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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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懸念と対策

「チー坊のとこの担任って誰?」

 ユミリンのストレートな質問に、千夏ちゃんは「大野先生」とこれまたシンプルに返した。

「ん? 大野ってお爺ちゃん?」

 千夏ちゃんはユミリンの返しに首を振って「社会科の大野先生じゃなくて、国語科の大野先生」と言う。

「国語科? 知らない先生か……」

 真顔で言うユミリンに、委員長は「ウチのクラスも国語を教わってるでしょ?」と呆れ顔でツッコんだ。

 言われたユミリンは「国語って……ミヤちゃん先生?」とまだピンときてない顔をする。

 軽く溜め息を漏らした委員長は「そうよ。国語科の大野美弥子先生。ウチの学校には、大野先生が二人いるから、美弥子先生って呼んで練って言ってたでしょう?」と続けた。

 ジト目を向けられたユミリンは「あーー、そうだったかもーーー」と言って頭を掻きながらスッと視線を逸らす。

 委員長はその反応を見て、これ以上の追撃は無意味と判断したのか、千夏ちゃんに視線を移した。

「凛花ちゃんのお宅にお世話になるとして、一番の問題は、連絡網だわ」

 考えもしなかった点を委員長が指摘したことで、私は思わず「え?」と声を漏らしてしまう。

 委員長はそんな私に振り返って「ほら、自宅じゃなくて、凛花ちゃんの家で過ごすとしたら、電話が繋がらなくなるじゃない?」と理由を説明してくれた。

 私は「なるほど」と頷きながら、内心ではこの世界が昭和の終わり、インターネットやスマホどころか、携帯電話すら普及していない時代だったことを思い出す。

 一方、委員長の発想に感心した声を上げたのはお母さんだった。

「まーちゃん、流石ねぇ、学校編歩連絡は必要じゃ無いかとは思っていたけど、連絡網は盲点だったわ!」

 対して委員長は「いえ」と首を振る。

「私が、何故、そういう行動を取るのか、取らないといけないのか、納得しないと動けない人間なだけですよ」

 苦笑いでそう言い加えたけど、伊達に委員長と呼ばれているわけじゃないんだなぁと、もの凄く納得した。


「あ、改めて、ここに集まってくれている皆には、事の経緯を知っておいて貰いたい……の」

 千夏ちゃんはそう言って、伺うように皆を見渡した。

 皆が視線に合わせるように頷いたことで、千夏ちゃんはほっとしたように息を吐き出す。

 それから、ふぅっといきを吐き出すと、千夏ちゃんは改めて語り出した。

「昨日、凛花ちゃんのお父さんに、家まで送って貰ったの」

 千夏ちゃんはそこで一拍置いてから「マンションの前でお別れするつもりだったんだけど、凛花ちゃんがマンションの中までついてきてくれて……」と口にしつつ私に視線を向けてくる。

 私は頷きで応えて話を引き継ぐことにした。

「千夏ちゃんの説明の通り、家まで送ろうと思ってついて行ったんだけど、マンションに入ってすぐに千夏ちゃんの様子がおかしくなって」

 皆が私の発言を聞いて表情を強張らせる。

「あくまで、私から見た千夏ちゃんの様子だから、千夏ちゃんの感覚とは違うかもしれないけど、表情は強張るし、顔色も青ざめてて、どうにかしなくちゃって思った」

 私の言葉に、皆が無言で頷いてくれた。

 それだけで、自分が正しいことをしたと思えてくる。

 気持ちを後押しして貰った私は、本来は千夏ちゃんが説明した方が良いであろう管理人さんへの疑問を説明させて貰った。

 最後に「勝手に話してゴメン」と千夏ちゃんに詫びる。

 対して千夏ちゃんは首を左右に振りつつ「自分では言いにくかったから、ありがとう、凛花ちゃん」と言ってくれた。


「さて、ここからは対策班の私が仕切るよ!」

 元気よく名乗り出たオカルリちゃんは、改めて自分の用意できる機材について説明してくれた。

 カメラを仕掛けて不在中の家の中を映像として残す。

 ただ、反対者が一人もでない案ではあったものの、問題としては録画可能な時間が一時間程度しか無い点だった。

 大家さんの侵入に遭わせて録画しなければ、証拠にはならないし、録画する意味が無い。

 かといって、侵入に遭わせてピンポイントで録画する術が無いのだ。


「タイマーをセットして、録画を開始させることは出来るんだけどねー」

 オカルリちゃんの呟きに、委員長が「時計と連動して録画する機能を使うのね?」と確認した。

 対して、オカルリちゃんは「まだ試作段階だから、電源コードの途中にタイマーを噛ませて、設定した時間に通電させる方法になるけどねー」と苦笑気味に答える。

「それって、開発中ってヤツだからか?」

 ユミリンの問いに、オカ林はパァッと顔を明るくして「そう! そういう事!」と大きく頷いた。

『何で嬉しそうなんだよ?」

 オカルリちゃんの反応に権限そうな顔を見せるユミリンだったが、言われていた当の本人は「説明しなくてもわかって貰えるって嬉しくない?」と切り返す。

 ユミリンはこのままだと話が逸れそうだと判断したらしく、一度咳払いをしてから「タイマー以外に、その場にいなくても録画を開始する方法はないのか?」と尋ねた。

 すると、オカルリちゃんは「無線で、スイッチを入れる方法もあるかな」と答える。

 ただ、すぐに困った顔をして「でも、無線でスイッチを入れる事は出来るけど、どのタイミングで\入れれば良いかって問題に戻って着ちゃうんだよねー」と、オカルリちゃんはお手上げと言わんばかりに、寮の掌を空に向けた。

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