表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
305/475

新たな

「うちの両親、技術屋なのですよ」

 急にそんなことを言い出したオカルリちゃんの言わんとすることがわからず、皆の頭の上に疑問符が浮いた。

 そんな皆を代表して、ユミリンが「技術屋って、どういうことだよ?」と尋ねる。

「新しいビデオカメラの開発をしてます」

 カメラの話題が出たことから、関連する話だというのはわかるものの、それがどう繋がるのか、思いつけなかった。

 ユミリンも同じだったようで「新しいビデオカメラは、何か違うってことか?」と首を傾げる。

 すると、オカルリちゃんは自分の学生鞄から一冊の教科書を取り出した。

「国語の教科書?」

 加代ちゃんがオカルリちゃんの取り出した教科書を見て不思議そうな顔をする。

「この大きさを見てください」

 オカルリちゃんの手にある国語の教科書は、一般的なA4サイズのノートよりもやや小さいB5サイズのものだ。

 それがどうしたのだろうと思っていると、オカルリちゃんは「新しいビデオカメラは、このサイズなのです」と言う。

 それがどうしたのかと思っていたら、お姉ちゃんが「えっ!? そんなにサイズが小さいの!」と驚きの声を上げた。

 意味がわからず目を瞬かせている私に、リーちゃんがこの時代のカメラはA4ノートより大きいのだと補足してくれ、更に外付けなので、その他に記録用のテープをセットした録画装置も必要らしい。

 少なくとも、今の林田家にある録画機材は、それなので、お姉ちゃんの基準は当然その組み合わせというわけだ。

 けど、お姉ちゃんは更に続くオカルリちゃんの言葉により猛烈な衝撃を受けることになる。

「ブチョー先輩、カメラだけじゃなくて、録画用のテープをセットした上で、このサイズなのです!

 海外の通販サイトなどで見かけるようなオーバーアクションで、お姉ちゃんは「え、え!?」と驚きの声を上げた。

 一方、機会に多少明るいのか、ユミリンが「さすがに、ベータ……だっけ? あれでもそんなサイズには収まらないんじゃないのか?」と言う。

 対してオカルリちゃんは大きく頷くと「そのとおり、これは新たなサイズの録画カセットを使っているのです!」と会心の笑みを見せた。

「田中るさんのご両親は、その新しいビデオカメラの開発されている技術者と言うことですか……」

 史ちゃんの発言に、オカルリちゃんは「そういうことー」と明るく答える。

 直後、スッと真面目な表情を浮かべたオカルリちゃんは「流石に開発中の機体を借りるなんて出来無いけど……試作用のパーツは無数にあるわけ」と続けた。


「つ、つまり、監視用のカメラを作る……ってことかしら?」

 予想を遙かに上回る案を示したオカルリちゃんに対して、お姉ちゃんは信じられないという顔をしながらも、自分で導いた内容が正しいか確かめるように問うた。

 オカルリちゃんは軽く頷くと「簡潔に言うと、美術館だとかで導入されている監視カメラを、私たちで作って設置する計画と言うことですね」と言ってにっこりと笑う。

 これに、強く反応を示したのは、千夏ちゃんだった。

「ま、まって、る、ルリさん?」

 千夏ちゃんに対し、視線を向けたカルリちゃんが「なにかな、ちーちゃん?」と軽く首を傾げる。

「あ、あくまで、私の思い込みかもしれないわkで、そんな大事に……び、美術館でやっているようなことをするなんて……」

 話の広がりや比較対象のあまりの大きさに、許容範囲を超えてしまったらしく、千夏ちゃんはかなりアワアワしていた。

 一方、落ち着いた様子でオカルリちゃんは「核家族化が進んだり、大家族が減っていくと、将来、人間の目が届かなくなると思うんだよね」と、まるで見当違いのような発言をし始める。

 既に許容限界の千夏ちゃんは「え?」を連呼するだけだったけど、私の中のリーちゃんは『ほぅ』と感心した様子を見せた。

「そうなってくると、頼れるのは何か……私は機械の目か、オカルト的な目だと思うんだよー」

 オカルリちゃんは話しながら私を見て、ニィッと薄く笑う。

 思わずドキットする笑みに驚いてしまったけど、不思議と嫌な感触はなかった。

 そんな私を見続けて笑みながらオカルリちゃんは「()()私では、オカルトの目は操れないけど、機械の目なら多少は作ったり操ったりできる。だから、実験に使わせて欲しいんだよね、チーちゃんの状況」といって、最後に人差し指と共に、視線を千夏ちゃんに向けた。

「じ、実験!?」

「そう、実験」

 驚きの声を上げた千夏ちゃんに向けて、オカルリちゃんは大きく頷いてみせる。

「機械の製作や設置で自分の技術を試せるし、将来の機械の目を作る経験とサンプルにもなるし、状況を利用させて貰えると嬉しいんだけど」

 オカルリちゃんはそう言って、あくまで自分のためと言わんばかりの話を組み立てて見せた。

 どう考えても『千夏ちゃんのため』が基礎にあるのに、気遣いの出来るオカルリちゃんがそれを見せないのは、気に病ませない為だろう。

 千夏ちゃんは目を潤ませた後で、目を閉じて顎を開けて深く息を吸い込んだ。

 その後でゆっくりと千夏ちゃんが開いた瞳には、涙の揺らぎは一切見られない。

 完全に気持ちを切り替えたのであろう千夏ちゃんは「実験に協力しても良いわ、ルリちゃん」とオカルリちゃんに手を差し出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ