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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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登校中の

「へぇ、スゴイじゃない、千夏ちゃん!」

 朝食の席に着いたお姉ちゃんは、いつもよりも高めのテンションで、千夏ちゃんを絶賛した。

「い、いえ、お母様や凛花ちゃんを手伝っただけで!」

 手放しに褒められたからか、もの凄く慌てた様子で千夏ちゃんは首を振る。

「確かに、お弁当は皆で協力したけど、お姉ちゃんの目玉焼きは千夏ちゃんが作ったんだから、お手伝いだけって事は無いよ」

「り、凛花ちゃん!?」

 ただ事実を言っただけなのに、血ナウちゃんは大きく動揺を見せた。

 一方、お姉ちゃんの方はマイペースを保っている。

「それじゃあ、早速食べさせて貰うわ!」

 自分の目の前にあるお皿に取り分けられた目玉焼きに、お姉ちゃんは醤油を回しかけた。

 私に何か言おうとしていた千夏ちゃんは、お姉ちゃんの動きに気が付いてそちらに意識を向ける。

 お姉ちゃんは巧みに箸を操って、白身を切り分けると、口に運び入れた。

 千夏ちゃんは、そんなお姉ちゃんの所作をジッと見詰めている。

 喉が小さくなる音が聞こえた気がした。


「美味しいわよ」

 咀嚼を終えたお姉ちゃんは笑顔で千夏ちゃんにそう告げた。

 安堵の溜め息を漏らした後で、千夏ちゃんは「卵を焼くだけだから、料理とは言えませんけど」と言う。

「あら、世のお姉ちゃんというモノは、妹の作ってくれたお料理と言うだけで価値を見出すし、嬉しくてたまらないものなのよ」

 お姉ちゃんの発言に、目を瞬かせ千夏ちゃんが「妹って、凛花ちゃんは……」と口に仕掛けたところで、言葉を遮られた。

 掌を見せて言葉を遮ったお姉ちゃんは「だって、李奈津ちゃんは凛花のお姉ちゃんなんでしょう? なら、私の妹じゃ無いかしら?」と言って、ニヤリと笑う。

「えっ!」

 千夏ちゃんは驚きの声を漏らすも、そこに嬉しい感情が微かに交じっていた様に感じられた。

 そんな千夏ちゃんに、お母さんが「じゃあ、私の娘が増えるということね~」と言って、会話に参加してくる。

 お姉ちゃん、お母さんの言葉を受けて、もの凄く期待した目を千夏ちゃんが私に向けて来た。

 もの凄く不本意ではあるものの、そんなに着たいの籠もった目を向けられた私に選べる選択肢なんて一つしか無い。

「なに? 千夏お姉ちゃん?」

 今出来る最大の抵抗の不機嫌顔で聞いてみたのに、残念ながら、もの凄く嬉しそうな顔で抱き付いてくる千夏ちゃんには何の効果も及ぼさなかったようだ。


「チー坊」

「なにかしら?」

 どこかぶっきらぼうに声を掛けたユミリンに対して、千夏ちゃんは昨日とはまるで別人としか思えないほどの輝かしい笑顔で返事をした。

 あまりの変わりように、合流してきたばかりのユミリンは少し驚いた表情を見せる。

 が、すぐに苦笑を浮かべると、お母さんから受け取ったお弁当の包みを手に「チー坊も作ってくれたんだってな……その、ありがと、な」と言い難そうに感謝の言葉を口にした。

 対して、千夏ちゃんは頬を赤く染めつつ僅かに視線を逸らして「ま、まあ、ついでよ」とぎこちない答えを返す。

 その返答を聞いたユミリンは、今度はニヤリと笑い「でも、まあ、ほとんどサッちゃんとリンリン作だろ?」と挑発した。

 千夏ちゃんはいつものようにけんか腰で帰さず頬を掻きながら「まあ、初心者が下手に手を出して失敗するより良いでしょ?」と少しトーンを落として返す。

 私も『おや?』と思う千夏ちゃんの反応に、ユミリンは軽い動揺を見せた。

 おそらくはいつもの様な強めな切り返しがあって、ラリーに発展すると考えていたのだろうけど、そうはならず困惑したんだと思う。

 挑発してしまった手前、どうしたら良いかわからずに困惑を続けているユミリンに対して、千夏ちゃんは歯を見せて笑いながら「味わって食べなさいよ」と言い放った。


 史ちゃん、加代ちゃん、それにオカルリちゃんが合流したところで、私たちは学校に向けて出発した。

 合流した史ちゃんと加代ちゃんは、別れた後の話をしてくれたのだけど、その流れで千夏ちゃんの話に移る。

 最初こそ、ウチに千夏ちゃんが泊まったことに、複雑そうな表情を見せていたけど、事情を聞くと同情と心配に変わった。

「私じゃ、役に立たないかも知れないけど、手伝えることは手伝うからね」

 加代ちゃんの言葉に、千夏ちゃんは嬉しそうに「ありがとう」と頷く。

 一方、史ちゃんはオカルリちゃんに対して「田中る。何か良いアイデアはないの?」と問い掛けた。

 声を掛けられたオカルリちゃんは「ビデオとか設置してみる?」とサラリと返す。

「ビデオ?」

 オカルリちゃんの発言に、お姉ちゃんが真っ先に反応した。

「えっと、家の中を録画しておけば、何か証拠が掴めると思って」

 説明するオカルリちゃんだけど、これにユミリンが「そりゃあずっと撮影できるなら良いだろうけど、長くは撮れないだろ?」と険しい顔で言う。

 続けて、お姉ちゃんが「それに、ビデオのカメラってもの凄く大きいでしょ?」と眉をひそめた。

 私はオカルリちゃんの発言で、単純に家庭用の防犯カメラを連想したけど、すぐにリーちゃんに、まだ技術的に小型のカメラやネット経由のシステムなどは、一般普及していないことを指摘される。

 そして、ユミリンやお姉ちゃんが指摘したとおり、一般家庭に普及し始めたばかりのカメラでは録画時間も短いし、設置しても大きさでバレるだろうと情報を補足してくれた。

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