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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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神様

「どうかしら?」

 志津さんからの問い掛けに、私は感じたままを言葉にした。

 私の考えを聞いた委員長は「神様に招き入れられてるか……なるほどねぇ」と深く頷く。

 委員長の意味深な反応に、私は「え? なに?」と身構えてしまった。

 そんな私に苦笑を見せた委員長は「あ、いや、そういう考え方の凛花ちゃんだから、神子さんが凛花ちゃんに任せたいって思ったんだろうなって、納得したのよ」と意図を語ってくれる。

 志津さんがそんな委員長の話を聞いて「そうか、凛花ちゃんは神様が存在するのが前提な考え方なのね」と深く頷いた。

「そう……かも」

 指摘されて自覚したけど、確かに、存在しているんだろうという前提で考えてる自分に、私は気付かさせられる。

 そもそも緋馬織で『人工の神様』だとか、『神格姿』だとか、よく考えればリーちゃんとか、超常的な現象や出来事にがっつり係わってきた。

 それもあって、神様が想像通りの神様かどうかはわからないけど、少なくとも存在を疑っていなかったんだと思う。

「あれ?」

 私が黙り込んでしまったのが気になったのか、志津さんが顔をのぞき込んできた。

「し、志津さん?」

「何を考えてるのかなーって」

 私が声を掛けると、志津さんはそう言って笑む。

「あー、その、志津さんと委員長に、私は『神様がいる』のを前提にしているって言われて、これまでを振り返ってみてたんです」

 とりあえず、状況説明をと思ってそう答えると「だと思った」と志津さんに返されてしまった。

 思わず瞬きをしてしまった私に、委員長が「良いのよ、だったら聞くなって……殴っても」と言い放つ。

「な、殴る!?」

 思わず声が大きくなってしまった私に、委員長は含みのある笑みを見せて「ツッコミよ、知らない? 漫才でボケを訂正するんだけど?」と首を傾げた。

「わ……わかるかな」

 変に返すとどこに向かって爆発するか想像がつかないのが怖くて、辿々しい返答になってしまう。

 ここで茜ちゃんが急に「凛花ちゃんってぇ、神様が見えたりするんじゃないのぉ?」と聞いてきた。

「え?」

 茜ちゃんの言ったことそのものより、見える前提の問い掛けなのに驚く。

 ついさっき、神様がいる前提な自分の考え方を自覚したばかりなのもあって、もの凄い句唐突に聞こえてしまったし、当然ながら心構えが出来ていなかった。

 一方、茜ちゃんは、私の反応を不思議そうに見ながら「神様ってぇ、あらゆる物に宿るんでしょぉ? キツネさんにぃ、宿っているのは神様じゃないのぉ?」と瞬きをする。

 私は茜ちゃんの問い掛けに返す言葉を見つけることが出来無かった。

 正直、リーちゃんがどんな存在か、考えたことはある。

 その時は、単純に『人工知能(AI)』の一種程度にしか考えていなかった。

 でも、今、茜ちゃんに問われたことで、頭の中でこれまでの経験と知識が再構築されていく。

 自分でも持て余すほどの速度で、頭の中で情報が渦を巻き、最初に浮かんだのは「付喪神」だった。


「付喪神って、大事に使った道具に魂が宿って生まれる妖怪だっけ?」

 志津さんの問い掛けに、茜ちゃんが「うん。そぉ」と頷きで応えた。

 そのまま妖怪の話に逸れていった二人から引き離すように委員長が私を引っ張る。

 ムリヤリと言うよりは誘導程度の力だったので、私は素直に身体を任せた。

 まだ思考が上手くまとまらなくて混乱状態だったのもあるけど、委員長に何かありそうだと感じたのもある。

 実際、少し茜ちゃんたちと距離を取ったところで、委員長は「凛花ちゃん、志津さんに、そのリーちゃんのこと言って大丈夫?」と心配そうに尋ねて来た。

 何を心配してくれてたのか理解した私は「委員長は、行っても大丈夫だと思う?」と聞いてみる。

 すると、目の前で委員長はもの凄い皺を浮かべて唸りだした。

 思わず「え?」と声に出てしまうほどの悩みっぷりに、志津さんって実は危険なのかもと思ってしまう。

 それが伝わったかはわからないけど、委員長は声を潜めて「人を傷つけたりはしないし、どちらかといえば、いい人の部類だと思う」と自分の認識を言葉にしてくれた。

「ただ、もの凄く、勢いで生きてる人だから、考え無しなの」

 もの凄く真顔で断言されてしまっては、私からは何も言えない。

「秘密の情報は渡さない方が、安全だとは、思う」

 委員長のそれは、志津さんに隠そうという提案と同義だった。

 ただ、委員長にとって、志津さんに隠し事をするのは、心苦しいのだろう。

 表情に少し苦みが浮かんでいるように、私には思えた。

 委員長の表情と行ってくれたことをかみ砕いて、頭の中で尋ねる。

 私が『いいかな?』と尋ねれば、返ってくる答えは決まっているのだけど、それでも、尋ねてしまった。

『リーちゃん、リーちゃんのことを話しても良いかな?』


 私は目を閉じて大きく息を吐き出してから、妖怪話で盛り上がっている二人に声を掛けた。

 多分、茜ちゃんは志津さんの気を逸らすために、そして、志津さんは委員長と茜ちゃんの思惑を察して乗っていたんだと思う。

 だからこそ、結果、良くないことに繋がったとしても、構わないと思えてしまった。

「志津さん、内緒の話、聞いて貰っても良いですか?」

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