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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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比較と疑問とその解消

『よいか、わらわの目を見るでないぞ!』

 リーちゃんはそう口にしてから、トトトと軽い足取りで、奥の壁へと向かっていった。

 目で追うと、リーちゃんは壁の前で止まると、見上げるように顔を上げて、お座りの体勢を取る。

『では、投影するのじゃ』

 リーちゃんが、そう宣言すると、間を置かず、リーちゃんが向いている壁に、私の写真が映し出された。

 いつの間に撮影したのか、神社の駐車場らしい。

 背景に写る建物や、茜ちゃんや委員長も写っているので間違いないはずだ。

 私は映し出された写真を見て、そんな事を考えていたのだけど、他の皆にとってはとんでもないことだったらしい。

「な、何これ、写真が映し出されてるの!?」

 慌てて壁に近づいた志津さんが、自分の体が影が出来たことで、思いっきり振り返った。

 が、リーちゃんを視界に押さえる前に、茜ちゃんの容赦ないハリセンスイングが、綺麗に鼻を避けてバチンと目を覆い隠すように放たれる。

「ふぎゅっ!」

 衝撃を受けて少し仰け反りながら動きを止めた志津さんを見て、茜ちゃんは「あぶなかったわぁ」と袖で額を拭うジェスチャーを見せた。

「リーちゃんに、目を見るなって言われたでしょう? これ、映写機の要領で写してるだろうから、光が強くてみたら、目に障害が出るくらい強いんじゃないかしら」

 淡々とリーちゃんの忠告の理由、写真投影の原理をしっかりと踏まえて、委員長は志津さんにダメ出しをする。

「まあ、目が潰れなかったことはちゃんと、あーちゃんに感謝しなさいよ」

 容赦ない委員長の言葉に、怒るかなと思った志津さんは意外にも「た、助かったわ、あーちゃん」と素直に感謝を伝えた。


「それにしても、こんなことが出来るとなると、確かにロボットなのかもしれないわね」

 いい音がしていたけど、ダメージはそれほどではなかったのか、志津さんはいたがる素振りも見せず、普通に話し出した。

 対して、委員長も「しかも、これ、ついさっきの駐車場の写真だよね? 現像もしないで映し出せるの?」と疑問を口にする。

 そんな委員長の発言に応えたのはリーちゃんだった。

『原理は写真ではなく、テープに録画するビデオカメラの原理を利用しておるのじゃ。故に即座に投影できるわけじゃ』

「なるほど、だから写真のような元素像は要らないのね」

 委員長は深く頷いているが、私は二人の会話を聞いて、この時代にまだデジタルカメラは登場していなかったんだなと気が付く。

 ほんの少し前の世界という認識だったけど、そのほんの少しの間にとんでもない技術革新があったんだと痛感させられた。


 映し出された写真を観察する委員長と志津さんと違って、私の横にハリセンを片手に佇む茜ちゃんが「ねぇ、凛花ちゃん」と声を掛けてきた。

「なに、茜ちゃん?」

 呼ばれたから応えた程度の感覚で返事をすると、かなり鋭いと感じる言葉か返ってくる。

「これぇ、リーちゃんがぁ、居てくれればぁ、千夏ちゃんちにぉ、いろいろ仕掛けなくても大丈夫じゃないかしらぁ」

「そ、れは……」

 即座にちゃんとした言葉が返せず、私は言葉に詰まってしまた。

 この窮地を救ってくれたのは、リーちゃんである。

『確かに、危険を検証するだけなら、わらわが潜むだけで十分じゃが、問題がある場合、状況によっては警察沙汰や裁判沙汰に発展する可能性もあるのじゃ、であるならば、証拠を残す必要があり、出所が説明できるものでなくてはならぬとは思わぬか?』

 流石と言うべきか、思わず拍手してしまいそうな程、論理だった答えに私は素直に感心した。

 茜ちゃんも「たしかにぃ」と納得したらしく何度も頷く。

 一方、リーちゃんは『わらわがスイッチを押すというだけでも、かなり、グレーゾーンじゃがな』と苦笑気味に言った。


「あー」

 リーちゃんとの会話から少し間が空いたところで、茜ちゃんが急に声を上げた。

 その直後、手にしたハリセンで自分の掌を叩いて、パァンと音を立てる。

 私だけでなく、音に驚いて、委員長と志津さんが茜ちゃんに振り返った。

「服の確認~! 一番大事なこと忘れてるわぁ~」

 茜ちゃんの言葉に、委員長が「そう言えば、そうだったわね」と照れの混じった苦笑を浮かべる。

 志津さんは「ビックリでドッキリしてうっかりしてたわ」と真面目に言ってるのかふざけてるのか判断のつかない言葉を漏らした。

 まあ、委員長も茜ちゃんもスルーしていたから、ボケじゃないのかもしれない。

 そんな事を思いながら腕組みをして頷いていると、急に委員長が「凛花ちゃん!」と私の名前を呼んだ。

 突然だったのと、大声だったこともあって「はっ、はい!?」と気付けば反応してしまう。

「気をつけっ!」

「えっ!? はい」

 指示を受けたことで、組んでいた腕を解いて、私はピンと腕を伸ばして脚の横に伸ばした。

「リーちゃん、別角度の写真はあるかしら?」

 委員長がリーちゃんにそう尋ねると『うむ』という声がして、直後、私を後ろから映した映像に切り替わる。

「志津ちゃん、あーちゃん、確認開始!」

 パンッと手を叩いて合図を出した委員長に、志津さんと茜ちゃんはそれぞれ「あいさ-」「了解ぃ~」と答えて、私と投影された写真の比較を始めた。

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