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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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道化と落着

「見た目は問題無さそうね」

 委員長の言葉に、志津さんと茜ちゃんが大きく頷いた。

 どうやら、無事、服を元に戻せたらしい。

 ホッと胸を撫で下ろしたところで、志津さんが「ねぇ、下着とかは確認しなくて大丈夫?」と真面目な顔で聞いてきた。

 そう問われて、私は確かに確かめた方が良いかもと思って、ブラウスのボタンに手を掛ける。

 直後、パシン!と乾いた音が響いた。

「えぇっ!?」

 驚きで一歩後退りながら、音のした方を見れば、志津さんの後頭部にハリセンが炸裂しているのが目に入る。

「凛花ちゃん、下着を身につけてないなら、まだしも、そうじゃないなら確認する必要は無いわよ。そこまでチェックする人なんていないから」

 私と志津さんの灰田にスルリと入り込むようにして前に立った委員長は、少し困り顔で言った。

 委員長の言葉を受けて、私は服の上から身体を押して、身につけている肌着の感触を確かめる。

「大丈夫そうです、下着は健在でした!」

 心配してくれた委員長に笑顔で報告をすると、何が良くなかったのか、思い切り溜め息を吐き出されてしまった。


「もう、中学生なんだから、しっかりと意識を持たないとダメよ」

「は、はい」

 自分が少女になった自覚が足りないと、月子お母さん花子さんに散々言われてきたことを、改めて、委員長に指摘されて、私は小さくなるしかなかった。

 そう言えば、雪子学校長にも、なまじ力があるせいで、防御力が低いとか、無頓着すぎるとお説教されたことも脳裏に蘇ってくる。

 委員長に加えてこの場に居ない人達からのダメ出しの記憶に、ただ反省するしかなかった。


「ミーちゃん、あんまり凛花ちゃんを怒らないでぇ」

 茜ちゃんの声に、委員長は「そうは言うけどねぇ」と渋い顔をした。

「凛花ちゃんだってぇ、反省してると思うしぃ、悪い子はしーちゃんだからぁ」

 そう言われた委員長はスッと視線を志津さんに向ける。

「ついよ、つい。別に嫌らしい気持ちは……なかったわよ」

「その微妙に空いた間が、気になるけど……」

 志津さんの返しに、委員長はジト目を向けてしばらく睨んだ後、大きく溜め息を吐き出した。

 そうして腰に手を当てた委員長は、私と志津さんを順番に見る。

「まず、凛花ちゃん……正直、下心のある人につけ込まれかねないことはちゃんと意識して」

「は、はい」

 頷く私を見た後で、委員長は「ただでさえ、凛花ちゃんは普通じゃないんだから」と言いながらリーちゃんに視線を移した。

 茜ちゃんも委員長に続いて「見た目も可愛いしねぇ、悪いオヂサンも居るから気をつけないとだよぉ」と言う。

「気をつけます」

 大人しくそう返したお陰か、委員長と茜ちゃんの意識は志津さんに向かった。


「志津ちゃんはさあ、もう大学生なんだから、もうちょっと大人になって」

 しみじみと言われたせいか、志津さんは「う、浮かれてただけだから」と追い詰められた表情で訴えた。

 それが良くなかったのか、委員長の表情は硬いまま崩れない。

「しーちゃん」

 後ろから茜ちゃんに声を掛けられた志津さんは、期待を浮かべた表情で振り返った。

 が、目にした茜ちゃんが苦笑を浮かべていたことで、風が吹いてないことに気付いた志津さんは苦い顔をする。

 そんな志津さんに、茜ちゃんは「素直に怒られよう?」と言い放った。

 茜ちゃんの宣告にその場で膝をついた志津さんは、そのまま両手をついて「凛花ちゃんが可愛い濃すぎていじり回したくなってしまったんです!」と言い出す。

 対して、茜ちゃんは「気持ちはわからなく無いわぁ」と返した。

 それを聞いて顔を上げた志津さんに、茜ちゃんは「でもぉ、しーちゃん。格好いいお姉さんを演じて置いた方が良かったんじゃない~? 凛花ちゃんに神楽教えるんでしょぉ?」と言う。

 言われた志津さんは少しの間固まってから、こちらに顔を向けてきた。

 そうして、私と志津さんの視線はバッチリ噛み合う。

 にも拘わらず、志津さんが何も言わないので、私はもの凄く不安になってしまった。

 その空気が嫌で、思わず「志津さん、何か……ありましたか?」と声を掛けてしまう。

 すると、志津さんは「凛花ちゃん」と返してきた。

「は、はい」

 緊張気味に答えると、志津さんは「出来れば、出会ってからここまでの、かっこ悪いところとか、記憶から消してくれない?」と言い出す。

「は?」

 理解が追いつかなかったというか、脳が理解を拒否したというか、志津さんが何を言っているのか、上手く飲み込めなかった。

 そんな困惑する私に代わって、委員長が「志津ちゃん、何を言ってるの?」と呆れた様子で声を掛ける。

「どうせ、教えるなら、尊敬して貰いたいじゃない、可愛い女の子に尊敬して貰いたいじゃない!」

 ほぼ同じ内容を繰り返して、謎の主張する志津さんに対して、委員長ではなく、茜ちゃんが笑顔で

「しーちゃん」と声を掛けた。

「な、なにかしら?」

 茜ちゃんの笑顔から何かを感じ取ったのか、警戒の色が志津さんの反応に混じる。

 そんな志津さんに対して、茜ちゃんははっきりと言い放った。

「今更、手遅れだと思う~」

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