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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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朝の合流

「お、おはよう! リンちゃん!」

「おはようございます、凛花様!」

「凛花ちゃん。おはよ~」

 玄関を出たところで、加代ちゃん、史ちゃん、千夏ちゃんから三者三様の挨拶が飛んできた。

 昨日、迎えに来て貰う約束をしていたので、この光景は想像通りではあったものの、想像よりも嬉しそうな顔に、少し気恥ずかしくなってしまう。

「加代ちゃん、史ちゃん、千夏ちゃん、おはよう。迎えに来てくれてありがとう」

 恥ずかしさのゲージが満タンになってしまう前に、私は感謝の気持ちを込め通T皆に挨拶を返した。

「私もいるからね、リンリン」

 三人に挨拶を返し終わったところで、ユミリンが少し不満げに声を上げる。

 少し悪戯心がわいて、挑発気味な返しをとも考えたけど、この先のめんどく差の方が大変じゃ無いかと閃いた私は「ユミリンもおはよう、いつもありがとうね」と無難に返すことにした。

 私の返しが、ユミリンには多少肩透かしになったのか「う、うん。おはよう」となんだか擬古値の無い挨拶が返ってくる。

 この感じからして、変な開始をしていたら無駄に長くなりそうだったので、私の選択は大正解だったみたいだ。

 と、ちょっと満足を感じたところで「私もいるよ、ハヤリン~」と明るい声が飛んでくる。

「え!?」

 想定外の人物の声に慌てて、周りを見れば、ユミリンの背後からひょっこりと、オカルリちゃんが顔を出した。

「オカルリちゃん!?」

「来ちゃった」

 声を弾ませて言うオカルリちゃんの言い方は凄く可愛い。

 可愛いけど、私の頭の中は「なんで、いるの?」で締められていた。

「え? 皆と一緒で、ハヤリンのお迎えに来たんだよ」

 首を嗅ぎながら、なにを当たり前の事をと言わんばかりの顔をされてしまったけど、聞きたいのはそこでは無い。

「だって、ウチの場所……」

 私が『知らないでしょ』と続ける前に、オカルリちゃんは「クラスの連絡網に書いてある住所を地図で調べた」とサラリと答えを口にした。

 学校からの連絡は、元の世界ではメールやSNS経由の一斉送信が普通だが、この時代では違う。

 住所に電話番号が書かれた連絡網が毎年クラス毎に作成され、伝言板のように電話を掛けて繋いでいく仕組みになっているのだ。

 なので、そこから住所を辿ることも、この世界なら不可能では無い。

 実際にオカルリちゃんは住所から自宅を特定したということだ。

 けど、ここにお姉ちゃんが疑問を抱いたようで、質問を口にする。

「もしかして、この街の地図を持っているの?」

 お姉ちゃんの質問にオカルリちゃんは「あ、はい。うちの親、配達の仕事してるんで」と頷いた。

 二人の会話を聞いて『地図?』と何の話をしているのかピンとこずに、疑問を抱くと、すぐにリンちゃんが解説をしてくれる。

『主様、この世界の時代では、地図アプリなんてモノはないのじゃ。スマホ自体無いからの』

 リーちゃんに、そう言われて、ハッとした。

 確かにスマホが無ければ、地図アプリもないし、ブラウザ機能で地図検索サイトを開くことも出来無い。

 となれば、オカルリちゃんとお姉ちゃんが言っている地図というのは……と考えたところで、リーちゃんから『印刷されたものじゃろうな』という答えが返ってきた。

 更に『この時代ならば、配達業であれば、家主の名前の書かれた地図を手に入れるのはそれほど難しくはないのじゃ』と追加の情報が齎される。

 お陰で、ウチの場所をオカルリちゃんが知っているカラクリはわかったモノの、別の疑問があった。

「家の場所はそれで大丈夫でも、時間は?」

 聞かなくても良かったかもしれないけど、飲み込んでおくのも落ち着かないので、思い切って口にして見る。

 そんな私の問いに対するオカルリちゃんの答えは一言だった。

「逆算」

「へ?」

 私の聞き返しに、オカルリちゃんは「逆算したの。投稿時間から」と断言する。

 言ってることはわかるものの、頭に上手く入ってこず、瞬きを繰り返していると、オカルリちゃんは丁寧に解説を始めた。

「ほら、ハヤリンの家の場所がわかると、学校からの距離がわかるでしょ?」

 空中で人差し指を指揮棒のように動かしながら、オカルリちゃんは説明を続ける。

「距離がわかると、歩幅から掛かる時間がわかるの……ここは算数ね」

 首を傾げ、私の反応を伺っているようだったので「う、うん」とだけ返した。

 オカルリちゃんは、それをここまではわかったというアクションだと読み取ってくれたのか「で」と口にしてから更に解説を続ける。

「で、すれ違わないように、一旦学校まで行ってから、およその予想出発時間までにここに来たって分け」

 説明が終わったことを示すように動かしていた指のタクトを止めて、オカルリちゃんは胸を張った。

 思わず聞き流しそうだった衝撃の事実に気付いた私は「って、一回学校まで行ってるの!?」と大きめの声を出す。

 オカルリちゃんは、そんな私の発言に頷き「まあ、ドッキリを仕掛けるためには、多少の時間や手間は必要経費だよ」と言って笑ってみせた。

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