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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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心配と代価

「と、とにかく、本当に皆が言うように、神様が私に期待してくれているなら、しっかり応えたいと思う……だから、千夏ちゃんのことでも、部活のことでも、文化祭のことでも大変だけど、神楽のことも協力してくれると嬉しいです。皆、無理のない範囲で手伝ってください!」

 私がそう言って頭を下げると、お姉ちゃんがすぐに「当たり前じゃない。妹の頑張りを応援しないお姉ちゃんなんて居ないわよ」と言ってくれた。

「でも、お姉ちゃん、高校受験もあるし……」

 私がそう返すと、お姉ちゃんは「もしかして、私の学力が心配かしら?」と口にしながら、下からのぞき込むように顔を寄せてくる。

 一緒に勉強した時に目に入ったノートに書かれていたメモは適格に要所を捉えていた。

 思考の切り替えも私よりも遙かに早いし、決断力も高い。

 部長も勤めていて、教師陣にも頼られているところがあるので、いわゆる内申点もかなり高いはずだ。

 それらを総合して考えれば、お姉ちゃんの受験に心配な要素はほぼ無いと言って良いと思う。

 ただそれでも絶対ではないので、私としては心配を拭い去ることは出来無かった。

「そ、そうじゃ、ないけど……」

 つい返す言葉も、濁ってしまう。

 けど、お姉ちゃんはこれに対して、あっさりと対応策を示してきた。

「凛花が心配しないように、秋までに学校推薦を勝ち取ってくるわね」

「へ?」

 私が迷いのない断言に、驚きの声を上げると、お姉ちゃんは「学校推薦を受けると、皆よりも早く入学試験が受けられるのよ。内容も、小論文に、面接だから、いわゆる定期試験のような試験は受けずに、受け入れてくれる学校が決まるわけ」と説明を始める、

「進学が決まれば、私が凛花に全力でも、不安にならないでしょ?」

「そ、それは……」

 私が返答に詰まったのを見て、お姉ちゃんは更に「大丈夫、早めに進学先が決まっても、ちゃんと勉強して知識の補足や予習もするから」とサラリと断言した。

 それでも、答えられない私に、お姉ちゃんは「これでも、お姉ちゃんが心配?」と尋ねてくる。

 私は目を閉じて大きく息を吐き出して、気持ちを整えた。

 それから真っ直ぐにお姉ちゃんを見て「だ、大事なお姉ちゃんだから、心配が無くなるなんて事は無いよ!」と言い切る。

 お姉ちゃんがそれを聞いて目を丸くした。

「でも、お姉ちゃんが私に協力してくれるのは嬉しいし、私が頼りやすいように、頑張ってくれるのも嬉しいけど……」

 心のままに浮かんだ言葉を言葉にしていて、私は要約一番言いたかったことに気が付く。

「お姉ちゃん、私の為に無理しようとしてないかな? 本当に、学校推薦を取るのって、お姉ちゃんが望んでること?」

 私は無理矢理絞り出すつもりで、不安な気持ちが強くなるのを実感しながら、でも尋ねないわけにはいかないことを言葉にした。

 そんな私に対するお姉ちゃんの答えは、態度で示される。

「もう、凛花は考えすぎで、優しすぎよ!」

 ギュウッと自分の胸に私の顔を押し付けるような格好で抱きしめた腕に力を入れるお姉ちゃんには、手加減がなかった。

 感情の聞知カラが籠もっているのかもしれないと思うほど、完全に私の動きを拘束しきっているのに、不快感も息苦しさも感じない。

「まどか! どうしよう、ウチの妹が最高すぎるんだけど!」

 急にお姉ちゃんがそんな事を叫んで、まどか先輩も「珍しく、私も凛花ちゃんが妹の良枝に嫉妬しているよ」と切り返してきた。

 更に千夏ちゃんが「そうですよ、良枝先輩ズルイです」と話に加わってくる。

 ここでユミリンが「可愛くて、優しくて、姉思い名妹は皆が欲しがるよなぁ」と、わかるわかると言いながら乗ってきた。

 結果、皆が皆、私が妹だったらという話で盛り上がり出す。

「確かに、妹だったら、それはそれで嬉しいけど、私にお姉ちゃんが務まるのか心配だな」

 加代ちゃんがそう言い、史ちゃんが「私は凛花様にお仕えするためには、姉妹関係は邪魔だと思いますので、残念ながらその道は諦めるしかないですね」と、もの凄く沈痛な面持ちで呟いた。

 すると、オカルリちゃんが「フミキチは従者の鑑だね……でも、だからこそ、あえていうよ、ここに凛花様の従者を志す同士が居ることを!」と舞台のような大袈裟な動きでアピールし、史ちゃんと熱い握手を交わし合う。

 委員長は「身内に凛花ちゃんも良いし、友達も捨てがたいし……でも、そうね、今のままが一番良いのかもしれないわね」と呟いていた。

 そんな委員長の呟きに合わせるように、茜ちゃんはうんうんと頷いている。

 話題が恥ずかしくて仕方ない。

 どうにか止めて貰おうと思ったのだけど、リーちゃんに『皆、主様が好きなのじゃな。わらわは誇らしく嬉しいのじゃ。無論、わらわも主様を好いているのじゃ』と言われてしまい、言葉が出てこなくなってしまった。

 まさか『私のことを話さないで!』なんて自意識過剰なことは言えないし、皆が好意を持って話しているのもわかるので、止める事も忍びない。

 結局恥ずかしいのを私が我慢すれば良いのかという結論に転がり落ちてしまったことで、打つ手がない状況が確定しまった。

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