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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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教室にて

「こ、これは……」

 差し出された手を掴んでプルプルし出したオカルリちゃんの反応に、皆が不思議そうな顔をした。

 握手を交わしている千夏ちゃんは、加えて少し引き気味になっている。

「あれですね、博士の立場ですね! 私!」

 もの凄く嬉しそうに言うので、思わず「オカルリちゃん、嬉しそうだね」と声を掛けてしまった。

 直後、千夏ちゃんから手を離したオカルリちゃんが、グリンと全身を使ってこちらに振り返る。

 思わず仰け反りそうになった私に、グンと顔を近づけて「カッコ良くないですか、博士ポジション! 謎を解明したり、必要な道具を用意したり、知識で支えるのが、もの凄く格好いいですよね!」と目をキラキラさせて尋ねて来た。

「そ、そう……だね」

 私の返しに満足そうに頷いたオカルリちゃんは「わかってくれて嬉しいです!」と言って、離れて行く。

 圧が強かったので、少しほっとした反面、僅かに寂しさを感じてしまった。


 改めて学校に向かいながらオカルリちゃんは自分が用意できるカメラについて情報を補足してくれた。

 カメラのレンズ、録画用のテープなど、かなり小さくまとめられているので、物陰に設置すれば気付かれることはないだろうと言う。

 私も含めてだけど、オカルリちゃんの言葉だけでは具体的なサイズのイメージが出来無かったので、実際にどうするかは実物を見手からにしようと言うことになった。

 その際に、録画の方法や録画した映像の確認方法なども確かめる。

 大まかな方針が決まったところで、週末に実際の機材をオカルリちゃんが持ってきてくれることになり、私の家で相談会が開催されることになった。


「あ、凛花ちゃん、ちょっと良いかしら」

 教室に着くなり、委員長から声を掛けられた私は「どうしたの、委員長?」と返した。

「あ、先に席まで移動してからで良いわ。思わず声を掛けちゃったけど、もの凄く急いでるって訳でもないしね」

 そう言って軽く後ろに下がって、委員長は道を空けてくれる。

「じゃあ、先に荷物を置いちゃうね」

 私は委員長にそう断わってから、自分の席へと移動して通学鞄を机に乗せた。

 自分の席に荷物を置いた史ちゃん、加代ちゃんが近づいてきて、ユミリンは自分の席に着くなり、椅子に反対に座って私と委員長の話を聞く体勢を取る。

 いつの間にか荷物を置いてきたオカルリちゃんに、茜ちゃんも集まってきて、あっという間に私の席の周りに人だかりが出来た。

 席が隣の渡辺君達が押し退けられる形になってしまったのは申し訳ない。

 とはいえ、話が終わるまではこのままだろうし、逆に話が付いてしまえば、留まらないだろうと考えて、話を済ませてしまうことにした。


「それで、委員長、なにかあった?」

 私の質問に委員長は「実は、今舞手を務めてくれたお家の方から連絡を貰えたの!」と笑みを見せた。

 珍しく嬉しさが滲み出た委員長の様子に、ちょっと驚いたけど、相手のことを好きなんだろうなと思うと、年相応な部分が見られた気がして微笑ましく感じる。

 そんな風に思いながら観る私をどう捉えたのか、委員長は少し慌てた様子で「あ、あの、舞手をしていたお家には今年大学生になったお姉さんがいて、ずっとお世話になってた人で……」と説明を始めた。

「まあ、その憧れてた……というか……」

 話を重ねるほどに、委員長は珍しく視線を逸らしてシドロモドロになっていく。

 気恥ずかしそうに頬を掻き始めて黙ってしまった委員長に、私は「どんな連絡がきたんですか?」と尋ねてみた。

 すると、委員長は声を弾ませて「今度の連休に返ってきてくれるんですって! 凛花ちゃんに神楽舞いを教えるつもりって言っていたわ!」と教えてくれる。

「え、えーと、一応、まだ、私がやるとは決まってないですよね?」

 私がそう切り返すと、委員長は「引き受けたくなくなっちゃった?」と心配そうな顔を見せた。

「いえ、決してそういうわけじゃなくて……」

 そう返すと、委員長は「じゃあ、安心して、もう決定したも同然だから!」と言う。

「正式な話し合い前に、そんなこと言って良いんですか!?」

 思わずそう尋ねてしまった私に「凛花ちゃんのお家の人も受け入れてくれて、宮司の神子さんの推薦があって、ウチの学校の先生方も推薦してくれてる……しかも、舞手の家の人達も、凛花ちゃんに教える気でいるのに、凛花ちゃんに決まらない……お願いしないなんてことあると思う?」と、首を傾げながら委員長は尋ねて来た。

 私としても、それだけ並べられれば「思いません」としか答えられない。

 委員長は私の返しに満足そうに頷くと「そんなわけで、正式には話し合いの前ですが、凛花ちゃんにお願いすることにほぼ決まりました」と言い切った。

 その上で、集まった皆に視線を向けながら「それで、神楽のメインは凛花ちゃんが勤めるけど、一緒に踊る人も募集してるんだよね」と委員長は笑みを見せる。

 この状況でその発言をしたらどうなるかなんて百も承知で委員長は言っていた。

 その証拠に、史ちゃんや加代ちゃん、ユミリンが参加を表明すると、一層浮かべていた笑みを深めたのである。

 委員長は皆の様子に満足そうに何度も頷いてから、私に視線を向けて「もちろんだけど、私も神楽舞いに参加するからね」と断言して見せた。

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