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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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具現化の制限

 リーちゃんに顔を近づけてしばらく、一時停止された動画の様に、固まったまま動きを見せなかった。

 あまりにもずっと動かないので「あの、志津さん?」と声を掛けてみる。

 が、それでも志津さんは動きを見せなかった。

 どうしようと思って委員長に視線を向ける。

 そのタイミングで視界の端に何かが動く姿が映り込んだ。

「えっ」

 私が漏らした声と、パァンと乾いた音がほぼ同時に放たれ重なる。

 強制に下向きに頭を動かされた志津さんの頭から鶏冠のように映えて見える白いハリセンが、それを手にした茜ちゃんの姿が、何が起こったのかを物語っていた。


「いやぁ、ビックリした。ビックリしたよぉ~」

 床に座り込んで脚を放り出した志津さんは、後頭部をさすりながら豪快に笑った。

 その横にハリセンを抱きしめた茜ちゃんが「意識が戻ってよかったぁ」と悪びれた様子も見せずに頷いている。

 響いた音と大きく動いた頭からして、それなりの威力はありそうだったハリセンの一撃に対して、被害者の志津さんも、加害者の茜ちゃんも、そして、委員長も言及しないので、私も触れないことにした。

 むしろやぶ蛇になりそうな予感があって、近づかない方がいいような気がする。

 私がそんな事を考えていたところで、いつの間にかこちら……正確には抱きかかえているリーちゃんに視線を向けていた志津さんから「ところで、手品の種(タネ)、聞いてもいい?」と首を傾げられた。


「タネ……ですか?」

 仕組みについては緋馬織に居た時にも何度か実験や検証をしてきたけど、具体的に明言できる仕組みは解明できてなかった。

 神格姿が操れるエネルギーが私のイメージに沿って具現化しているのは間違いない。

 ただ、生み出された物は、基本的にその元になった機器類と構成する物質のレベルでは違いが無かった。

 例えば、記憶記録デッキの外部の金属パーツの構成は、市販の録画機器と変わらなかったし、ゲーム筐体も同様である。

 カードの方も、基本紙にラミネート加工と仕様まで本物と変わらなかった。

 流石に、カードに刻まれた読み取り用のバーコードや背面の商標コードなどは、実在のラインナップにはないものだったけども、私たちが生み出したカードには、種類毎に個別に番号が割り振られていて、その数値が被ったりすることもない。

 調査した範疇では、オリジンをはじめとしたヴァイアシリーズが発番を補佐したりリストを管理したりというデータは無いので、単純なコピーだとしたら、なんでちゃんと発番されているのかについては、まったくのブラックボックス……というよりは、最早オーパーツの領域に突入していた。

 そんなわけで、私としては志津さんの質問に、真摯に答えたいところではあるのだけど、単純に説明が難しい。

 どう答えたモノかと悩んでいると、委員長が「凛花ちゃん」と声を掛けてきた。


「え? あ、委員長?」

 掛けられた声に反応して、委員長に意識を向けようとした私は、ようやくそこで目の前を上下する掌の存在に気が付いた。

「良かった、気が付いた?」

 手の代わりに顔を近づけて来た委員長に「ご、ゴメンナサイ、志津さんにどう説明したら良いか、考え込んでしまって」と応える。

 委員長は「多分、凛花ちゃん、考えすぎてるだけだと思うわよ」と言ってから、志津さんに視線を向けた。

「これ、手品じゃなくて、何もない空間から、このお人形……リーちゃんを出現させたのよ」

 リーちゃんを指さしながら委員長は、志津さんにそう伝える。

 それを聞いて「へ?」と驚きの声を上げた志津さんから、私に視線を戻した委員長は「もし、負担じゃなかったら、志津ちゃんの口にしたモノを出現させられる?」と私に尋ねてきた。

「で、出来ると思うけど……」

 私がそう返すと、委員長は「志津ちゃん、何か頭に浮かんだモノを言ってみて」と言う。

 そこまでのやりとりを見ていて、志津さんがリーちゃんを出現させたことを手品だと思っていて、委員長はそうじゃないことを示そうとしているんだと理解できた。

 元々、隠さないで行こうと決めていたし、委員長がフォローをしてくれたのだから、応えねばと思って、何が来ても応えられるように身構える。

 が、志津さんの口から出てきたのは『アイドル雑誌の最新号』だった。


「た、試したこと、無いけど……できるかな? その雑誌自体よく理解できてないから……」

 私が困惑していると、委員長は「凛花ちゃんの能力は瞬間移動じゃないから、お題を変えて」と志津さんに告げた。

 まだ読んでないから丁度良いかと思ったのにと、ブーブー言いながら志津さんは「じゃあ、ネコとか?」とお題を改める。

「ゴメンなさい、志津さん。生き物は出現させられないんです」

 私の返答に、志津さんは首を傾げて「じゃあ、その子、リーちゃんは?」と尋ねて来た。

「この子、実は、ロボットなんです」

 志津さんの問い掛けに、私はしっかり目を見てそう答える。

 これまでの実験で判明していたことなのだけど、私は生物の具現化をすることが出来無かった。

 では、自分の意思を持ち、自らの意思で動けるリーちゃんやシャー君が何故具現化出来るかと言えば、その内側にヴァイアを内蔵したロボットだからなのである。

 かなり端的になってしまった私の答えに、志津さんは目を点にして「ろ、ロボット?」と驚き顔で呟いた。

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