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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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文化祭に向けて

 史ちゃんの発言に、茜ちゃんが「ほほほほぅ」とニヤつきながら歩み寄った。

「詳しくお窺いしても良いですかぁ?」

 茜ちゃんの様子に、そう言えば、彼女がアイドル好きだった事を思い出す。

 会話の中で『アイドル』なんて単語が出れば、興味を示すのは当然だった。


 加代ちゃんと史ちゃんが、先日のおもちゃ屋さんでの出来事を細かく話したことで、火がついたのは茜ちゃんよりも、委員長だった。

「それはご招待しないといけないわね、文化祭に!」

 委員長の一声に、オカルリちゃんが「おーーー」と声を上げて賛同すると、何故か、茜ちゃんや史ちゃん、加代ちゃん、ユミリンだけでなく、お姉ちゃんやまどか先輩までもが声を重ねる。

 私が声を上げていなかったことをバッチリ見抜いたオカルリちゃんが「はい、ハヤリンも~」と声を掛けてきた。

 注目もあって少し気恥ずかしかったけど、足並みを乱すつもりはないので「おー」と声を上げる。

 少し声が小さくなったし、腕は上がらなかったけど、そこは許して欲しいところだ。

 私がそんな風に自分のことで一杯一杯になっている一方で、委員長は参加していない千夏ちゃんに視線を向ける。

「はい、千夏ちゃんも!」

 そう促された千夏ちゃんは「え、わ、私はクラスが違うし……」と少し身を引いた。

 そこにすかさずまどか先輩が「それを言い出したら、私や良枝も門外漢だぞ」と笑いかけた。

「確かに、クラスの出し物に他のクラスの人間が参加するのは難しいかもしれないが、それでもできる範囲の協力をするつもりだ」

 更に続けるまどか先輩に、お姉ちゃんは「千夏ちゃんも手伝おうって思ったら、仲間に入れてくれるわ、ね、委員長さん?」と言いながら視線を委員長に向ける。

 対して委員長は「ウチのクラスの出し物としては、いろいろ制限が掛かるかもしれないけど、演劇部のくくりにしたら、千夏ちゃんも参加できるし、それならここにいるメンバーが全員参加できると思うけど?」と千夏ちゃんを見てから、最後にお姉ちゃんに視線を向けた。

 お姉ちゃんは「少し準備は大変かもしれないけど、やってみるのは楽しそうね。有志で劇以外にも出し物をするのも良いわね」と笑む。

 千夏ちゃんは先輩でもある二人の言葉に、大きく瞬きをした。

 委員長はそんな千夏ちゃんに、グッと顔を近づけて「もしそうなると、少なくとも文化祭までは一緒にいる時間が増えるわね。()()()()()()()」と告げる。

 少し距離を取った後で、委員長は更に「部活の出し物が倍になれば、一緒にいる理由も、説明しやすいと思わない?」と言い加えた。

 まどか先輩は、指を折りながら「新人戦、文化祭公演、それにアイドル……あ、それに、クラスの出し物もある……当然、試験勉強もあるから、大忙しだ」と言ってグーの形に握った手を見せる。

「誰がか一緒にいるのは当たり前だし、場合によっては家に帰らず同級生や先輩のお家に泊まることも出てくるわね」

 腕を組みながら言うお姉ちゃんの発言で、千夏ちゃんもはっきりと自覚したようだ。

 つまり、千夏ちゃんが家を留守がちに下として、それは管理人さんが何か怪しいという表明しにくい理由でなく、単に友人宅を泊まり歩く訳ではなく、ちゃんと目的と理由を持った行動になる。

 加えて、一人暮らしは危ないとか、もっともな理由を加えれば、情に厚い友達の親、つまり、ウチのお母さんやお父さんが、千夏ちゃんを受け入れても、それほどおかしくはないはずだ。

 千夏ちゃんのお父さんに事情を説明する場合も、大家さんの件を含ませるよりも、話をしやすいんじゃ無いかと思う。

 ともかく距離を置いて、その間に対策を立てるなり、情報を収集するなりして、状況を見極めた方が良いのは確実だ。

 私が思考を巡らせてる間、千夏ちゃんも何かを逡巡している様子だったので、強引とは思ったけど、踏み出して貰うことにする。

「千夏ちゃん、今更、抜けさせないよ? 史ちゃんと加代ちゃんも、千夏ちゃんもメンバーじゃなきゃ、私は参加しないから!」

 私がそう言うと、史ちゃんが表情を強張らせ「千夏ちゃん、参加しますよね!!」と圧をかけた。

 千夏ちゃんは、また大きく瞬きをしてから、目を閉じて「一つ条件があります」と言う。

 条件があるという千夏ちゃんに、そんな芥子は想定していなかったのもあって、皆が驚いた表情を見せた。

 そんな周りの反応を見ておかしそうに微笑みながら、千夏ちゃんは「良枝先輩」とお姉ちゃんに声を掛ける。

「な、なにかしら?」

 想定外の反応にお姉ちゃんにしては珍しく、動揺をしているようで、アワアワしているように見えた。

 そんなレアな反応をするお姉ちゃんに向かって千夏ちゃんは「演劇部でアイドルやるわけですよね?」と尋ねる。

「ええ、ま、まあ?」

 思わずだろう、お姉ちゃんは疑問符のついた返事をしたが、千夏ちゃんはそれを気にしなかったのか、あるいは想定内だったのか、言葉を詰まらせることなく、要求を突きつけてきた。

「演劇部のアイドルユニットなら、はじめ先輩に声を掛けることを、条件として提案します!」

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