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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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和紙と写真

 私はよく見かけた浴衣の着方を上げただけなのに、茜ちゃんに大絶賛されてしまったことに理解が追いつかなかった。

 けど、リーちゃんからの溜め息交じりの報告で『この時期には、世間にそれほど広まっていない着方』だと知る。

 この時期では一般的では無いとはいえ、言ってしまったことは飲み込めないので、どうするかと考えたところで、リーちゃんが重いため生月でつじつま合わせの言い訳を提供してくれた。

「あの、テレビでみた、白塗りのお殿様のコントで、腰元の人が、お、お風呂のところで、丈を上げていたのを見て……」

 言われたままを口にしたので、どれほど説得力があるのかはわからなかったけど、想像よりも効果は大きく、あっさり納得されてしまう。

 皆の受け取り方からして、白塗りのお殿様はかなり認知されているようだ。


「浴衣はかなり独自性がありそうだね」

 加代ちゃんの発言に、茜ちゃんがブンブンと頭を上下に動かして同意した。

「浴衣の丈を短くするのって、簡単なのですか?」

 史ちゃんはこの中でもお裁縫に詳しいであろう加代ちゃんに話を振る。

「んー、短くすること自体は簡単だけど、切らないでってなると、二重になる部分とか出てくるから、見栄えには影響が出るかなー?」

「確かに、重なりが多くなると重く見えそうですね」

 加代ちゃんの話を聞いて、頭の中でイメージを組み上げたらしい委員長は、そう言って難しそうな顔をした。

 ここで、茜ちゃんが私に振り向いて「凛花ちゃんは何かアイデアがないかしら?」とキラキラした目で私を見てくる。

 その期待に満ちた目を裏切ることが出来ず、戸惑っていると、頭にリーちゃんの声が響いた。

 思わず、それをそのまま口にしてしまう。

「浴衣を和紙で作る……とか?」

 紙で服を作るなんて、出来るのかどうかもわからないのに、口に出してしまったのはリーちゃんへの信頼の表れなのか、それとも依存なのか、判断に悩むところだけど、またも否定されることはなかった。

「たしか、あれだ、幼稚園の時の劇の衣装、先生が和紙で作ってたよね」

 ユミリンが手を叩いて言うが、当然ながら、私にそんな記憶は無い。

 曖昧に頷くしか出来無かったけど、千夏ちゃんが「凛花ちゃんはともかく、アンタまで幼稚園時代のことを覚えてるなんてね」と噛み付いたことで、流れが変わった。

 挑発してきた千夏ちゃんに対して、勝ち誇った顔でユミリンは「そんなこと言って良いのかなぁ? リンリンとの幼稚園時代の思い出があるって言うことがどういうことかわかってないようだけど?」と切り返す。

 そう言われて千夏ちゃんは表情を一気に硬くした。

「ま、まさか……」

 動揺する千夏ちゃんに対して、ユミリンはニッと笑みを深める。

「そう……リンリンと、和紙の着物を着て演じた劇の時の写真が内にあるって事だね」

 ユミリンを前に、千夏ちゃんは「くっ」と悔しそうな顔をしてから「み、見せてください」と頭を下げた。

「ふふふーーん、どうしようかな~~」

 完全に勝者の余裕で返すユミリンと喰うジョクの表情を浮かべる千夏ちゃんを前に、私は『自分が見せてあげる』とは言い出せない。

 恐らく、ほぼ間違いなく、ウチにもあるだろうけど、存在を確認しているわけではないので、万が一にも存在しなかった場合、その説明もしなければならなくなると、辻褄が合わなくなってしまう可能性が高いからだ。

 けど、そんな事を考えて逡巡している間に、委員長が「水を差して悪いんだけど、その写真参考に見せて貰いたいわ」と躊躇いもなく切り込む。

 更に委員長はこちらに振り向いて「別に、凛花ちゃんでも良いけど?」と言った。

 私は正直に「自分ではどこにあるかわからないから、お母さんに聞いてみてる」と返す。

 ただ、委員長はそのまま私を見続けていたので「もし、写真があれば、もちろん見せるよ」と告げた。

 これに反応した千夏ちゃんは「あらぁ~凛花ちゃんが写真を見せてくれるのねぇ」と余裕を取り戻す。

 だが、ユミリンは「当然、ウチには、リンリンが持っていない写真もあるけど、そんなに簡単に掌を返して良いのかなぁ?」と余裕を崩さなかった。

 またも、千夏ちゃんは「うぐっ」と苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべ唸る。

 しばらくのかった王を挟んで、白旗を揚げた千夏ちゃんは悔しそうに「由美子様、調子に乗って済みませんでした」と行って頭を下げた。


「じゃあ、皆で凛花ちゃんと由美さんの幼稚園の劇の写真を見させて貰って、和紙の着物が作れるか、予算も含めて検討しましょう」

 委員長の提案に皆が頷いた。

 その後で、加代ちゃんが「実際の浴衣を使うパターンも試してみた方が良いよね?」と言う。

 頷きながら委員長は「お願いできる?」と返すと、加代ちゃんはもちろんと頷いた。

「それで、一度、試してみたいから、凛花ちゃん付き合ってくれる?」

 加代ちゃんにそう振られて、驚いた私は「私?」と自分を指さす。

「試着というか、いろいろ試したいけど、自分一人じゃ限界があるし、モデルがいた方が良いし、出来れば凛花ちゃんにお願いしたいんだけど……」

 上目遣いで加代ちゃんにそう言われた私には断れるわけもなく「私で良ければ」と頷くしか無かった。

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