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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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お嬢と姫

「鈴木裕子です」

「あら、ご丁寧に、凛華の姉で、部長をしている林田良枝です」

 部長と名乗る前に私のお姉ちゃんと名乗る事に、もの凄い違和感を覚えたものの、言っても仕方が無いと思って、ツッコミは飲み込んだ。

 部室に着くなり、真っ直ぐに進んで行ったことからして、裕子さんはお姉ちゃんのことを知っているのかもしれない。

「ご迷惑で無ければ、近く部活の見学をさせて頂ければと思っています」

 丁寧な口調で言う裕子さんに、お姉ちゃんは「いつでも歓迎します。鈴木裕子さん。早速今日から見学されますか?」ととても落ち着いた振る舞いで応えた。

 大人同士のやりとりと言われてもおかしくないしっかりしたものだと思う。

 まあ、二人とも、中学校の制服姿なので、あくまでしっかりしている止まりだけど、設定年齢よりも下に見える私としては、正直憧れに近いものを感じてしまった。


「いえ、今日は個人的な理由で恐縮なのですが、習い事がありまして……ただ、いち早く凛花さんのお姉さんでもある部長さんに、部活にお邪魔させて貰う許しを得ようと思った次第です」

「そうなんですね」

 二人の会話の雰囲気は和やか出しお互いにこやかなのに、何故か、ピリッとした妙な緊張感が時々走る妙な状況になっていた。

 空気が微妙になると飛び出てくるオカルリちゃんも、普段から場の空気を操るまどか先輩も様子見と言った感じで入ってこない。

 それだけお姉ちゃんと裕子さんの間には割り込みにくい空気が満ちているのだ。


 挨拶を追えた裕子さんは、お姉ちゃんをはじめとした先輩方に見送られて部室を後にした。

 たまたまそのタイミングで部室にやって来た千夏ちゃんが、こちらにやって来るなり「誰、今の?」と興味津々と言った顔でオカルリちゃんに尋ねる。

 誰に聞くのが一番か心得ているのだ。

 そして、千夏ちゃんの選択が正しかったことを証明するように、オカルリちゃんは流れるように個人情報を口にし始める。

「今のは、うちのクラスの鈴木裕子さん。歴史のあるお家のお嬢様ですよ。兄と姉が一人ずついて、どちらもこの中学の卒業生です。親戚含めた家族が、華道、茶道、日舞などの免許を一つ以上持っているらしいですね」

 一息でそこまで言い切ったオカルリちゃんを指さしながら、委員長が「本人は合気道を護身術として幼稚園児の頃から習っているから、この人みたいに迂闊に揶揄わないことをおすすめするわ」と続けた。

 オカルリちゃんと委員長の話に「なるほど」と頷いた千夏ちゃんは、何故か「つまり、リンちゃんのライバルだね!」という謎結論に着地する。

 何故、そうなったとツッコミを入れる前に、史ちゃんが「チーちゃん、なにを言っているんですか」と溜め息を吐き出した。

 そんな史ちゃんに、千夏ちゃんが視線を向ける。

 史ちゃんはそれを合図に更にとんでもないことを言い出した。

「アチラはお嬢様、こちらはお姫様、比べものになりません」

 飛び出た言葉のとんでもなさに固まっている間に、加代ちゃんが「確かにそれはそうだね」と頷く。

 茜ちゃんまでもが「確かにお嬢と、姫様じゃ、姫様の方が強そう」とおかしな同調を始めた。

「さすが姫、皆の信頼が厚いねぇ~」

 揶揄うような口調で、さっきまで様子見をしていたまどか先輩までもが参戦してくる。

 流石に流されて鳴るものかと思って、私は口を開いた。

「い、一度、確認しなきゃいけないと思ってたのですが、私に姫要素なんて無いと思うんですけど!?」

 ズバッと切り込んだお陰か、皆の動きが止まる。

 あえて、口には出さず、心の中で『これで揶揄いも終わりですよ!』と言う気持ちで、軽く胸を張って、目を閉じて澄まし顔をしてみせた。

 完全勝利を感じる沈黙に、なんだか心地良くなってきたところで、まどか先輩が「それは……」と言い出す。

 目を開いて視線を向けると、まどか先輩はニッと笑みを浮かべて「まずは見た目だなぁ」と続けた。

「見た目!?」

「なかなかいないと思うよ。日の光を浴びて、少し青みを帯びて見えるのは、姫が特別って感じがするよ」

 まどか先輩の言葉に「まあ、髪の毛が赤みを帯びて茶色く見える人は見たことあるけど、青っぽく見えるのは凄く特別なんじゃ無いかなと思うわね」と委員長が同調してしまう。

 少し茶目っ気のあるまどか先輩だけならまだしも、真面目で硬いイメージのある委員長が乗っかったせいで、一気に私の勝利の沈黙が崩れ去ることになった。

「髪の毛自体も真っ直ぐで綺麗ですよね」

 史ちゃんの発言に、千夏ちゃんが興奮気味に「うん。お風呂上がりでも、寝起きでも、全然乱れないし、何より枝毛とかが無いのが凄いと思う!!」と力説する。

 元々この身体は変化の術で生み出したせいか、変化が起きにくいのは千夏ちゃんの言うとおりだ。

 髪の毛が青みを帯びるのは、元が銀髪だったからじゃ無いかと、月子お母さんに推測されていたけど、まさか、髪が乱れないことまで観察されているとは思わなかったので、千夏ちゃんの観察力には舌を巻く。

「それに何よりも、このバランスのとれたスタイルですよね。水着姿が楽しみでなりません」

 オカルリちゃんが楽しそうに、そういった結果、皆が一瞬動きを止めた。

しばらくの間、予定が立て込んでしまったため、更新が不安定になるかも知れませんが、更新可能な日は16時に掲載しますので、予めご了承ください。

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