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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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閃きと暴走

 お母さんの陰でお姉ちゃんの暴走も収まり、話は終わりそうだなと思った。

 けど、急にお姉ちゃんが思いついたままを口にしたことで、またも状況が、急展開を見せそうに鳴ってしまう。

「体操服は大丈夫だとわかったけど、水着はどうかしら?」

 お姉ちゃんの発言に、さっきは声を上げる人はいなかったけど、今回は恐る恐る手を挙げた加代ちゃんが「あ、あの、私も中学の水着って気になります」と口にした。

「確かに……あの、良枝先輩、小学校で使っていた物をそのまま使うのでしょうか?」

 丁寧な口調で問われたからか、支店が声を掛けた史ちゃんに移ったからか、お姉ちゃんはピタリとフリーズする。

 ほんの数秒で再起動したお姉ちゃんは「ウチの中学には一応指定の水着があるわ」と、部活の時に見せる部長の顔で答えた。

「そうなのかー」

 ユミリンが軽い感じで返したからか、千夏ちゃんが「軽いわね。気にならないの? アンタも水泳の授業は受けるんでしょ?」とツッコミを入れる。

 その後に「、まさか、全部見学にする気?」と怪訝そうな表情を浮かべた。

「なんで、そんな訳のわからない方に話が進んでいくんだ、お前は」

 呆れたように返してから、ユミリンは「単純に、良枝姉ちゃんの中学の水着って、うちらが小学校で来てるのとそんなに違わなかったからさ。あれ、学校の指定があったんだなーって」と口にしながら私の方に視線を向ける。

「去年も夏休みにプールに行ったけど、私らとそんなに変わらなかったよね、リンリン?」

 過去の話を振られた私は、内心ではもの凄く驚きながらも「そう……かも」と曖昧に返事を濁した。

「え、良枝姉ちゃんの水着に興味が無いの?」

 ユミリンの言い回しに、危険を感知した私は「その聞き方は……」と制止を掛けようとしたのだけど、残念ながら遅かったらしい。

「り、凛花はお姉ちゃんに興味が無いの!?」

 慌てた様子のお姉ちゃんに対して、勢いで負けてしまわないように、なるべく声を張って「興味が無いわけ無いよ! いつもお姉ちゃんを見て参考にしてるからね! むしろ興味津々だよ!」と切り返した。

「そうなの!? お姉ちゃんほっとしたわぁ」

 そう言ってお姉ちゃんは抱き付いてきたので、ここで変に抵抗すると状況が悪くなることをちゃんと学んでいる私は、大人しく身を任せる。

 脚に触れてくるお姉ちゃんのスカートの感触に、自分がまだ体操服姿だったことを思い出した。


 お姉ちゃんが多少冷静さを取り戻して、私から離れたところで、顎に手を当てたお母さんが記憶を辿る素振りで「確か、学校から水着購入のプリントが配布されるんじゃなかったかしら」と教えてくれた。

 お母さんの記憶を裏付けるように、お姉ちゃんが続く。

「もう少ししたら配られると思うわ」

 加代ちゃんがそれを聞いて「学校で皆揃って買うんですね?」と尋ねると、お母さんが「普通にデパートとか、スポーツ用品店でも買えるわよ。中学の名前を言って、水着のサイズを言えば良いの」と返した。

「あれ、それだと別に学校で買わなくてもいいんじゃ無いですか?」

 千夏ちゃんの気付きに対して、お母さんは「学校で買うと、少し安く買えるのよ」と利点を交えてわかりやすく答える。

「そうなんですね」

 頷いた千夏ちゃんに、今度はお姉ちゃんが「由美ちゃんも言ってたけど、水着自体は小学校の頃とほとんど変わらないからね」と告げた。

「ん? 水着は学校指定じゃ無いんですか?」

 史ちゃんが首を傾げながら疑問を口にすると、お姉ちゃんは悪戯っぽく笑いながら「紺色で、ワンピースの水着って指定されてるわ」と答える。

「あー、だから、私たちと変わらないなって思ったのかー」

 手をポンと叩いて頷くユミリンに微笑みながらお姉ちゃんは「そうね」と頷いた。

 その後で皆を見渡しながら「私たちの小学校で使ってたのは、ウチの中学と同じだったけど、小学校が違う史ちゃん、加代ちゃん、千夏ちゃんは、学校で注文した方が……」と口にしたところでお姉ちゃんが急に動きを止める。

 嫌な予感と共に、お姉ちゃんが言い出しそうなことが脳裏に過る。

「凛花!」

「お姉ちゃん、流石に試着はしないよ、お姉ちゃんのサイズの水着は着られないから」

 ゴムの入っている体操服ですらブカブカなのに、伸縮性があるとは言え、肌に直接身につける水着は、それこそいろいろ見えてしまいそうな危険があるのだ。

 何を思い付いたかは定かではなかったものの、一番危険な可能性を潰すように切り返した結果、お姉ちゃんは「えーー」と不満そうな声を上げる。

 不満の声は上げたものの、それでもどうやら、自分の思いつきよりも、私の言っていることの方が筋が通ってると思ってくれたようで、お姉ちゃんは水着を着ろとは言わなそうだ。

 早めに切り返したお陰で事態を最悪から逸らせた事は良かったものの、予測が当たってしまっていたことに嫌な汗が噴き出るのを感じながら、複雑な気分で私は胸を撫で下ろす。

 一緒にお風呂やプールに入るのは、緋馬織の日々もあって、多少慣れてきているけど、皆が制服を着ている中で、一人だけ体操服や水着、それもお姉ちゃんのを着るとなると、かなり恥ずかしいのだ。

 しかも、皆は悪意無く褒めてくれるだろう事が予測が出来るし、そうなれば恥ずかしさに拍車が掛かる。

 見えそうなのを気にしつつ、そんな声を浴びたらおかしくなる自信があるので、回避できて本当に良かったと心の底から思った。

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