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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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次へ向けて

「くじ……ですか?」

「AとBは一緒に練習しない?」

「同じ役になったら、自動的に組が分かれちゃう……けど、同じ役はそれはそれで魅力的……」

 まどか先輩の説明を受けて、史ちゃん、加代ちゃん、千夏ちゃんと、三人がもの凄く深刻そうな顔で呟いた。

「え、えーと……三人とも、大丈夫?」

 最適な言葉が見つからず、ともかく、思い詰めてないだろうかと思って三人に声を掛ける。

 すると、史ちゃんが真っ先にこちらに振り向いて「心配してくれてありがとうございます。何の問題もありません、凛花様!」と返してきた。

「そ、そう……なんだね」

「はい! 私は凛花様と同じ組で練習をしたいので、まずは凛花様とは違う役を目指そうと思います」

「違う役……」

「幸い凛花様と重なる可能性があるのは、エリザベスなので、こちらの教師役を射止めるように頑張るつもりです」

 史ちゃんは自分が手渡された二枚のオーディション用の台本の片方を指さしながらはっきりと言い切ってみせる。

 既に、かなりの気合が入っているのもあって、言葉通り役を射止めてしまいそうだなと思った。


「私は、リンちゃんと同じ役が、いいかな……そ、相談も出来るし、同じ組だと、逆にリンちゃんが気になって、集中出来なさそう」

 苦笑を浮かべて頬を掻きながら、加代ちゃんはそう言ってから「あ、でも、衣装係に転向もありかなー」と呟いた。

 これを聞いていた春日先輩が「演者と裏方の兼任は大歓迎ですよ。無理のない範囲で、協力してください」と加代ちゃんに声を掛ける。

 急に声を掛けられて少し驚いたようだけど、加代ちゃんは気持ちを落ち着けるように息を長く吐き出してから「自分の出来る事、いろいろやってみようと思います」と春日先輩に伝えた。

 春日先輩は頷きながら「嬉しいです。でも、無理のない範囲でね」と返して微笑む。

 加代ちゃんも笑みを浮かべると「はい」と頷いた。


「う~~~~ん」

 腕組みをして唸っていた千夏ちゃんは、私が「千夏ちゃん?」と声を掛けると、パッと明るい顔でこちらに振り向いた。

「えっと……唸ってたけど、大丈夫?」

 私の問い掛けに、千夏ちゃんは「史ちゃん、加代ちゃんの考えを聞いて、自分はどうかなって考えてたんだけど……正直二人の意見はどちらも頷けるのよね」と言う。

 千夏ちゃんはそのままジッと私を見ているので、とりあえず「う、うん」と話を聞いていることを伝えた。

 すると、千夏ちゃんは「なので、考えるのを言ったん止めることにしました」と言う。

 どうしてそうなったと言う気持ちが、私の口から「へ?」という音で飛び出た。

「うちのことで皆に迷惑を掛けてるし、皆に助けて貰ったし、私なりにいろいろ考えてみたのね」

 本当は迷惑じゃないと伝えた方が良かったのだろうけど、千夏ちゃんの話を遮ることになりそうなので「うん」と頷くだけに反応を留める。

「それで……私は考えすぎかなと気付いたの」

「そんなことは……」

 フォローしようと思った私に、千夏ちゃんは「あ、考えすぎな傾向があるのは凛花ちゃんもだからね」と言い切った。

 完全な断言に言葉を失ってしまった私に向かって、千夏ちゃんは更に言葉を重ねる。

「私は、演劇では皆よりも少し先輩だし、演劇にはそれなりに思い入れもある……凛花ちゃんや皆のお陰で、オーディション一本に集中出来る状況にして貰った。だから、同じ組とか同じ役とか考えずに、ただ、自分なりに役を理解して自分なりに演じることに集中しようって思ったの」

 とても晴れやかな表情で断言する千夏ちゃんに、私は「そうなんだね」と深く頷いた。


「それじゃあ、週明けに、手渡した配役候補に基づいてオーディションを実施します。日数が少ないけど、自分なりに役を掴んできてください」

 春日先輩の言葉に、先輩も含めた全員で「「はい!」」と声を重ねた。

 皆で挑むという雰囲気が感じられて、自然と気持ちが昂ぶってくる。

 演劇用の演技には、それほど自信は無いけど、それでも自分なりの全力で挑もうと思うことが出来た。

 春日先輩に「では、部長」と振られたお姉ちゃんが「皆、まずは新人戦、頑張りましょう!」と檄を飛ばす。

 皆で改めて「「はい!」」と返事をして、この日の部活は終わりを迎えた。


「さて、いよいよ、日曜日が近づいてきたわね」

 校門に向かう途中でそう話を振ってきた委員長に「そうだね」と相槌を打った。

「日曜日には、凛花ちゃんの家まで迎えに行くわ」

「あ、うん。お母さんに言っておくね」

 神楽舞いについての氏子総会が、日曜日に開かれるのだけど、私とお父さん、お母さんが参加することになっている。

 いつ頃向かえば良いのか確認するようにお母さんに言われて、昨日相談した結果、委員長のお父さんが車で迎えに来てくれることになったのだ。

 ちなみに、内定はでているものの、氏子総会を通さずに決められないので、まず承認を得る。

 練習の方法や私以外の舞手の選定なども、総会の場で方針を決めて、後は神楽担当のお家、神主さんを通じて細かい部分を取り決めていく流れだそうだ。

 そんなわけで、総会にはお姉ちゃんや千夏ちゃんは参加しない。

 お父さんとお母さんが私に付き添ってくれるので、家に大人がいなくなってしまうため、ユミリンや史ちゃん、加代ちゃん、まどか先輩、それにオカルリちゃんがうちに来てくれることとなった。

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