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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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心づもり

「とりあえず、このビデオを元に、振り付けを抜き出しましょう。大丈夫、私もあーちゃんもずっと見てきたから、映像ではわからない部分も補えると思うわ」

 委員長はそう言って笑顔を見せてくれた。

 茜ちゃんも「それでもぉ、わからないことはぁ、メモを取ってぇ、後でぇ、しーちゃんに聞けばいいよぉ」と言ってくれる。

「二人とも、よろしくお願いします」

 私はそう言って二人に頭を下げてから、順番に皆と視線を合わせてから「皆も、協力してくれると嬉しいです」と言い加えた。

 すると、真っ先にまどか先輩が「もちろん、出来る手助けは何でもするよ。そもそも、私としても神楽に関われる機会なんて、青にも先にもないだろうから、勉強になるしね」と言ってくれる。

「神楽にはそれぞれの所作に意味があると言いますから、考察するのも楽しそうです!」

 目をキラキラさせながらオカルリちゃんが言い、茜ちゃんが「ルリちゃんはぁ、そういうのにもぉ、興味があるのねぇ」と反応した。

「どうも成り立ちとか、どこにある意味とか、どうして今の流れに到達したのかと言うことに興味を引かれるんですよ……両親が研究技術畑の人間なので、その影響かも知れませんね」

 どこか恥ずかしそうに言って頭を掻くオカルリちゃんに、私は「そうだね。成り立ちを知っていると、より動きの意味を理解できるだろうし、理解が深まれば、よりよくできる。そうすれば、喜んで貰えるよね!」と頭に浮かんだままを伝える。

 私の発言に、勢いがつきすぎていた姓だろうか、オカルリちゃんはこちらを見たまま目を丸くして固まってしまっていた。

 思いがけない反応に、どうしたのだろうと思ったところで、史ちゃんから「凛花様が熱心に取り組むのですから、観客の皆さんも喜んでくれるのは間違いないでしょう」と言ってくれる。

 私は「そうだといいな」と頷いて「それに」と言い添えてから、自分の思いと考えを続けた。

「任せてくださった神主さんや氏子の人達に、任せて良かったって思って欲しいし、何より神様が皆が言ってくれたみたいに、私を選んでくれたなら、その期待にも応えたい……上手く出来無かったって、終わってから後悔したくないしね!」


 私が発言した直後、皆が黙り込んでしまったので、それだけでもの凄い不安に駆られてしまった。

 失言の類いはしていないだろうかと、自分の発言を振り返るが心当たりは無い。

 時間の経過と共に、私の心臓がドンドンと鼓動を早くしていった。

 逃げ出したい気持ちで一杯になったところで、委員長が口を開く。

「改めて、凛花ちゃんは、選ばれたんだなって思わせる言葉ね」

 しみじみという委員長の言葉を切っ掛けに、皆が自分の考えを口にし出した。

「確かに、お客さんだけに目が行きそうなのに、選んでくれた人や神様にもって、リンちゃんは考えるんだねぇ」

 加代ちゃんの発言に、史ちゃんが「凛花様は視野が広いですからね」と誇らしげに胸を張る。

 既に、史ちゃんが私を我がことのように誇ることには、誰も疑問を抱かないのか、聞いている私が思いっきり恥ずかしくなるだけで、ツッコむどころか触れる人もいなかった。


「私は正直、凛花ちゃんの考え方に衝撃を受けたかも」

 真面目な顔で井内夏ちゃんに、私は「衝撃?」と聞き返すことしか出来無かった。

 私の聞き返しに、大きく頷いた千夏ちゃんは「加代ちゃんも言ってたけど、凛花ちゃんの視野はもの凄く広いなって言うのと、選んでくれた人にも応えたいって言うのは忘れがちになりそうだなって思って」と言う。

 まどか先輩が千夏ちゃんの発言に対して「確かに、オーディションで合格してしまうと、達成感で、その裏に自分を選んだり押してくれたことに目が行かなくなるって話は聞くね」と、真剣な顔で頷いた。

「監督さんやプロデューサーさん、自分を起用してくれる人達のことも思えるのは役者として大事なことだと私も思うわ。だから、凛花が大女優になってもその心は忘れないでね」

 お姉ちゃんも話の流れに影響されたのか、私の肩に両手を置いてそんな事を言い出す。

「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん。話が大袈裟になってるよ! そもそも何、大女優って!?」

 話の急展開ぶりに声を上げると、お姉ちゃんは何を言っているのかわからないと言いたげな顔をして「凛花には初心を忘れないでって事よ」と返してきた。

「そうじゃなくて、何で、いきなり大女優とかって話になっているのかってこと!」

 ピントがずれていることを指摘すると、お姉ちゃんは「私は凛花なら慣れると思うんだけど?」と困り顔に表情を変える。

「違う、違うよ、お姉ちゃん! そもそも私、女優さんを目指してるなんていったこと無いよ?」

 私がそう訴えると、お姉ちゃんは「え? じゃあ、凛花は将来何に成りたいの?」と真っ直ぐ私の目を見て尋ねて来た。

「うっ……ぇ?」

 急に踏み込まれたこともあって、一気に頭の中が真っ白になる。

 そんな私にまともな思考なんて出来るわけもなく、パッと頭に浮かんだままを応えてしまった。

「ふ、ふつうの……お、およめさん?」

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