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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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対策会議

 私と千夏ちゃん、それにお姉ちゃんが部室に顔を出したところで、副部長である春日先輩が、単刀直入に「始めて良いかしら?」と確認してきた。

 お姉ちゃんは平然と「待たせて悪かったわ、よろしく」と答えると、すぐに春日先輩はパンパンと手を叩き始める。

 よく響く乾いた大きめの音に、練習や雑談をしていた部員達が春日先輩や私たちに気づき、集まってきた。

 皆が扇状に並んでいる間に、春日先輩は移動式のキャスター付きの黒板を引っ張り出してきて、軽く皆を見渡しながら「新人戦オーディションの説明を始めるわ!」と宣言知る。

 春日先輩の横に残ったお姉ちゃんから離れて、私と千夏ちゃんは扇状に並ぶ部員の中に混ざった。


「えー、当初の説明では全キャラクターに対して、参加できる全員が演じてオーディションをするとまどかと部長が言っていたと思うのだけど、正直時間が無いので、少し規模を少なくさせて貰います」

 春日先輩の断言に、お姉ちゃんは少し気まずそうな顔をして見せた。

 ちなみにまどか先輩は、部員の列を後方から見守るように後ろに立っているので、表情はまったく見えない。

 振り向いて確認することでもないので、多少好奇心は刺激されてはいるものの、どうにか振り返るのを我慢した。


「それで、具体的にどう変えるんだ?」

 まどか先輩が後ろから質問を放ち、春日先輩がそれを受けて「二年生は、これまでの練習で一年生それぞれとそれなりに交流できたと思います。そこで、二年生と三年生を中心に、一年生それぞれに向いている役を二つか三つ、話し合いで決めます。その上で、改めてその役でオーディションを行って、役を決める予定です」と返した。

 確かに、全訳柄をやってみるのは面白そうではあるけど、時間が掛かるは間違いない。

 現実的な案でもあるので、反対の声は上がらなかった。

 結果、先輩方は私たちに向いている役を話し合うことになり、私たちは自主練ということになる。

 ここで、お姉ちゃん、まどか先輩、そして春日先輩で多目的室に移ることになった。

 表向きというか、他の先輩方には、話し合いの場に私たちがいると、深い話し合いが出来無いからと説明されているけど、実際のところは、千夏ちゃんの件で話し合う時間を提供してくれた色が強い。

 具体的にお姉ちゃん達が何かをいったわけでは無いけど、用意された多目的室が、内側から鍵が掛かる部屋で校舎の端にある教室だという時点で、ほぼ間違いないはずだ。

 加えて、多目的教室まで送ってくれたまどか先輩が、入室にする私たちに「部員の不安を解消することが、円滑な部活動には欠かせない……だから、練習にするのか、対策会議にするのかは、姫たちに任せるよ」と言ってくれたので確定したと思う。

 頷いた私たちに、まどか先輩は頷いてから、笑みを浮かべて「盛り上がるなとは言わないけど、一応部活動の時間だから、遊ぶのは禁止だよ」と言い残し去って行った。


 多目的教室に入って、鍵を掛けた私たちは、広い教室の中心に集まって打ち合わせを開始した。

 まずは先生への報告を千夏ちゃん中心に行って貰う。

 私が担当しなかったのは、プライバシーに係わることなので、どこまで話すかは千夏ちゃんが調整した方が良いと思ったからだ。

 まあ、一応配慮したつもりだったのだけど、千夏ちゃんは自分が思ったことも踏まえて、全部話してしまったので、要らない気遣いだったかもしれない。

 千夏ちゃんが感想を交えたこともあって、美弥子先生や綾川先生が頼れそうだちょいう事、他の先生はまだ未知数だから様子を見た方が良いという事を共通認識として持つことが出来た。


「流石に、リーちゃんは来てないですよね、凛花様?」

 オカルリちゃんにそう尋ねられて、私は少し言葉に詰まってしまった。

 皆に見せたリーちゃんの狐姿のぬいぐるみは、自宅に……正確にはお母さんのそばにある。

 ただ、リーちゃんの意識だけを呼び寄せて新たな身体に憑依させることは出来るのだ。

 その事実のせいで言葉に詰まってしまう。

 委員長がそんな私を見て、大きな溜め息を吐き出した。

「え? い、委員長?」

 委員長が想定しなかったアクションを見せたことで驚いてしまったんだけど、当の本人は呆れたと言わんばかりの表情で私を見ている。

 すると、茜ちゃんが「あはは、みーちゃんがぁ、呆れるなんてめずらしぃ~」と笑いながら言い放った。

 委員長は「……呆れてはいないわよ……」と呟くように言う。

 それから私を見て「ただ、そんなにわかりやすいと、いろいろ不安に思うわけよ」と続けた。

 すると、他の皆が「あ~」と言いながらここに頷き始める。

 史ちゃんが「凛花様は純粋なんだから仕方が無いと思います」と微妙にフォローになっていないような庇い方をしてくれた。

 けど、委員長は「それは凛花ちゃんの美徳よね。でも、すぐ反応してしまうと、秘密も秘密でなくなっちゃうし、凛花ちゃんの場合は、とんでもない秘密を持ってるわけだから」と言う返しに、史ちゃんは「演技、動じない演技を習得しましょう」とすぐに掌を返す。

 そんな二人の会話を聞いて、千夏ちゃんは「あー確かに、凛花ちゃんは憑依型の演技ができるわけだから、良いアイデアかも」と声を弾ませた。

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