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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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方針決定

 お姉ちゃんの堂々たる宣言姿に、私は思わず拍手を贈ってしまっていた。

 すると、お姉ちゃんは私に振り返って「流石に、照れるから、褒めるなら、後で二人っきりの時ににしてくれる?」と言う。

 二人っきりという冗談交じみた単語が混じっているのもあって、照れ隠しなんだろうなと察した私は「うん」と頷いた。

「仲が良いわねぇ」

 テーブルを挟んで反対に座る美弥子先生に言われて、私は急に恥ずかしくなってしまう。

 そこに、千夏ちゃんが「間に私を挟んでいるんだけど、凛花ちゃん」と私を見ながら頬を膨らませた。

 私は咄嗟に何をすれば良いかわからず「あ、ごめん」と思わず謝ってしまう。

 対して、千夏ちゃんは膨らませた頬から空気を吐き出して「じゃあ、私とも二人っきりの時間を頂戴」と言われた。

「そんなことでいいなら」

 私が頷くと、千夏ちゃんは満面の笑みを浮かべる。

 このところ精神的に追い込まれていただろう千夏ちゃんが明るい表情を見せてくれるのはとても嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまった。


「あーーー、仲が良いのは良いんだが、話を再開しても良いか、林田……凛花さん」

 綾川先生に名指しで尋ねられて、内心では『何故、私?』と思いつつも、すぐに返答しなければと言う気持ちに駆られて「は、はい」と答えてしまった。

 私の返事に軽く頷いてから、綾川先生は「それで、だ。凛花さんは斎藤さんを受け入れることには賛成……で、良いのかな?」と尋ねてくる。

 直接見てはいなくとも、横に座る千夏ちゃんの緊張が増したのが、握った手を通じて伝わってきた。

 大丈夫という思いを込めて千夏ちゃんと繋いだ手に力を少しだけ込めてから「もちろんです」と強めに声を出して頷く。

 その上で、私は先生方に安心して貰おうと「お姉ちゃんみたいに上手くいくかはわかりませんけど、千夏ちゃんがうちに来てくれたせいで、成績が悪いなんていわれないように頑張るつもりです!」と断言した。

 すると、私の断言に反応した千夏ちゃんが「私も、二人や二人の両親に迷惑を掛けないように頑張ります」と続く。

 対して、綾川先生は「あー……すまない」と頭を下げてきた。

 意味がわからず、私と千夏ちゃんは思わず顔を見合わせる。

 すると、美弥子先生が「ふふふ」と笑い声を上げた。

 自然と視線を向ける私たちに、美弥子先生は「綾川先生は、単純に共同生活に不安がないか、お互いに思うところがないかを確認したかっただけですよ」と教えてくれる。

 綾川先生は苦笑を浮かべながら「ま、まあ、成績が下がったら、私たちで補習でも何でもすれば良いだけだからな」と言ってくれた。


「連絡網については、私の方で調節して、一旦順番から外して貰う形にします」

 美弥子先生の発言に、小さく手を挙げたお姉ちゃんが「それは何故ですか?」と問うた。

 うちのお母さんも、うちの住所や電話番号を記載して貰って構わないと言っていたので、単純に疑問に思ったんだろう。

 そんなお姉ちゃんの問いに対して、美弥子先生は「一般的な引っ越しとは違うので、学校の方から告知するようなことはしないということです。もちろん当事者である林田さんや斎藤さんがお友達やクラスの子、他の先生に伝えるのは構いませんよ」と返した。

 更に綾川先生が「まあ、正直なところ、状況によっては元通り自宅で生活を再開することもあるだろうから、都度、連絡網を弄ると混乱が起きるというこっちの都合だから、難しく考えないでくれ」と言い添える。

 綾川先生の言葉を聞いて、自分が千夏ちゃんが自宅に帰るという可能性を考慮していなかったことに気が付いた。

 リーちゃんや防犯カメラを駆使して、安全の確認をしようとしているのに、もし、安全が確保できたらという仮定をしていない。

 そんな自分の至らなさを少し恥じ入る気持ちが湧いたのだけど、それよりも自然とその考えに至らなかったことに、強い違和感を覚えていた。


 細かな確認を終えて、学校としては告知はしないこと、連絡網からは千夏ちゃんの家の事情で、電話が使えなくなってしまうので、順番から外すということになった。

 連絡網については、翌日美弥子先生の方からクラスに報告する。

 千夏ちゃんの引っ越しについては、夜にお父さんが車を出してくれることになったので、学用品や服などの身の回りの物を持ち出すことになっているのだけど、それは先生方には伏せておくことにした。

 情報を伝えるとどう広がるかわからないと言うこともあるけど、先生方の方が千夏ちゃんのお父さんが不在がち、以上の何かがあることを察していて、現段階では学校は介入できないとはっきり言ってくれたところが大きい。

 現段階では、千夏ちゃんの感覚というか、証言だけしか証拠がないのもあって、大きく動きを取るには時期尚早というのは、私たちも考えていた。


「先生方の中で、事情を知っているのは限られた先生だ。何かあれば私か美弥子先生に声を掛けて欲しい。君たちからアクションがない場合は、こちらから子の件に関して離すことは無い」

 綾川先生の断言に続いて、美弥子先生は「もちろん相談をしてくれても良いわ。学校に内緒にしたい内容なら、言ってくれれば報告しないわ」と言い切った。

 それを聞いた綾川先生は「こう見えて美弥子は口が硬いし、生徒のためなら規則なんて平気で破るヤツだから、コイツは信頼して良いぞ」と笑う。

「この人、口は悪いけど、生徒のためなら何でもしかねない危険物だから、用法用量は護ってね」

 美弥子先生の切り返しに、綾川先生は「人を劇物みたいに言うな」と怒った後で、二人揃って笑い出した姿に、なんだかとてもホッとさせられた。

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