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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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お手本役

 元の世界では片手に収まるサイズの端末をスピーカーに繋げて、再生していたのだけど、流石にこの時代ではそんな機会はないようだ。

 録音も、カセットテープが使われていて、アナログで録音しないといけない。

 光学ディスクであるCDに録音できる技術はもうあるらしいのだけど、まだ一般化はしていないとリーちゃんが補足してくれた。

 そんなラジカセには電源コードが無かったので電力はどうしているのかと思ったら、リーちゃんから乾電池を利用していると教えて貰う。

 しかも、単二電池が八本も必要らしく、流石にそんなに沢山大きな電池を使う物は見たことがないので、軽い衝撃があった。

 とはいえ、この時代では当たり前な存在なので、皆は気にした様子も無く、笠をふとももに当てて踊り出しの準備に入っている。

 やや遅れてしまったものの、私も笠を太ももに当てて、曲の始まりを待った。


 綾川先生の手拍子だけだった時よりも、曲のテンポは早いものの、まったく追いつけないほどではなかった。

 曲に合わせるのも、綾川先生がちゃんと手拍子をしてくれているので、ズレずにどうにか踊れている。

 加えて動きのヒントも出して貰えるので、思った以上に自分の動きに集中出来た。


「何故、こんなことに……」

 私の呟きに、横に立つオカルリちゃんが「振り付けが頭に入っているからって、あやっち先生が言ってたよ」とサラリと返してきた。

 振り付けのこと(それ)自体は、直接綾川先生に言われたので、わかっている。

 とはいえ、綾川先生の指示出しがあったから間違えなかっただけで、完璧に頭に入っているわけでは無いのだ。

 だというのに、お手本として、皆の前で踊ることになってしまったのである。

 ただ、救いというか、ありがたいことにと言うべきか、私一人では無く、私のクラスからはオカルリちゃんと二人いる鈴木さんの一人、型と眉上で綺麗に真っ直ぐ切りそろえたおかっぱ頭が印象的な裕子さんが選ばれていた。

 E組からも三人、胸のゼッケンによると、川上さん、菅野さん、前川さんの三人が選ばれている。

 六人のうち、前川さんと川上さんが背が高い組の輪の子で、残りが低い組だ。

 今回は手本として私を含む6人が鏡の前に立ったので、残りの子達は 横に9人並び、それが四列の形に並び直している。

 列としては前に列が背の低い組、後ろに列が背の高い組だ。

 そして、多少予感はあったのだけど、その予感通りに、私の前には、史ちゃん、加代ちゃんが陣取っている。

 正直、落ち着かないけど、授業なわけだし、私のわがままで授業を阻害するのは良くない……というか、先生の指示に従わない理由にはならないので、思い目を閉じて心を落ち着かせることに専念した。


 曲が流れ始めると、思った以上に集中出来ていた。

 輪になって踊っていたときほど、細かく綾川先生から支持派でないものの、流石に三回目なのもあって、次が朧気に浮かぶようになっている。

 変に萎縮して、動きが小さくなるとミスが目立つと雪子学校長に教わっていたので、気持ち大きめに、動いてる最中では無く、止める瞬間を特に意識して踊ってみた。

 踊り始めるまでは史ちゃんや加代ちゃんをはじめとした皆の視線が気になっていたはずなのに、踊り出してしまうと、気にならなくなってくる。

 自分の動きに没頭しているうちに、曲は終わりを迎えていた。


 手首に付けた腕時計を確認した綾川先生は「よし、そろそろチャイムが鳴るな」と、口にした後で「よし、それじゃあ、お手本を務めてくれた6人に拍手」と皆に拍手を促した。

 拍手が鳴り止んだタイミングで「少し早いが、今日の授業はここまで!」と綾川先生が宣言する。

「「「ありがとうございましたっ!」」」

 声が揃った挨拶と共に皆が頭を下げたところで、タイミング良くチャイムが鳴り始めた。

「それじゃあ、各クラスの体育委員は、笠をあつめて、他の子は解散!」

 綾川先生の指示出しの後、早速、うちのクラスの体育委員の大野薫さんが笠を集め始めたので、多少は楽になるように手伝うことにする。

 最も手伝いと言っても、皆から笠を受け取るだけなので、そんなに役に立ってないかもしれないけど、大野さんに、私に、史ちゃん、加代ちゃん、委員長と集める人間が増えたので、多少は時間短縮になったはずだ。

 綾川先生が持ってきた荷台の段ボール箱の中に集めた笠をしまって、E組の回収も手伝う。

 あんまり交流が無かったけど、E組の体育委員でもあり、お手本仲間だった川上さんにもの凄く感謝されたのはとてもくすぐったかった。


 皆でプレイルームを出たところで「林田さん」と、先ほど一緒にお手本役をやった鈴木裕子さんに声を掛けられた。

「あ、えっと、鈴木……」

 私が名前の前で詰まったのをどう捉えたのか、鈴木裕子さんは「裕子よ」と名乗る。

「あー、名前は知っているんだけど……」

 私がそう返すと、詰まった理由をリカしたようで、鈴木裕子さんは「鈴木は二人でややこしいから好きに呼んで貰って良いわ」と言い切った。

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