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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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お風呂

「凛花とお風呂に入るのは久しぶりね」

「う、うん」

 一応、頷いては見たものの、私からすると、お母さんとお風呂に入るのは初めてだ。

 とはいえ、流石にこの身体になってから長いので、お風呂自体に緊張することは無い。

 そんなわけで、上着にズボンに腹巻きにと、脱いで行くと、お母さんが「凛花、その格好で寝るの?」と聞いてきた。

「うん」

 お姉ちゃんとユミリンはパジャマに着替えていたけど、私が着ていたのはトレーナー生地の上下なので、このまま寝ても大丈夫だと思う。

 でも、お母さんが微妙な顔をしていたので「えっと、粉の吹く暖かいし、お腹も冷やさない方が良いってお姉ちゃんが教えてくれたから」と、理由を付け足してみた。

 すると、お母さんは「凛花が納得しているなら良いわ」と言って、服を脱ぎ始める。

 私も残りを脱いで、洗濯機の中に放り込んだ。


 先ほどはお姉ちゃんもいたので、詳しく確認は出来なかったけど、お風呂場自体は元の世界と同じ場所に合った。

 そのお風呂に続く脱衣所には洗面台に洗濯機に、ドラム状の投入口が付いている機械が設置されている。

 最初はドラム状だったので、これが洗濯機なのかとも思ったんだけど、アルファベットでドライヤーと書かれているので、衣類乾燥機のようだ。

 お母さんより先に脱ぎ終えた私は先に引き戸になっているドアを開けて浴室へ入る。

 私の元の世界だと、折り戸になっていたので、サッシのガラスの嵌められたスライド扉は、私には少し重く感じられた。

 樹脂製で覆われていた床は、この世界では、丸みのある小石とそれをコンクリートでコーティングしたような冷たいものになっている。

 直接裸足で触れないように、大きめのマットが敷かれていた。

 カランの位置は変わっていないけど、シャワー用の分岐どころかシャワー自体が付いていない。

 更に、温水の調節パネルも無ければ、温度調整用のダイヤル類もついていなかった。

 浴槽は脚を高く上げないと跨げないほど高いし、その浴槽の横には煙突の付いた銀色の金属製の箱が取り付けられている。

 恐らくこれが湯沸かし器というかお風呂を暖める機械みたいだ。

 私がそんな初見が多いお風呂場に衝撃を受けていると、服を脱ぎ終えたお母さんがは行ってきてガラガラと扉を締める。

「じゃあ、凛花、椅子に座って」

 そう言って私の肩に手を置くと、マットの横に置かれたプラスチック製の椅子に私を座らせた。


「凛花、お腹が痛いとかはない?」

 お母さんはそう言って尋ねながら、お風呂の蓋を開けて桶で中のお湯を掬い上げた。

 自分の手を入れて、温度を確かめてから、お母さんは私の肩からお湯を掛ける。

「大丈夫だよ、痛くない」

 じんわりと身体が温まるのを感じながら私がそう答えると「じゃあ、髪を洗いましょう」と言って、お母さんは私の頭にキュッと音を立てて輪っか状の物体を嵌めてきた。

 手早い動きで、お母さんは輪っかの中に私の髪を通すと、頭に軽くお湯を掛ける。

「どう? お湯が顔に流れていって無い?」

 そう聞かれた私は「大丈夫」と返した。

 お母さんが私の頭に嵌めたのはシャンプーハットだと思う。

 京一時代も、凛花になってからも体験したことは無かったけど、介護や育児の現場で使われているのは知っていた。

「じゃあ、お湯を掛けるわよ」

「うん」

 私が返事をすると頭にお湯がかかる感触があって、じんわりと頭全体に熱が移ってくる。

 一方で、シャンプーハットかお湯の流れを堰き止めてくれているので、顔側にお湯が伝ってきて、濡れるということはなかった。

 それよりも、素材のせいか、耳に近いところに装着しているせいか、シャンプーハットにお湯が当たる度に立つ、ジョボジョボという水音が気になってしまった。

「シャンプーするから、一応目を瞑って」

 お母さんにそう言われて、私は素直に「はい」と返して目を閉じる。

 チューッと少し冷たい年度のある液体が頭に掛けられ、その後にお母さんの手が触れてくるのを感じた。

 丁寧に優しい手つきでお母さんは、私の髪を洗ってくれている。

 それだけで、私はもの凄く幸せな気持ちになった。


「シャンプー流すわよ」

「うん」

 お母さんには返事をすると、すぐに頭にお湯が掛けられた。

 シャンプーを流すように丁寧に髪を濯ぎながらお湯を掛けてくれる。

 そのまま身を任せていると、キュポッと音を立てて、シャンプーハットがハズされた。

 お母さんは「はい、凛花」と言って、今桶で濡らしたばかりのタオルを手渡してくる。

 私が受け取ると「身体洗うから、髪上げてくれるかしら」と聞いてきた。

「うん」

 そう返事をしてから首を前に垂らして髪の毛を前方に集める。

 首の後ろからタオルを掛けて、頭の側面に沿ってタオルを押し付けつつ、髪の毛をタオルの中に収めていった。

 右手に持ったタオルの端を頭を押し付けるようにしてから、左手で持った反対側の端を引っ張りながら抑え込む。

 タオルの端を挟み込んでめくり上げ、髪の毛をタオルの中に押し込めることに成功した。

 すると、私の一連の動きを見ていたお母さんが「あら、凛花、綺麗に髪を上げれるようになったわね」と言う。

「う、うん」

 不意打ち気味に掛けられたお母さんの言葉に、私は思わず照れてしまった。

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