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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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類似するモノ

「ろ、ロボットってことは、き、機械ってこと?」

 こちらに視線を向けながら、志津さんは小さく身体を震わせていた。

「そうです」

 頷いた私を見て、志津さんは恐る恐るといった感じで手を伸ばしながら「さ、触ってみても良い?」と尋ねてくる。

「リーちゃん、良いかな?」

 私の質問に対して、リーちゃんはこちらを見ることなく、右前足を上げて『うむ、構わぬのじゃ』と応えた。

 それを見て、志津さんは「うーーん、腹話術じゃ無さそうね」と言う。

『そうじゃな、少なくとも、わらわと主様は、違う意識を持っておるの』

「じゃあ、凛花ちゃんとリーちゃんは、別人てこと?」

『人というくくりが当てはまるかは微妙なところじゃが、まあ、そうじゃな』

 会話に参加するタイミングが掴めない私を置き去りにして、二人は会話を繰り広げていった。

 そんな置き去りにされた私に、委員長が声を掛けてくる。

「凛華ちゃん、今、話し掛けても大丈夫?」

「うん。なんだか、志津さんはリーちゃんと話が弾んでるみたいだし」

 私がそう言って頷くと、委員長は「なるほど、本当に意識が違うのね」と口にした。

 その後で、委員長は「別に疑っていたわけじゃないけど、こうして凛華ちゃんと、リーちゃんで会話内容が違うっていう具体的でわかりやすい例を示されると、より納得できるなって意味ね」と言い加える。

 私はそんな委員長の考えに同意して頷いた。

「意識が別っていうのをどうやって説明したらいいかって考えてたけど、確かに違う内容を離してたら証明になるね」

「まあ、すでに、リーちゃんと同じタイミングで違うこと話しているし、少なくとも、腹話術じゃないのは証明されたんじゃないかしら」

 私とリーちゃんを順番に見ながら言う委員長に続いて、茜ちゃんが「ほぼ同じタイミングでぇ、違うことを話してたしねぇ」と指摘する。

 何か手を考えずとも、成り行きで証明できたことに、あっけなさとともに、軽い安堵を覚えた。


「機械って言うのが未だに信じられないんだけど……」

 そう言いながら抱き上げたリーちゃんをいじり回しながら、志津さんは呟いた。

『これ、わらわはデリケートなのじゃ、余り乱暴にするでない』

「あ、ゴメンなさい」

 リーちゃんの不満の声に、志津さんは驚くほど素直に謝罪する。

 その素直な反応に、リーちゃんは少し間を置いてから、咳払いをして『加減してくれるなら、多少は良いがな』と伝えた。

「おお、ありがとう、リーちゃん!」

 志津さんはそう言って嬉しそうに、リーちゃんの両前脚の付け根に手を差し込んで、自らの頭より高くまで持ち上げる。

 リーちゃんは大きく抵抗しない代わりに『これ、持ち上げるでない!』と呆れ顔で止めた。


 なんだかんだと仲よさそうに盛り上がるリーちゃんと志津さん、そんな二人を見ていたところで、茜ちゃんが「ねぇ、凛花ちゃん」と声を掛けてきた。

「なに、茜ちゃん?」

「……考えたんだけどぉ。リーちゃんはぁ、機械なんだよねぇ?」

 ヴァイアだという説明は出来ないものの、機械なのは事実なので私は「うん。そうだよ」とだけ言って頷く。

 そこで、茜ちゃんは少し間を開けてから「言い方は悪いんだけどぉ」とこちらを覗う様に上目遣いで私を見てきた。

 何か言いにくいことがあるんだろうなって察した私は「うん、大丈夫、言ってみて」と何を言われても受け止める覚悟をして応える。

 茜ちゃんは私の態度を見て頷いてから「生物じゃなくて……その、機械ってことは……モノってこと……だよね?」と辿々しく言葉にしていった。

 恐らく、モノ呼ばわりに、私やリーちゃんが不快を示すかもと考えたんじゃないかと思う。

 リーちゃんはわからないけど、少なくとも私は、配慮してくれてる茜ちゃんを悪くは思わなかったので、敢えて触れずに「そうだね」とだけ返した。

 茜ちゃんは私が特に不快を示さなかったことにほっとしたような表情を見せてから、一旦、息を飲み込む。

 その後で「やっぱり、付喪神なんじゃないかなぁ?」と続けた。

 そんな茜ちゃんの考えに対して、委員長が「でも、付喪神って、長い年月を掛けて道具に魂が宿ったモノじゃなかったかしら?」と首を傾げる。

 だが、そこで委員長は新たな考えを示した。

「むしろ『式神』とかが近いんじゃないかしら?」

 委員長の考えに、ポンと手を叩いた茜ちゃんは「なるほどぉ、式神かぁ」と感心したように何度も頷く。

「え、っと……」

 聞いたことはあるモノの、パッと頭に全容の浮かばない私に代わって、委員長が「『式神』っていうのは、陰陽師が使う使役術とされているわ」と説明を始めてくれた。

 委員長の発言に続いて茜ちゃんが「鬼神を操っちゃうんだよねぇ」と言う。

「り、リーちゃんは鬼神ではない……と、おもう……けど……」

 咄嗟に否定したものの、リーちゃんの全てを理解しているわけではないことに途中で気が付いてしまった。

 言葉に詰まった私に対して、委員長は「あ、別にリーちゃんが鬼神だといってるわけじゃないわよ」と言う。

 茜ちゃんも「そうだねぇ、近いよねぇって話だからぁ」とフォローしてくれた。

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