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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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懸念と段取り

「えーと、オカルリさん」

「なに? ハヤリン?」

「今は法律に触れなくても、将来的には法律で規制される行動になる()()()()()()()()、あんまりしない方が良いと思うよ」

 私に言える事は伝えた。

 リンちゃん情報でも、私の朧気な知識でも、オカルリちゃんの行動を罰するような法律はまだ整備されていない。

 とはいえ、未来では条例などで規制されかねない内容なので、釘を刺さずには入れなかった。

 私の話を聞いてすぐに申し訳なさそうな表情を浮かべたオカルリちゃんは「ゴメン、嫌だったよね?」と聞いてくる。

 頷き難い、肯定しにくい聞き方だなとは思ったものの、ちゃんと言わないと、将来オカルリちゃんが大変なことになるかもしれないと考えて、心を鬼にした。

「私は嫌じゃないけど、嫌だって思う人はいるかも知れない。やっぱり、警察とか、探偵とか、仕事でやってる人とは違うわけだから、ちゃんと友達か許可を得た人に限らないとダメだと思う」

 オカルリちゃんは、腕を組んで考えるような素振りを見せながら「確かに、痛くもない腹を探られているようで嫌って人もいるかもしれないねぇ」と口にする。

 私の発言を真剣に考えてくれている様子を眺めていると、リーちゃんから『主様の懸念は、元の世界では自然なことではあるがの。この世界の基盤でなっているであろう時代で考えると、かなり先進的で理解の及ばない考え方じゃ』と話が出てきた。

 その話を聞いた私は、オカルリちゃんは柔軟な思考力があるんだなと思ったのだけど、リーちゃんは違う考えを示す。

『元の世界の一般常識というか、感覚がある可能性もあるのでは無いかの?』

 正直考えもしていなかった内容だったけど、ショックが大きかったお陰で、思ったよりも思考停止する時間は短く済んだ。

 そして、動き出した頭で、オカルリちゃんにも『種』の可能性があるのかと思い至る。

 リーちゃんは私の出した予測に対して『その可能性は高くはないかもしれないがの……ただ、元の世界の普通を心得ている者が他にもいるかもしれぬの』と指摘してきた。

 リーちゃんにとっては、オカルリちゃんが『種』である可能性よりも、この世界の時代よりも先の常識を持っている人間が紛れている可能性の方を重視しているように感じられる。

『仕組みの方は絞り込めるほどの情報が無い故、断定は出来ぬが、何人もの現代の常識を持った人間がおるとなれば、そこから『種』を絞り込むのは難しいかも知れぬのじゃ』

 ここまで聞いたことで、ようやくリーちゃんの懸念に察しがついた。

 既に、口にした言葉や考え方から『ユミリン』が『種』ではないかという予測を立てていたけど、オカルリちゃんの考えや発言から、他にも現代の感覚を持っていそうな人物がいるとすれば、根拠としては弱くなってしまう。

 そう考えたところで、リーちゃんは『まあ、そうやって主様を惑わすために、投入された可能性もあるの』と言い出した。

 意地悪なタイミングで言うなとは思うけど、指摘は正しいし、可能性で言えばゼロでは無い。

 結局のところ、保留を継続する以外に無いのを確認することになっただけだった。

 加えて、発言だけでは絞れないという問題も浮上してきている。

 難問だらけだけど、先延ばしを選ぶことに対する罪悪感はかなり軽減されてもいた。

 仕方が無いを免罪符に、神楽を学び、縁起を学んで、時を待とうと誓う。

 リーちゃんも『急いては事をし損じるというしの』と、肯定してくれたことも心強かった。


「えーと、お姉さんも、急に押しかけてごめんなさい」

 オカルリちゃんからの謝罪に、お姉ちゃんは「凛花のお友達なら私は歓迎するわよ。ただ、凛花は神経質だから、気を遣って上げてね」と笑みで応えた。

 神経質じゃ無いと否定したかったモノの、客観的に見れば、そういう評価にも鳴るかと、私の中の冷静な部分が言うのを否定できず、結局、甘んじることになる。

 オカルリちゃんも「アドバイス心得ます!」と明るく返して、お姉ちゃんも満足げに頷いているので、ここで私が何か言うのは余計でしか無いと確信できた。


 車も通る通りなので、私たちは二人ずつ並んで歩いていた。

 戦闘をユミリンとオカルリちゃん、続いて、私と加代ちゃん、史ちゃんと千夏ちゃんが続いて、一番後ろにお姉ちゃんという並びになっている。

 ちなみに、並び方を決めたのは、オカルリちゃんが持ってきてくれたカードだ。

 オカルリちゃんの『どう並ぶか決めるのに時間を掛けては遅刻してしまいますから!』という言葉に誰も反論できなかった……というか、多分、全員、その可能性を否定できなかったんだと思う。

 そんなわけで恨みっこ無しで1~6のカードをお姉ちゃんに持って貰って、皆が一斉に引く形になった。

 お姉ちゃんがカードを預かったのは、最初に『一番後ろで良いわ』と宣言したからで、そのお陰でスムーズに決められたのである。

 と、まあ、段取りの良いオカルリちゃんのお陰で、大きな波乱もなく、二列縦隊で登校となったのだけど、学校が近づき、歩道が広くなったところで隊列はあっさりと瓦解してしまった。

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