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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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諦めと繋がり

「じゃ、じゃあ、あまり……自信は無いですが、最初のリーダーをやらせて貰います」

 そう言わなければ収まりがつかなそうだったので、私は渋々ながら宣言した。

 掃除に皆から、拍手が帰ってくる。

 嬉しく思う部分もあるけど、気恥ずかしいのが大部分なのもあって、私はすぐに口を開いた。

「も、もしも、はじめ師匠にお話をして、参加してくれることになったら、は、はじめ師匠に譲りますから!」

 私の断言に対して、難しい顔をしたまどか先輩が「それはどうかなー、良枝」とお姉ちゃんに話を振る。

 お姉ちゃんは、頬に手を当て、困惑顔で「はじめちゃんは、参加はしてくれると思うけど、リーダー譲られても困るんじゃないかしら?」と返した。

「え? 何でですか!?」

 驚きで声が出てしまった私に、お姉ちゃんは「はじめちゃん、皆から見たら場を仕切れる頼れる先輩に見えていると思うけど……あれ、無理して演じてるのよね」と苦笑する。

「それにだよ、姫、一年生と二年生だから、強制的に二年生に役割を押し付けるのはどうかと思うな、私は」

 そのもっともな意見に、私は「うっ」と声を詰まらせるしか無かった。


「も、もしかしたら、り、リーダーをやりたいと思ってくれるかもしれない……ですよね?」

 まどか先輩は「はじめちゃんが言い出したとしら、それは、嫌がってる姫に配慮したって可能性の方がしっくりくるかな」と、私の希望を粉砕した。

 お姉ちゃんやまどか先輩が言うように、はじめ師匠が本来の自分を偽って、リーダーシップを発揮しているなら、わがままで押し付けるも同然だと思うし、そもそもリーダーを手渡したいのにも明確な理由があるわけじゃ無く、プレッシャーから逃れたいだけなのもあるし、引き受けたにも拘わらずすぐに発言を翻すのはよろしくない。

「……私よりふさわしい人が見つかるまでは頑張ります」

 私の出した結論に、お姉ちゃんも、まどか先輩も大きく頷いてくれた。

 若干、ようやく諦めたかと言いたげに見えたのが引っかかったけど、あくまでそう見えただけなのでツッコミは入れない。

 加えて、いつまでも女々しく藻掻くのは止めて、きっちりリーダーを務めることに決めた。


「まあ、まあ、今日も大人数ね」

 なんだか嬉しそうに言うお母さんに、皆が挨拶の言葉を口にした。

 基本的には『こんにちは』とか『お邪魔します』といった一般的なものだったけど、茜ちゃんの挨拶が異彩を放つ。

「サッちゃん、こんにちはぁー」

「あら、あーちゃん、いらっしゃい」

 完全に旧知の仲だとわかる挨拶を交わした二人に、私は思わず「え?」と声を上げてしまった。

 ただ、そんな私は置き去りに二人は会話を交わし続ける。

「そういえば、あーちゃんは、凛花と同じクラスだったわね」

「しかもぉ。部活も一緒なんですよぉ」

 ニコニコと笑顔を交わし合う二人に、周りの皆にも困惑の色がにじみ出したのだけど、ここでさらに委員長までもが会話に加わった。

「サッちゃん、私もお邪魔させて貰ってます」

「あら、みーちゃん。みーちゃんも同じクラスで同じ部活なのかしら?」

「はい。その通りです」

 茜ちゃんと委員長は、お母さんとにこやかに会話を繰り広げる。

 何人か聞き覚えのない人のまあ絵と話題が出た後で、こちらに視線を向けたお母さんが「ああ、ごめんなさいね」と言ってから二人との関係を語ってくれた。


「お母さんて、和裁の免許なんて持ってたんだね」

「ええ。一応踊りと着付けの免許もあるわよ」

 委員長と茜ちゃんとの関係の説明と絡めて、知らなかったお母さんの情報を知ることとなった。

 茜ちゃんのお家は古くから有るお寺なのだけど、かなり大きなお寺で、大きな広間を日本舞踊の教室に貸し出しているらしい。

 そこで、お母さんは衣装である着物の仕立てのお手伝いや発表会当日の着付けの手伝いなどをしていたようで、アカンちゃんと委員長とはそこで知り合ったようだ。

 お姉ちゃんの通っていた小学校と二人の通っている小学校が違っていたこと、お母さんの関わり方がスポット的だったこともあって、出会っていなかったのである。

 しかも、お母さんは『サッちゃん』としか名乗っておらず、私やお姉ちゃんが娘だと、さっきまで気付いていなかったみたいだ。

 一方、お母さんは私のクラス名簿……正確には連絡網に名前があったので、そうじゃないかと薄ら思っていたらしい。

 二人のことを言わなかったのは、私が変な先入観を持たないようにという配慮をしていたとお母さんは言っていた。

 ただ、リーちゃんを通じて、後々確認したところ、それはあくまで建前の話で、真相は、今の私に入れ替わる前の私には、二人の存在を教えてくれていたものの、記憶を引き継いでいない私には覚えがなかったのである。

 いずれにせよ、その可能性も踏まえて、お母さんが立ち回ってくれたお陰で、話が噛み合わなくて皆に疑問を抱かれるという事態にはならなかった。

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