表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
359/477

決心と真心

 いくつもの微笑ましいモノを見るような優しい目が私に向けられていた。

 原因は間違いなく、私の『将来なりたいモノ』を聞いたからに他ならない。

 とはいえ、口走ってしまったのは私だし、こういう目を向けられるのも仕方ないなと思える内容だった。

 が、だからといって、皆の視線に耐えられると言うわけではない。

 つい、威嚇のために「何か、言いたいことでもありますか?」と問い掛ける言葉がとげとげしくなってしまった。

 すると、史ちゃんが「とても、凛花様らしいと思います。私は全力で応援します」と言う。

 そんな史ちゃんに、ユミリンが「相手が誰でも?」と聞いた瞬間、空気が一瞬で凍り付いた。


 張り詰めた空気を破ったのはお姉ちゃんだった。

「り、り、り、り、凛花ちゃん……そ、その、こ、候補……お、お嫁さんになりたい相手は決まっているの?」

 お姉ちゃんが明らかに動揺しているからか、私は驚くほど冷静になる。

 正直なことを言えば、心に決めた穂と入るし、彼の存在こそが、私が元の世界に戻らなきゃいけない一番大事な理由だ。

 とはいえ、その人はこの世界には居ないし、私以外に存在を知っているのはリーちゃんしか今はいない。

 私の反応を伺っている皆の様子からして、ここには居ない人を対象として言うのはいろいろ面倒くさいことになりそうだ。

 なので、私は敢えて何も言わずに、顎を引いて、視線を落とすのと上目遣いを繰り返す。

 そうしているうちに、お姉ちゃんの方から「もしかして、具体的な相手は居ないの?」と聞いてきた。

「居ないというか……」

 先輩がいないとは言いたくなくて、そこまでは口にしてしまったものの、続く言葉を口にすることは出来無い。

 そんな私をジッと見てから、お姉ちゃんは「由美ちゃん」とユミリンに声を掛けた。

 名前を呼ばれただけだというのに、聞きたい内容を導き出したのであろうユミリンは「私の知る限り、特定の男子と仲良くしては無いと思う」と言う。

 一瞬穏やかになったお姉ちゃんの表情が、茜ちゃんの「そうかなぁ?」という呟きで、一気に険しくなった。

 強張った顔で、お姉ちゃんは茜ちゃんに「詳しく聞いても?」と声を掛ける。

 茜ちゃんは「凛花ちゃんは女子と話していることが多いけどぉ、渡辺君とはぁ、よく話してる気がするぅ」と思い出す様に視線を上に向けながらそう答えた。

「渡辺君って、渡辺、何君かしら?」

「え!?」

 お姉ちゃんの問いに、か鐘ちゃんは明らかに困ったと言おう表情を浮かべてから、委員長に「み、ミーちゃん」と助けを求める。

 委員長は「渡辺太一君よ」とさらりと答えた。

 ただ、委員長はそこで言葉を終わりにせずに「でも、お姉さん、渡辺君は凛花ちゃんのお隣の席というだけで、私の目からは、恋愛感情を抱いているようには見えませんでしたよ」と口にしてから少し間を開ける。

 その後で「凛花ちゃんの方からは」と委員長は言い加えた。


「今は、凛花から気持ちが向いていないのなら良いわ!」

 力一杯拳を握ってお姉ちゃんはそう断言した。

「良枝……凛花ちゃんの恋愛を阻む権利はいくら姉でも、君には無いと思うけど?」

 まどか先輩が呆れた様子で、お姉ちゃんにそう言ってくれる。

 対してお姉ちゃんは「いつかは、いつかは受け入れるけど、今はまだ早いと思うのよ!」と言い切った。

「もっとしっかりと、経験を積んで、凛花がちゃんと身の守り方を学んでからなら、受け入れるわ! でも、まだ、早いと思うの!」

 そう訴えるお姉ちゃんに、パチパチと拍手して千夏ちゃんが「確かに! まだ、凛花ちゃんに恋愛は早いと思います!」と同調する。

 そんな千夏ちゃんとお姉ちゃんに対して、恐る恐ると言った様子で、それでもしっかりと加代ちゃんが「流石に、それはリンちゃんの決めることじゃないかなぁ」と言ってくれた。

 更に史ちゃんも「私も凛花様に傷ついて欲しくはありません……けれど、だからといって凛花様の自由を奪ってしまうのは違う気がします」と主張してくれる。

 お姉ちゃんは「確かに、史ちゃんの言うこともわかるわ」と、史ちゃんに対して真面目な顔で大きく頷いた。

「でも、凛花にはまだ、免疫がないと思うの……自由奔放であって欲しいけど、悪い男とまではいかないまでも、まだ配慮の出来無い相手に振り回されて傷ついて欲しくないのよ」

 お姉ちゃんが真剣な表情と共に放った言葉に、史ちゃんも「確かに、難しいところですね」と頷いて、二人揃って腕組みをして考え込んでしまう。

 真剣に考えてくれているのがわかるだけに、何も言えなくなってしまった私は、状況にただ困ることしか出来無かった。


『主様は皆に愛されておるようじゃな』

 久しぶりに私の頭の上に飛び乗ってきたリーちゃんがそう言って、私の頭の中に声を響かせた。

 私は頭の中で『嬉しいけど、正直、複雑だよ』と答える。

 更に、リーちゃんが『それで、東雲の小僧のことを伝えるつもりかの?』と、わざわざ確認してきたので、私は『もし、その機会があれば、お世話になります』とだけ返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ