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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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閃くアイデア

「なんだか、リンちゃんは気を悪くするかもしれないけど、小動物感があるよね」

 私の頭を撫で終えた加代ちゃんは、そんな感想を漏らした。

 神格姿を得た時に、狐の姿になったのもあって、あながち間違ってない。

 そんな風に思ったのだけど、その事実を皆は知らないのだから、今の私に対しての感想と言うことに、旗と気が付いた。

「確かに、子猫っぽいわね」

 委員長の呟きに、オカルリちゃんが首を傾げながら「どちらかと言えば子犬系な感じがするのですが……」と言う。

「ふっふっふ。子羊っていう可能性もあるのではぁ?」

 茜ちゃんまで参戦してきて、勢いがつきそうだと思った私はブレーキを掛けようとしたのだけど、それよりも早くユミリンが「皆、何を言っているんだ」と割って入った。

「子猫に、子犬に、子羊って、リンリンは子狐に決まってるだろう?」

 ユミリンの言葉に、全員がハッとした表情を浮かべて頷き出す。

「自分で傾国狐の話をしていたのにぃ」

 頭を抱えて、声を漏らす茜ちゃんは、更に「せめて、ルリちゃんのように子犬に投票するべきだったぁ」とよくわからない理論展開をし始めた。

 さすがというべきか、茜ちゃんの考えを読み解いた委員長が「あー、キツネはイヌ科だわね」と頷く。

 その後で委員長は「でも、子犬に投票してても、子狐を選択肢に入れていなかった事実は変わらないわよ?」と容赦なく言い放った。

「に、ニアピン……にならないでしょうかぁ?」

 縋るような目を向けた茜ちゃんに、委員長は「幼稚園生に聞いても、違うって言われるわね」とバッサリ切り捨てる。

 項垂れる茜ちゃんの姿に皆から笑いが起こった。


「私は子猫でも、子犬でも、子羊でも、子狐でもいいと思う」

 笑いが収まったタイミングで千夏ちゃんが、私の頭を撫でながらそんな事を言い出した。

 自然と皆の目線が集まってきたところで、私に抱き付きながら、千夏ちゃんは「要するに、凛花ちゃんが小さくて可愛いって事でしょう?」と言う。

 対して皆もその通りだと頷く中、私は「待って、千夏ちゃんだって、可愛いし小柄でしょ!」と、言われる身にもなって欲しいという気持ちを込めて言い放った。

 けど、千夏ちゃんは「そうだね。お揃いだねー」とまったく怯まないし、戸惑ったりもしない。

 逆に私の方が、どうしてそんなに嬉しそうに受け入れるのかと驚いてしまった。

 ただすぐに、私の脳裏には千夏ちゃんの境遇が浮かんでくる。

 孤独や不安を隠して、明るく振る舞っているような千夏ちゃんだけに、例え身体が小さいというマイナスな特徴でも共通項になれば、嬉しいのかもしれないと、私は考えを修正した。

 そのタイミングで、別の腕が横から伸びてくる。

 無言でそのまま抱き付いてきたのは史ちゃんだった。

「史ちゃん!?」

 驚く私に、史ちゃんは頬を赤く染めただけで視線を逸らしたまま、回した腕に力を込めてくる。

 何も言わないのは、何も言いたくないから何だろうなと察してしまった私は、逆にどうしようも出来無くなってしまった。

 振りほどくのは、拒否しているようになるし、言いたく無さそうな史ちゃんに、話しかけるのは可愛そうだとも思う。

 すると、更に今度は加代ちゃんが「私も混ぜて~」とお腹辺りに顔を当てながら抱き付いてきた。

 頭に千夏ちゃん。胸元に史ちゃん、お腹に加代ちゃんとくっついてきたところで、ユミリンが「小動物同志で、じゃれ合ってるわ」と声を漏らす。

 直後、委員長が「それだわっ!!」と大きな声を上げた。

「あ、ミーちゃんがなんか閃いたぁ」

 嬉しそうに言う茜ちゃんに続いて、オカルリちゃんが「かなり自信がありそうですね」と声を掛ける。

 二人の言葉に対して、少し興奮気味に、委員長は「キツネモチーフはどうかと思って!」と言い出した。

 対して、茜ちゃんが「ミーちゃん、何の話をしているかわからなぁい」と笑顔でズバッと言い放つ。

 委員長はその茜ちゃんの反応で、冷静さを取り戻したらしく「そうね、言葉が足りなかったわ」と口にした。

「文化祭で、アイドルグループを生み出す予定でしょ?」

「うん」

「その要素にキツネを加えたらどうかと思ったのよ。ほら、猫モチーフが多いじゃない?」

 委員長の問い掛けに茜ちゃんは少し考えるように唸る。

 その後で「たしかにぃ、アイドルグループもニャンコだしぃ、ツッパリの格好をしたブロマイドやキーホルダーが売れているのも猫だしぃ、最近のアニメは猫が主役のモノが多いよねぇ」と、茜ちゃんは腕食いをして何度も頷いた。

「だからといって、猫に対して犬じゃありきたりだけど、キツネなら目新しいと思わない?」

 委員長の問い掛けに、茜ちゃんは「思う~」と楽しそうに頷く。

 ここで、オカルリちゃんが「キツネ良いですね。凛花ちゃんたちは神楽舞いをしますし、神社とも相性良さそうです」と言い、それを聞いた委員長がまた目を輝かせた。

「確かに! ウチの神社の神使も御キツネ様だわ!」

 燥ぐ委員長を嬉しそうに見詰めながら、茜ちゃんが「これは運命ってヤツだねぇ」と言う。

 茜ちゃんの発言に委員長が嬉しそうに頷くのは微笑ましかったけど、抱き付いたままの皆の熱に囲まれた私は、流石に暑さで倒れてしまいそうになっていた。

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