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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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総会と再開

 お迎えの人について総会の行われている広間に案内されると、入出と共に拍手で迎えられた。

 どうやら、あっさりと舞手として採用されたらしい。

 お父さんとお母さんに並んで、挨拶をすると、改めて、拍手をその場の全員から貰うことが出来た。

 今後の流れとしては、基本的にビデオ映像を元に反復練習を繰り返すこととなる。

 というのも舞手の志津さんが基本的に、日曜以外は大学で講義があるので、こちらに帰省するのは大変だというのが大きく、さらに先代でもある志津さんのお母さんは、自己で足を悪くしているので、実際に踊ってみせるというのは難しいそうだ。

 そんなわけで、動画から学ぶことになったのだけど、完全素人の私の練習に付き合わせるのも悪いので、これはこれで良かったのかもしれない。

 何しろ、私には『リーちゃん』という頼りになる相棒がいるのだ。

 動画映像があるということは、リーちゃんの機械的なサポートによって、3Dモデルに神楽の動きを落とし込んで再現することが出来る。

 神楽の動きが脳内に再現できてしまえば、後は実際の自分との違いを『リーちゃん』に見極めて貰うことで、より完璧に仕上げることが出来るのだ。

 頭の中で、習得までの道筋が出来たこともあって、私の中ではすぐに取り込みたい気持ちで満ち溢れる。

 流石と言うべきか、お母さんが「まだ、挨拶回りが終わってないわよ、凛花()()()」と普段呼び捨てなのに、わざわざ『ちゃん』を付けて声を掛けてきた。

 気持ちが逸っていたのもあって、思わず身体が強張る。

「もちろん、わかっているよ、お母さん」

 顔に力を入れて、表情が崩れないように意識したけど、出来ているかの自信は全くなかった。

 当然、お母さんに影響を及ぼした気配はない。

 そして、とても綺麗な笑顔で、お母さんから「分かっていれば良いのよ」と言葉が掛けられ、私は心の中で絶対暴走しないようにしようと強く誓った。


「神子さん、お久しぶりです」

 総会が散開となり、神主であり、推薦人でもあった神子さんに挨拶することにした私は、早速声を掛けた。

「お久しぶりです……というほど、間は開いていませんが、凛花さんが引き受けてくださって安心しました」

 そう言って柔らかく微笑んでくれた神子さんに「私を認めてくださった皆さんの期待に応えられるよう頑張ろうと思います」と返す。

「凛花さん。気持ちは嬉しいですが、あまり、気負わないでくださいね。神楽が途絶えずに続けられそうなことで、皆十分に喜んでいますから」

 優しい口調で気遣ってくれる神子さんに、どう答えるのが良いか、私は困ってしまった。

 折角気負わないようにと気遣ってくれているのに、それでも頑張りますと続けるのは違う気がする。

 結果、どう返せば良いか唸ることになったのだけど、ここで新たに「おやおや、ウチの生徒を困らせているのかな?」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 振り返れば、そこには好々爺といった穏やかな表情を浮かべた大野先生が立ってこちらを見ている。

 その顔を見るうちに、今、神子さんに言っていた内容が頭に入ってきて、私は()()()慌てて勘違いだと訴えた。

「お、大野先生、私が上手く言葉を選べなかっただけで、神子さんに困らされたわけじゃないです!」

 私がそう訴えると、大野先生は「そうだろうねぇ」と頷く。

「へ?」

 大野先生の反応に、私は目を瞬かせた。

 すると、今度は神子さんが「凛花さん。コイツは教師なんてやってますがね。中身は邪悪なので、必要以上に係わらないように気をつけた方が良いですよ」と言い出す。

「え!? えぇ?」

 困惑で上手く言葉が出ない私はただ『え』を繰り返すだけだった。

 そんな私の後ろから、いつの間にか近寄ってきていた委員長が「二人とも、凛花ちゃんが困ってるので、悪ふざけは止めてください」と声を掛けて割って入ってくれる。

「委員長!」

 助けが来たという感情に押されて、私は思わず委員長に抱き付いてしまった。

「り、凛花ちゃん! そ、そんなに怯えていたのね!」

 ギュッと抱き返してくれた委員長にそう言われて、私は慌ててそこまでじゃないと伝えようとした……の、だけど、委員長の動き出しの方が早く、既に「こらぁ、不良大人達! 凛花ちゃんを怯えさせるんじゃない!」と、相手が神主さんと先生なのにも係わらず、一喝してしまった。


「凛花さん。申し訳ない。どうも彼とは長い付き合いなのもあって、つい悪ノリしてしまいました」

 そう言って頭を下げた神子さんに続いて、大野先生も「迂闊だった。何を言っても言い訳にしかならない。本当に申し訳ない」と深く頭を下げられてしまった。

 私を見てくれている、委員長やお父さん、お母さんは何も言わない。

 きっと、私の判断に任せるということなんだろうと理解した。

 当然ながら事を大きくするつもりはないし、悪意が無いとは思うので「私が上手く返せなかったり、言葉に詰まってしまっただけなので、そんなに気にしないでください」と告げる。

 その上で「この先もいろいろとご迷惑をおかけすると思いますが、頑張るのでよろしくお願いします」と頭を下げて、変な方向に話が広がらないように、これで終わりにすることにした。

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