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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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気遣い合って

 リーちゃん経由の情報補足で知ったけど、元の世界では『防犯』が普通だったけど、この世界の時代では、まだ『監視』目的の方が一般的だったようだ。

 そこにオカルリちゃんは敏感に反応したのだけど、さすがに、私が別の世界からの来訪者ということには思い至らなかったらしい。

 実際のところは、心が覗けるわけじゃないので、間違いないとは言えないし、オカルリちゃんが『種』の可能性もあるだろうし、油断は出来ない事に変わりは無かった。


「それで、ハヤリンは、防犯カメラについて何が聞きたいの?」

 オカルリちゃんにそう尋ねられた私は、千夏ちゃんの様子を横目で確認してから「一つじゃないけど、良いかな?」と尋ねた。

「もちろん、何でも聞いて」

 嬉しそうに胸を叩くオカルリちゃんに、頼もしさを感じながら、私は早速話を切り出す。

「えっと、確か、新しく開発しているビデオカメラなら、その管理に……侵入者に気付かれずに設置できるかもしれないって話だったよね?」

 オカルリちゃんは「そうだね」と大きく首を縦に振った。

「気付かれないのは良いけど、その、録画テープで記録するなら、限界はあるよね?」

 私の問いに、何かを感じたのか、オカルリちゃんは「うん。使う録画用のテープによるね」と、真剣な表情で答える。

「流石に一日は録画できないよね?」

 オカルリちゃんは「そうだね。最大で一時間半くらいだね」と返した。

「じゃあ、どうやって、タイミング良く撮影するかって問題があるよね?」

 私の問い掛け忍耐して、オカルリちゃんは「さすが、ハヤリン」と言って真剣な顔で頷く。

 自然と自分に視線が集まったのを確認してから、オカルリちゃんは「それだけじゃなくて、電源をどこから取るかって問題もあるね」と続けた。

 そこで一端話を止めたオカルリちゃんは、千夏ちゃんに視線を向ける。

 視線を向けられた千夏ちゃんは軽く身構えるが、オカルリちゃんはお構いなしで「なので、一度、家に入らせて貰いたいんだけど、大丈夫?」と問うた。

 今度は自然と皆の視線が千夏ちゃんに向く。

 視線を向けられた千夏ちゃんは、表情を強張らせてしまった。

 そんな千夏ちゃんを見たオカルリちゃんは「家に戻るのが嫌なら、鍵を借りられたらやらせて貰えるけど?」と柔らかい表情で告げる。

 相変わらず、気遣いが出来る事に感心していると、逡巡するような表情を見せた後で、千夏ちゃんは「ちゃんと、案内する」と断言した。

 そう答えた千夏ちゃんは少し青ざめているように見える。

 いち早くそれに反応したのはユミリンだった。

「チー坊、無理するな。行くのが嫌なら、私らが言ってやるからさ」

 心配と言うよりは、からかうような口調で言うのが、ユミリン流の気遣いなのだろう。

 千夏ちゃんもそれがわかっているのか、それとも反射か、強めの口調で「自宅を案内できないわけ無いでしょ」と切り返した。

 対してユミリンは「じゃあ、予定立てて()()行くわ」と皆を強調して笑む。

 大勢で行けば怖くないだろうという配慮が、私にも感じ取れる言い回しに、千夏ちゃんはほんの一瞬笑みを見せてから、それを隠すように顔を逸らして「来たいなら呼んであげなくもないわ」と強がりのような言葉を放った。


 オカルリちゃんとユミリンだけで無く、委員長や茜ちゃん、史ちゃんに、加代ちゃんとかなりの大人数で押しかけることになったので、流石に遠慮した方が良いかなと思ったのだけど、千夏ちゃんに『凛花ちゃんには来て欲しい』と言われてしまったのもあって、お邪魔させて貰うことになった。

 一年生用になっている昇降口を出て、校門付近で合流したお姉ちゃんやまどか先輩に、千夏ちゃんが自分で事情説明と皆で部屋に行く事を報告する。

 そんな話を聞けば、まどか先輩やお姉ちゃんが、後輩を放っておく訳もなく、自然と二人メンバーが追加されることになった。


「流石に準備に少し時間が欲しいので、私の準備が出来たらお知らせする形で良いですか?」

 そう尋ねたオカルリちゃんに、千夏ちゃんは「もちろん、私は助けて貰う立場だしね」と苦笑気味に返した。

「私は自分の好奇心を満たすために行動を起こそうとしているだけですから、気負わないでください~」

 軽い調子で言うオカルリちゃんだけに、本気にも、気を遣わせない配慮にも聞こえる。

 千夏ちゃんはそんなオカルリちゃんに対して「それでも、ありがとう」と言ったところで言葉に詰まった。

 それだけで心中を察したらしいオカルリちゃんは「好きに呼んでください、チー坊」と笑う。

 すると、千夏ちゃんはわざとらしく、眉を寄せて、下から顔を見上げながら「アナタも、その呼び方なの、オカルリ」と切り返した。

 それに対して、オカルリちゃんは、フッと笑うと「チー坊も、その、ハヤリンと同じ呼び方なのですね?」と目を細める。

「そ、それが、なにか?」

 明らかに動揺したのがわかる上擦った声で返す千夏ちゃんは、耳まで真っ赤になっていた。

 そんな千夏ちゃんの様子に、不思議と、誰かの真似って言われるのが、妙に恥ずかしい事ってあるよねぇと深く頷く。

 すると、隣にいたまどか先輩が苦笑を浮かべて「多分、そうじゃないと思うよ、姫」と首を振って見せた。

しばらくの間、予定が立て込んでしまったため、更新が不安定になるかも知れませんが、更新可能な日は16時に掲載しますので、予めご了承ください。

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