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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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目覚めと情報交換

 正直、興奮で眠れないかもしれないと思っていたのだけど、予測に反して、私はしっかりと眠ることが出来たようだ。

 千夏ちゃんとユミリンの寝息を聞きながら、ゆっくりと目を開ける。

 二人を起こさないように気をつけて身体を起こして、軽く後ろを振り返った。

 グロウランプが付いているお陰で、薄暗いとは言え、不自由が無い程度には見渡せている。

 目覚まし時計はアナログタイプで、秒針の動きはわからないけど、長針、短針の先端、それから文字盤の数字には蓄光塗料が使われているので、起き出して近づかなくても時間を読み取ることが出来た。

『五時過ぎくらいか……』

 目覚ましをセットした時間までは、まだ三十分近くあるので、私は一旦布団に寝転がる。

 目を開けたままだと上手くいかない気がして、目を閉じて相棒に声を掛けた。


『主様』

 相棒からの返事があったことに、ホッとしながら、私は外の世界との繋がりについて尋ねた。

『正直、難航していると言わざるを得ないのじゃ』

 そう言った後で、リーちゃんはこの世界と元の世界との時間の進み方の違いが一番問題だと解説してくれる。

 こちらから送信する情報の信号は早すぎるのだ。

 一方で、向こうから送られる情報はもの凄く遅い。

 現在のデジタル技術の根幹は、0か1か、YESかNOかの判断を気の遠くなるほどの数を繰り返し固有化していた。

 究極的に言えば、この無数の繰り返しの信号を送受信することが、デジタル世界における情報伝達なのである。

 当然、ヴァイアとアミダという次世代コンピューターとAIを基幹にしているリーちゃんやオリジン達も情報の授受、共有化はこのデジタル方式を用いていた。

 時間の流れの違いで、こちらから送る情報はもの凄く早まってしまうため、元の世界では全部の信号が一塊になってしまい認知できず、向こうからの情報は一つの信号が長くなりすぎて、全体像を受信までに恐ろしく時間がかかってしまうのである。

 だが、リーちゃんも無策という訳ではなかった。

 情報が一塊になってしまうなら、一つの信号の長さを長くすれば良い。

 そして、受信に時間がかかるとはいえ、信号を受信できないわけではないのだ。

 リアルタイムでの情報交換は到底無理だけど、この世界で1週間程度時間を掛ければ、近況報告程度は可能だろうというところまで来ているらしい。

 ただ、リーちゃんが状況から送受信の方針を改めたことで、受信完了までは時間を掛かるが、情報の受け取りのめどは立ったものの、元の世界では、オリジン達が同じ結論に達するまで、どの程度かかるかわからないので、相互情報交換がいつ出来るようになるかは、未だ不明のようだ。

 それでも、リーちゃんはオリジンならば、途中で同じ結論に至るだろうと確信している。

 自分がこの方法に到達したのなら、自分と同じシステムで思考するオリジンも遅かれ早かれ同じ結論に至るだろうとのことだった。


 リーちゃんとの話から、外の世界との連絡にはもうしばらくかかりそうだと判断したところで、人が動く気配が伝わってきた。

 付き合ってくれたリーちゃんにお礼を言ってから、目を開けて音のした方を向く。

 すると、丁度、お姉ちゃんが身体を起こしたところだった。

 周囲を確認している様子のお姉ちゃんに、私が起きていることを伝えるために、寝転んだまま軽く手を振って合図を送る。

 それに気付いたらしいお姉ちゃんが、手を振り返してくれた。


 ユミリンと千夏ちゃんを起こさないように、お姉ちゃんと二人で部屋を抜け出して、顔を洗いに洗面所に向かった。

 途中でお姉ちゃんに「早いわね、凛花」と言われたので、心当たりを口にする。

「……練習、楽しみだったから、かな……」

 私の返しに、お姉ちゃんは「昨日ノよりは、凛花は練習できなかったものね」と苦笑した。

「でも、寝るのも大事だし、夜更かしは身体に良くないから、仕方ないよ」

 お姉ちゃんは私の頭を撫でながら「でも、皆を送っていってくれたせいだから、凛花に負担を掛けちゃったわね」と言う。

「車に乗っていただけだし、運転してくれたお父さんと違って、私ほぼ何もしてないよ」

「凛花は何にもしてないって言うけど、私なら凛花に送って貰えて嬉しいと思うわ。きっと皆も同じだと思うわよ」

 お姉ちゃんに真っ直ぐと言われてしまった私は、気恥ずかしさで思わず視線を逸らしてしまった。

 でも、無視するのは違うなと思って「そうだたら良いな」と口にする。

 すると、お姉ちゃんにより一層力を込めて頭を撫でられた。


 ジリリリリリリ。

 顔を洗い終えたところで、二階の部屋からベルの鳴る音が聞こえてきた。

「あー、止めてくれば良かった」

 そう口にした私に「起きる予定だったし、時間は皆納得していたし、特に問題ないわよ」とお姉ちゃんは返す。

 更に、いつの間にか手にしていたブラシで私の髪を梳き始めた。

「お姉ちゃん?」

「あ、髪やらせてー」

 既に頭頂から毛先に作業部位が移っているのに、今更、許諾を求めたお姉ちゃんに、私は「今更?」と言ってしまう。

 お姉ちゃんは笑いながら「凛花は嫌がらないとは思ってるけど、でも確認は大事だなと思って」と作業の手を止めること無く言った。

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