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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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リーダー

 想像もしていなかった千夏ちゃんの条件に、私は驚き九割、はじめ師匠がどう反応するかの不安一割くらいの感覚で「は、はじめ師匠を巻き込むんですか!?」と声を上げてしまった。

 けど、私以外の面々は言い安打と言わんばかりの反応を見せる。

「金森先輩もメンバーに入ってくれるなら、よりよくなりますね」

 その光景を想像したのであろう委員長は笑顔を浮かべて何度も繰り返し頷いた。

 茜ちゃんは「人数が増えるとぉ、ダンスの編成がぁ、いろいろ作れてぇ、表現の幅が広がりますねぇ」と目をランランと輝かせる。

 ユミリンは指を折って参加メンバーを数えてから「五人揃ったら、戦隊ヒーローみたいに、それぞれ担当の色を割り振ったら、面白いんじゃないか?」と言い出した。

 その発言に、茜ちゃんが「確かにぃ、それぞれに担当の色を決めるのはぁ、スゴく良いわぁ、もしかしてぇ、敏腕スカウトの才能があるかも知れないわぁ、由美子ちゃん!」と興奮度合いを増して絶賛する。

 褒められて悪い気はしないのだろうユミリンは「そ、そうか、だ、男子とか、戦隊シリーズ見てるヤツもいるなと思って、思い付いただけだ」と、どこか照れたような様子で返していた。

 ユミリンに「いえ、咄嗟の思いつきは大事よ!」と言った委員長は、そのまま皆を見渡しながら「他の皆も、アイデアがあったらじゃんじゃん出して頂戴!」と力強く訴える。

 その横で、茜ちゃんもふんふんと鼻息粗めで頷いていた。


「あ、あの……」

 言い出しにくい空気ではあったものの、これは言わねばならないことなのだからと、覚悟を決めて私は手を挙げた。

 素早く委員長が反応してくれて「何かしら、凛花ちゃん?」と輝かんばかりの笑顔を私に向けてくる。

 目から口元から、全身から、来たいの籠もった空気が伝わってきて、言い出しにくくて仕方が無かった。

 とはいえ、ここで引き下がるわけには行かないと、心を奮い立たせて言うべきことを口にする。

「も、盛り上がってるところ、見、水を差しちゃうのはわかっているんだけど、そ、その……はじめ師匠の意見を聞いてみてからじゃないと……」

 私が言い終わると、想像に反して、興奮気味だった茜ちゃんが「もちろん、一番大事なことだねぇ」と頷いた。

 思わず瞬きしてしまった私は「い、今、ご、五人前提の話になってなかった?」と聞いてみる。

 これには委員長が「確かに五人になれば、いろいろ広がるけど、五人目が絶対金森先輩じゃ無きゃいけないって事ではないわよ。もちろん参加してくださるなら嬉しいけど、難しいようなら五人目を探せば良いだけじゃない?」とあっさりとした調子で答えてくれた。

 正直肩透かしを食らってしまった気分だけど、委員長も、茜ちゃんもアイドルに対して熱量を持っているからこそ、メンバーの意識も大事にするという感じなのかもしれない。

 そう考えると、私の心配は不要だったようだ。

 同時に、委員長や茜ちゃんを信じ切れていなかったことにも気付いてしまう。

 その事実に、胸がチクリと痛んだところで、まどか先輩が「いやいや、大事だよ。反感を買うかもしれない怖さを越えて、ちゃんと配慮できる意見を言うことは」と、後ろからそう声を掛けてくれた。

 吃驚して振り返ると、まどか先輩は「一見大人しく見えるのに、通すべき筋は見誤らない。そういう凜としたところに、皆が惹かれるんだよ、姫」と笑う。

 続いてお姉ちゃんが「そうね、凛花はお姉ちゃんの自慢だわ」と言って笑みを浮かべて頷いた。

 心を鬼にしても言わなければと、嫌われる覚悟で決意を固めたのに、帰ってきたのがまどか先輩とお姉ちゃんからのべた褒めだったのは、脳の許容を越える事態で、すぐには対応が出来無い。

 その隙に、千夏ちゃんが「さすがはリーダー!」と言い出した。

「え!?」

 なんかとんでもないことをサラリと言われたぞとは思ったモノの、理解が追いつかない。

「凛花様がリーダーなのは、この場の全員の共通認識だと思いますよ」

 史ちゃんが当然のことだと言わんばかりに断言した。

 思わず、この場では最後のメンバーと黙される加代ちゃんに救いを求めて視線を向ける。

 加代ちゃんは『まだ、決まってないよね?』の意を込めた私の視線に対して「いやー、私もリンちゃんが適任だと思う」と、なんだか申し訳なさそうに言った。

 更に、ここでオカルリちゃんがとどめを刺しに来る。

「リーダーが皆の推薦である以上、ハヤリンは覚悟を決めた方が良いと思う」

 なし崩し的に決まりそうな現状に、切り返しを考える間もなく、委員長が「凛花ちゃん。大丈夫、凛花ちゃんをリーダーにしたからって、何でもかんでも任せる子はここにはいないと思うわ」と微笑みかけてきた。

 しかも、間を開けることなく「これは私見だけど、皆から受け取った信頼に応えるのも、やりがいがあるし、達成できるととても誇らしくなるわよ」と、委員長としての重責を務めているからこその強烈な説得力を含んだ言葉が放たれる。

 反論できなくなった私に、とどめを刺したのは、まどか先輩の「まあ、やってみてダメなら、皆も納得して交代してくれると思うよ」という一言だった。

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