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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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手拍子と踊り

 綾川先生から基本的な踊り方を教わったところで、全員が円の中心を向いて踊ってみることになった。

 E組もF組も女子は21人いるので、合計で42人いる。

 背の低い方の円がそのうちの22人、残りが高い組の円で20人に分かれていた。

 偶数人数の方がペア練習に切り替えたときにも良いだろうというのと、背の低い子の方が小柄になので人数が多少多くても問題ないと、綾川先生は理由を示してくれている。

 敢えて綾川先生の指示に文句を言う子はいないだろうけど、ちゃんと説明してくれるので、不満が出ることは無さそうだ。


 円の中心を挟んで反対側に誰か立つように並んでいるのは、綾川先生が偶数人数になるように割り振ったからであり、この正面の相手が踊りの際のペアになるそうだ。

 そんなわけで、私のパートナーはE組の千野さん……直接は話していないけど、体操服の胸に貼り付けられたゼッケンに『1-E 千野』と書かれているので間違いないと思う。

「配置についたら、始めるけど、反対にいる相手は鏡写しじゃ無くて、自分と左右反対の動きをするから釣られないように!」

 綾川先生の大きな声で指示が飛んだ。

 皆が「「「はい!!」」」と返事をしたところで、綾川先生は「それじゃあ、初めは手拍子に合わせて踊ってみてくれ!」と言いながら胸の前に手を持ってきて、一定間隔で手を叩き始める。

 パン、パン、パンと、少しゆっくりしたテンポで拍手が響いた。

 目の前の千野さんは拍手に合わせて、リズムを撮って、首を上下させている。

 リズム感がありそうだなと思ったところで、綾川先生が「それじゃあ、3からカウントダウンで始めるよ」と言い、千野さんが動きを止めた。


「最初は笠で膝を9回叩いて、リズムを取るところからね。じゃあ行くよ! 3、2、1、はい!」

 綾川先生のタイミングだしにあわせて、両手で持った笠で膝を打った。

 最初こそ出遅れる子がいたけど、九回も叩くのでズレは解消されていく。

「はい、笠を持ち上げて、右足から行くよ、2、1、はい!」

 先生のタイミングに合わせて右足を出して笠を叩く直前で、綾川先生の「次、左!」という声が響いた。

 少しずつ先の動きを指示されながら、教わった動きを自分の身体で再現していく。

「つ~ぎぃ、右、まーた、左、一旦戻って、左に払う~」

 拍手のテンポがゆっくりめだからか、綾川先生のナビはゆっくりめだけど、文字数が多いところでは\気持ち早口になる緩急が少しおかしかった。

 真面目に踊りの練習をしているので、吹き出すわけにも行かないと、笠の動かし方、足さばき、手さばきに意識を集中する。

「次は胸の前に上げつつ左に、ひーねーる」

 右へ同じ動きをしている最中に、次の動きの指示が飛んできて、全力で言葉通りに身体を動かした。

 どうにか私は踊れてるというか、教えて貰ったとおりには動けているけど、所々で「あぁ」とか「あれ?」とか声が上がり始める。

 綾川先生にも聞こえているだろうけど、指示と手拍子は止めなかった。

 最初から通してやってみるという宣言通り、脱落者がいても一度通す方針らしい。

 回りを心配できるほど、私も余裕があるわけじゃ無いので、バランスを崩さないように動きを小さめにしながら、綾川先生の指示出し(ナビ)により集中した。


 膝を抱えるようにしゃがみ込んだ加代ちゃんが、立ったままの私を見上げながら「スゴイね、リンちゃん」と息を吐き出した。

「スゴイって事は無いよ、綾川先生も次の動きを教えてくれてたし」

 私がそう返すと、今度は史ちゃんが「鉄棒もそうですが、凛花様は運動神経がとても優れているんだと思います。さすが、凛花様です」と所々で粗い呼吸を挟みながら賞賛してくれる。

「でも、花笠踊りとは言え、日本の踊りを簡単に踊れるなら、委員長のお父さんもより推薦がしやすくなったんじゃ無いですかね?」

 いつの間にかやって来たオカルリちゃんが、そう言って笑みを見せた。

 内心では神楽とは違うという意識があるので、オカルリちゃんの意見に、完全に乗っかることができずに「んーーー。花笠踊りと、神楽舞いでは覚えることもだいぶ差があるとは思うけど、多少でも、私を推薦してくれる人達の手助けになったら嬉しいかな?」と、少しぼやけた返しになってしまう。

「さっすが、真面目だなー、ハヤリンは! でも、らしくていいね~」

 私の返しに嫌な顔せずそう言うと、オカルリちゃんは、円のほぼ反対側、千野さんのすぐ近くに戻っていった。

 オカルリちゃんがそこで踊っていたのに今気付いたほど、回りが見えてなかった事実に、自分の視界がもの凄く狭まっていたことをようやく察する。

 どうにか振り付けは全部踊れたことでついた自信が、一気に瓦解していくのを感じて、自然と溜め息がこぼれ落ちた。

 そのタイミングで、綾川先生が大きな箱を手に「よし、じゃあ、次は曲に合わせてみよう」と次の課題を口にする。

 綾川先生がドスンと床に置いたアタッシュケースサイズの箱は、通称ラジカセと呼ばれるカセットテープから録音した音声を再生できる機械だった。

しばらくの間、予定が立て込んでしまったため、更新が不安定になるかも知れませんが、更新可能な日は16時に掲載しますので、予めご了承ください。

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