったら、腹巻き使うから大丈夫……あと、毛糸のパンツも」

 私がそう伝えると、ユミリンとお姉ちゃんが顔を見合わせてしまう。

 何だろうと思っていると、こちらを見たユミリンが「毛糸のパンツはスカートで見えないと思うけど、腹巻きを使うの?」と心配そうな顔で聞かれてしまった。

「え、うん……ダメかな?」

 私がそう切り返すと、再びユミリンとお姉ちゃんが顔を見合わせる。

 そして、今度はお姉ちゃんが「ダメでは無いけど、見られたら恥ずかしくない? あと、からかわれたりするかもしれないわよ」と真剣な顔で言われてしまった。

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