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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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神社再び

「急に押しかけてすみませんでした」

 夕食の後、帰り際になって、委員長はお母さんとお父さんに、そう言って頭を下げた。

「ウチはお客さんが一杯の方が嬉しいから、嫌じゃなければいつでも食べに来て頂戴」

 お母さんはにこやかな顔でそう返す。

 お父さんは「賑やかなのは良いことだからね。それに、これからは今まで以上にお世話になるわけだから、こちらこそ、凛花をよろしく頼むよ」と言って頭を下げた。

 委員長は、恐縮しながらも「こちらこそよろしくお願いします。私なりの全力で凛花さんを支えるつもりです!」と清々しい表情で断言する。

 ここで、茜ちゃんが「私はぁ、あんまり役に立てないですけどぉ、遊びに来て良いですかぁ?」と手を挙げながら尋ねた。

「凛花のお友達だもの、大歓迎よ! それに茜ちゃん。茜ちゃんは雰囲気が柔らかい子だから、居てくれるだけで、皆穏やかな気持ちになれるわ。少なくとも、役に立てないなんて事は無いわよ」

 お母さんの言葉に、茜ちゃんは感激したようで、目を潤ませながら「凛花ちゃんのお母さん~」と吐息混じりの声を出す。

 そんな茜ちゃんにお母さんは柔らかな笑みを浮かべて、無言で頭を撫でた。


 今回は二回に分けて、皆をお家に送ることになった。

 運転手のお父さんと同行者として私が付きそう。

 そんなわけで、私と大塔さんはお姉ちゃん達居残り組に、出かける挨拶をした。

「それじゃあ、行ってくるよ」

「行ってきます!」

 最初に送る委員長と茜ちゃん、それにオカルリちゃんの三人も、居残り組の皆と挨拶を交わす。

「じゃあ、皆、また明日、学校で!」

「また明日ぁ~」

「では、お先に失礼します。機材の準備はお願いしているんで、また明日作戦会議しましょうね。千夏さん」

 三人の挨拶に対し、まどか先輩が「いよいよ、オーディションだから、余裕があったら練習してきて」と言ってから、無理なら良いよと言い加えた。

 史ちゃんは「凛花様をお願いします」と、何故か送りに行く私のことを皆に託す。

 加代ちゃんはそんな史ちゃんの発言を完全にスルーして「明日も頑張ろうね!」と皆医務課って手を振った。

 千夏ちゃんは「ルーちゃん、ありがとう」と言ってから、何かこそこそとオカルリちゃんに耳打ちをする。

 オカルリちゃんは、千夏ちゃんの話を聞いた後で「わかりました!」と答えて、敬礼をして見せた。

 何の話をしたんだろうと二人のやりとりが気になったのだけど、リーちゃんが『まだ主様の家に居たいから慌てなくて良いと伝えていたようじゃぞ』と教えてくれる。

 千夏ちゃんも一人では不安だろうし、人が多い我が家は心強いだろうから、それも当然かと思うと共に、耳打ちしたのは皆に知られたくなかったからだろうと思ったわツィは知らん振りを決め込むことにした。


 委員長の案内で、昼間、車で送って貰った駐車場の、使って良いエリアに誘導して貰った。

 停車後、委員長と茜ちゃんは後部座席から降りてそれぞれ挨拶してくれる。

「ありがとう、凛花ちゃん、お父様も」

「またあしたぁ、送ってくれてありがとうございましたぁ」

 助手席に座っていた私は二人を見送るためと、この先、オカルリちゃんの家までは後部座席に移るつもりだったので社外に出た。

 既に火が落ちてしまっているので、昼間とは印象が違っている。

 それでも、夜の境内には月明かりが満ちていて、他よりも明るく浮き上がって見えた。

 二人へ返答するのも忘れて、私が神社の境内を見ていると、委員長が「ホント、スゴく歓迎されてるみたいね、凛花ちゃん」と口にする。

 続けて、茜ちゃんが「お昼間もぉ、太陽がスポットライトみたいにぃ参道を照らしてたけどぉ、夜も照らすなんてぇ、さすが凛花ちゃん~」と言いながら拍手を始めた。

「い、いや、歓迎してくれているのなら光栄だけど、偶然じゃないかな?」

 私の言葉に、茜ちゃんは「お隣としてぇ、言わせて貰うとぉ、こういう風に参道が浮き上がるの見たことないよぉ」と言って首を振る。

 委員長も「志津ちゃんより、喜んでいるのかも知れないわ」と、冗談とも本気と盛るか無いことを口にした。

 志津さんよりもなんて言われてしまった私は、そこは否定しなければと思って「さすがに、それは……」と口にしたところで、後部座席から顔を出したオカルリちゃんに「ただの偶然かも知れませんけど、それでもこうして凛花様が目にしたと言うことは、意味があることだと思いますよ」と言われてしまい否定の言葉を続けられなくなってしまう。

 オカルリちゃんが言うように意味がある様な気がするし、もしそうなら、否定するのはなんだか歓迎を拒否するようで違うと思ったのだ。

 なので、私は「志津さんより喜んでいるって事は無いと思います」と、流せない部分だけ否定する。

 対して、委員長は「そうかしら?」と言って月明かりが浮き上がらせていた参道を指さした。

「あ、なんかぁ、さっきより、光を増してる?」

 首を傾げた茜ちゃんに続いて、オカルリちゃんが「歓迎をアピールしているような感じですね」と真面目な顔で言った。

 ここで黙っていると、志津さんよりモノ部分が実体を帯びてしまいそうだったので、私は神社に向かって「歓迎してくださってありがとうございます!」と言って頭を下げる。

 しばらく頭を下げたままでいた私が、頭を上げると、その瞬間、本殿からパァッとほんの一瞬だけ光が放たれた。

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