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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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着席

 気持ち足早になりながら、見つけた教室へと向かうため、まずは南棟へと向かうことにした。

 廊下は少し肌寒かったけど、渡り廊下の一階部分は、腰丈の壁があるだけの開放的な造りで、日も当たるお陰で少し暖かい。

 スカートを揺らす程度の風が吹いているけど、ソックスの丈が長くなったお陰か、特に気にならなかった。

 少し心地良いかもと思う暖かな空気をはらんだ風を感じつつ、南棟へと歩を進めていると、段々とワイワイとした声やホイッスルの音が大きくなっていることに気付く。

 恐らく、南棟の南にあるグラウンドで体育の授業を受けているクラスのものだ。

 しっかり確認したわけでは無いけど、鉄棒付近に集まっている集団と、短距離走をしている集団があったと思う。

 南棟に入り、階段に向かいながら、目指す『1-F』が体育の授業中じゃ無くて良かったと今更流れ亜思った。


 階段を一階から三階まで一気に登り切った私は、手前のクラスに掲示されているプレートを見ると

そこには『1-D』と書かれていた。

 その奥には『1-E』、そして目標の『1-F 』となっている。

 授業中なので、足音を立てないように気をつけて、慎重に教室へと向かった。

『1-F』のプレートの掛けられた前の扉では無く、後ろ側の扉をゆっくりと開けて教室に顔だけ入れてみると、タイミングが良いのか悪いのか、バッチリと数学の担当教諭だと思われるスーツの初老の男性と目が合ったしまう。

 反射的に何か言わなければと思ったのだけど、先に先生の方が「林田、大丈夫なのか?」と声を掛けられた。

 名前の呼び捨てに少し驚いたものの、私のことを少なくとも『林田』だと認識しているのは確認できたので、動揺を見せないように意識しながら「保健医の先生に、教室に戻っていいと言われました」と返して、空いている席に近づく。

「そうか。体調が悪くなったら無理せず、言いなさい」

「わ、わかりました」

 私とのやりとりで授業を中断させてしまっているので、少し申し訳ない思いが強まってきた。

 ともかく、席について大人しくしようと思って動こうとしたところで、改めて数学の教諭から「林田」と名前を呼ばれる。

 何だろうと思いながら「はい」と返事をすると、教諭は人差し指で自分の左胸を指さした。

 言いたいことがわからないものの、何かのジェスチャーだとは思うので考えていると、私の席と思われる席の一つ前の女の子が、こちらに振り返って、口パクで何かを言いながら自分の胸を指さす。

 そこには数学の給油と違って、『根元』という二文字が書かれた青いラインの入った白いプラスチックのプレートに、学校の校章と青地に白文字で『F』と書かれた徽章の取り付けられた臙脂の布が取り付けられていた。

 お陰で一連のジェスチャーが、名札と校章……後はクラス章を付けろということなのだと理解した私は、さっき確認したときにスカートのポケットに入っていた私のものを取り出す。

「すみません、寝ていたので外していました」

 そう言って頭を下げると、数学教諭は「気をつけなさい」と口にすると、授業を再開した。

 小声で「ありがとう根元さん」と伝えてから、左胸に『林田』と描かれた名札と、二つの徽章が付けられた臙脂の布を取り付ける。

 席に座って机の中を確認してみると、教科書にノートがいくつも収められていて、その他にハンカチと同じ『リンカ』の刺繍がある布製の長方形のポーチが出てきた。

 ポーチの中身は、筆記用具……だったのだけど、中身はキャップの付いた鉛筆と消しゴム、蛍光ペン数本が入っていて、シャーペンやボールペンは入ってない。

 ともかく筆記用具は見つけたので、数学の教科書と『数学』と書かれているノートを取り出した。

 ノートには『1年F組 林田 凛花』と私の字で書かれている。

 いや……あくまで私の字に似ているだけで、私が書いたものとは限らないのだけど、ただこれまで見てきたものと違って、私自身が係わっている可能性に、なんとも言えない不安を覚えた。

 ともかく、授業は続いているので、止まってる場合では無いと、ノートを開いてみる。

 そこには私の文字で、黒板の写しと、自分なりの注意書きが書き込まれていた。

 実は私の書く文字は今の体になってから、丸みの強い文字になっている。

 元々の京一として文字は右上がりの少し雑な字……読みにくい……汚い字だったので、今の私の字はかなり読みやすくなった。

 そんな変化があったのだけど、ノートに書かれている内容、ポイントの書き方は、()()()なのに、文字は私、凛花としての文字になっている。

 最近はタブレット学習もあるので、凛花として、こんなにがっちりノートを取ったりはしていないので、京一時代のノートが時空を越えて出てきたのかもしれないけど、それでも文字が今の私の文字になっているのが奇妙でしか無かった。

 考えても結論が出そうに無かったので、私はとりあえず、黒板に書かれている内容を書き写すことにする。

 授業中に何もせず座っていると、教団からはもの凄く目立つのもあって、カモフラージュの意味も込めて、書き写すことに集中して、今日のところはポイントの書き込みは控えておくことにした。

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