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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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 宿題を終えた私たちは、お姉ちゃんのお父さん、つまり私にとってのお爺ちゃんを待つことになった。

 林田家では朝ご飯と夕ご飯は一緒に食べる伝統があるけど、それはこの時代でも健在らしい。

 そんなわけで、私たちは時間を潰すことになり、お姉ちゃんが持ってきた紐飾りを編むおもちゃや折り紙をして過ごすことになった。

 紐飾りはプラスチック製の筒の突端に付いた複数の突起に、人工糸を掛けては外しを繰り返して、紐状に編み上げる『リリヤン』というおもちゃで、編み上がりが円筒状になる。

 この形や使う糸のせいか、かなり手触りが独特で、意外と感触が良かった。

 突起に糸を掛ける時に、その順番や使う場所を変えることで微妙だが形を変えられるのも面白い。

 ついつい夢中になっていると、お姉ちゃんとユミリンは、そんな私をずっと見ていたようで、もの凄く柔らかい視線を向けられてしまった。

 もの凄く恥ずかしかったので「こっち見てないで、お姉ちゃんとユミリンもなんかして!」と訴える。

 対して、二人はニヤニヤとしながら顔を見合わせた。

 その後で二人揃って私の方を見て、またもニヤニヤを継続してくる。

 もの凄く不愉快なので、救援を求めることにして「お母さん、お姉ちゃんとユミリンがニヤニヤして気持ち悪い」と訴え出た。

 二人と違って、お母さんはすぐに対応してくれる。

「良枝、ユミちゃん」

 名前を呼んだだけだけど、二人は居心地の悪そうな顔に変わり、ほんの少しだけスカッとした。

「しょうがないじゃ無い。一生懸命、リリヤンやってる凛花が可愛かったんだから」

「そうです、良枝お姉ちゃんの言うとおりです。リンリンが可愛すぎるのがいけないと思います」

 そんなことを言い出した二人に、お母さんは大きく頷くと「確かにわからなくは無いわ」と言い出す。

 ぎょっとする私に、お母さんは軽く笑って見せながら「いくら可愛いというのpが褒め言葉でも、いわれる子が余り嬉しくないなら、それは良いことでは無いわよね」と言ってくれた。

 ユミリンとお姉ちゃんは、お母さんにそう言われた後で顔を合わせる。

「凛花、ごめんね。確かに何も言わずに笑われてたら、嫌よね」

 先にお姉ちゃんがそう言って、頭を下げた。

 一方、ユミリンは「リンリンを苛めたい気持ちはちょっとはあるけど……」とか、言い出す。

「苛めたいって何!?」

 私のツッコミに、ユミリンは「しょうがないじゃん。私、正直、可愛い女の子に意地悪したくなる男の子の気持ちがわかるんだよ」と謎の切り返しをしてきた。

「わかるから何?」

 全く理解できない論理展開に、そう返すと、ユミリンは「苛めたくなっちゃう」と笑みを浮かべる。

「お母さん、お姉ちゃん、この人追い出そう」

 ユミリンを指出しながら、私ははっきりとそう言い切った。

「あーん、リンリン、酷いー」

「酷いのはユミリンでしょ! 何、苛めたくなるって!」

 ユミリンとにらみ合う形で言葉を投げつけ合っていると、玄関の方からガチャリと言う音が聞こえてくる。

 その後で「ただいま」と言う低めの声が聞こえてきた。


「お父さん、帰ってきたみたいねー」

 そう言いながら、お母さんは台所に向かっていった。

 一方、お姉ちゃんは「凛花、迎えに行くわよ」と行って玄関に向かって行ってしまう。

 やり合っていた途中だけど、お姉ちゃんに呼ばれたし、お父さんのお出迎えをしたいという自分の気持ちもあったので「後で話し合おう」とユミリンに伝えてから玄関へ向かった。


 お姉ちゃんの後を追い掛けて玄関に辿り着くと、そこには今の私にとってのお父さんが立っていた。

 お父さんは、元の世界では京一お父さんから見てお爺ちゃん……私からだとひいお爺ちゃんになる。

 仕事の関係で海外に住んでいるので、あんまり会っていないけど、会えばいつでもとっても優しく接してくれる人だ。

 お父さんとして目の前にいる若い容姿のひいお爺ちゃんは「わざわざ二人で出迎えてくれたのかい?」と嬉しそうに笑ってくれている。

「今日は宿題も終わったし、ユミちゃんも来てるから、報告も兼ねて」

 そう言いながらお姉ちゃんは、お父さんから皮の重そうな鞄を受け取った。

「ああ、お隣のユミちゃんも来ているのか」

 お父さんはそう言って頷くと、くるりと身体を回転させて革靴を脱ぎ始める。

 鞄を受け取ったお姉ちゃんと違って、ただ着ただけになってしまった私がどうしたものかと思っていると、お父さんは「凛花もお迎えありがとう」と言いながら頭に被っていた帽子を私に差し出した。

 わざわざ仕事を作ってくれたんだなぁとちょっと嬉しく思いながら「お父さん、お疲れ様」と言いつつ帽子を受け取る。

「凛花」

 帽子を手にしたところで声を掛けられた私は「何、お姉ちゃん?」と首を傾げた。

「お父さんの着替えだしてくるから、お風呂に案内して」

「あ、うん」

 お姉ちゃんにそう言われて私は素直に頷く。

 そんな私たちのやりとりを見て、お父さんは「流石に自分の家なんだから、案内は要らないぞ」と笑った。

 私はそんなお父さんの前でわざとらしい咳払いをしてから「お客様、ご案内いたします」と旅館の従業員を気取ってみる。

 お父さんはフッと吹き出した後で「それじゃあ、案内願おうかな」と乗ってくれて、三人で笑い合うことになった。

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