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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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連想

「姫」

 浸っていた私に声を掛けたのは、まどか先輩だった。

「はい?」

 首を傾げながら振り返ると、まどか先輩はもの凄く困った表情を浮かべている。

 表情の理由がわからなかったので「どうかしましたか、まどか先輩?」と問い掛けた。

 まどか先輩は「何というか、んーーー」と困惑度を強める。

 すると、お姉ちゃんが「凛花、彼女の様子をちゃんと見なさい」と私の横、オカルリちゃんを指さした。

「ん?」

 唐突に嫌な予感がして、慌てて視線を向けると、オカルリちゃんは顔を赤く染め呆けている。

「お、オカルリちゃん?」

 明らかに普通ではない様子に、慌てて呼びかけた。

 けど、いつものようなリアクションはない。

 呆然と「は、反応が無い……」と呟いた私に、まどか先輩が肩に手を置きながら「誰彼構わず、魅了するから」と呆れ顔で言われてしまった。

「そんな……」

 私の反論を遮って「つもりがなくても、流石にわかるでしょ? 姫はそもそも護りたくなるような可愛い容姿なのに、行動が男前すぎて、惚れるなって言う方が無理だと思うよ」とズバッと言い放たれてる。

 言おうとしていた言葉を先読みされた上に、わざと見ない振りをしていた事実を突きつけられて、黙るしかなかった。

「まあ、事実と結果をちゃんと受け止めた上でどう答えるかはちゃんと考えないと駄目だよ、姫」

 苦笑をしながらも、しっかり私の目を見て言うまどか先輩に、私は「はい」と頷く。

 直後、大きめなまどか先輩の手が頭の上に置かれて大きく揺さぶられるように頭を撫でられてしまった。


「まどか先輩は、凛花様に触れないでください」

「うん。凛花様を乱暴に扱いすぎだね」

 まどか先輩を引き剥がしたのは、史ちゃんとオカルリちゃんだった。

 あっさりと私から離れたまどか先輩は、苦笑しながら頭を掻くと、一拍置いてから「姫を困らせたり、傷つけるつもりはなかったんだ。ただ、緋目を見ていると頭を撫でたくなる気持ちはわかるだろう?」と言う。

 史ちゃんとオカルリちゃんは、まどか先輩の言葉を聞いて咄嗟に視線を交わし合った。

 それだけで意思疎通が出来たのか、少なくともまどか先輩に見せていた拒否の色は消え去っている。

 納得はいかないけど、理解は出来ると言いたげな、微妙な表情でお互いに頷き合ってから、オカルリちゃんと史ちゃんはまどか先輩に向かって同時に頷いた。

 言葉は交わされていないので、それは私の感じたところではあるけど、恐らくそれほど大きく外れてはいないと思う。

 何しろ、三人の表情や視線の動きを見ていると、もの凄くむずむずしてくるのだ。

 そんな居心地の悪さに、対策を考え始めようとしたタイミングで、茜ちゃんが不意に私の名前を呼ぶ。

「凛花ちゃん」

「な、なに?」

 三人から視線を離す切っ掛けに、思わず飛びついてしまったけど、茜ちゃんは茜ちゃんで、もの凄く難しい顔をしていた。

「……茜、ちゃん?」

 様子がおかしい茜ちゃんに、声を掛けると「変な連想をしてしまったんだけどぉ……」と俯きがちな様子で口にする。

 明らかに良くないことを口にしますという気配が漂っていた。

 とはいえ、状況的にも、私の性格的にも、放置や無視が出来る訳もないので、覚悟を決めて聞くことに決める。

「……なに、かな?」

 私の言葉に顔を上げてから、再度俯いて、もう一度顔を上げる茜ちゃんはもの凄く言いにくそうだ。

「何か気になるなら、聞いて」

 変に気持ちをしまい込まれても困るので、強引だと自覚しつつ踏み込む。

 すると、茜ちゃんは、チラリと千夏ちゃんを確認した。

 千夏ちゃんに係わることだろうかと思ったところで、視線を向けられた本人が「私が係わることなの?」と尋ねる。

 茜ちゃんは首を左右に振って「関係ない話だから、また今度の方が良いのかなぁって……」と返した。

 千夏ちゃんは「気遣ってくれるのは嬉しいけど、今は茜ちゃんの思い付いたことを皆聞きたいと思ってると思う」と言い切る。

 はっきりと千夏ちゃんに言われたこともあって、茜ちゃんは意を決したように私に視線を真っ直ぐ向けてきた。

「凛花ちゃんは、狐の神使だったり、妖怪だったり、するの?」

 茜ちゃんからの真っ直ぐ射貫くような目を向けられての問い掛けに、私は言葉を失ってしまう。

 神使や妖怪ではない……と思うけど、神格姿は『狐人間』なのだ。

 あながち事実から遠くないだけに、答えに窮してしまったのである。

 そんな私に代わって、お母さんが「私の知る限り、妖怪では無いと思うのだけど……」とおっとりした口調で割って入った。

 茜ちゃんはそれを聞いて大慌てで「うわぁ、そのぉ、ゴメンなさい~変なこと聞いてぇ!」と大きく取り乱す。

「そ、そうだよ、ね。違うよね、お、お友達を妖怪だなんてぇ」

 顔を青くして震えだした茜ちゃんに、ビックリさせるかもしれないと内心でビクビクしながらも、できる限り柔らかな手つきで肩に触れた。

「茜ちゃん、落ち着いて、聞かせて欲しいんだけど……その、何を連想したの?」

 驚かせないように、怒っているように聞こえないように、もの凄く丁寧に発生をして、茜ちゃんに尋ねる。

 すると、茜ちゃんはゴクリと喉を鳴らしてから「傾国狐」と口にした。

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