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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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急く気持ち

 お父さんが帰ってきた後、氏子の代表者さんに電話をして、日曜日に家族全員で神社に伺うことになった。

 その場で先日出会った宮司の神子さん、院長をはじめとした氏子会の幹部の人、これまで舞子を務めていた家の人と、ほとんどの関係者が集まるらしい。

 私が舞手をやらせて貰える方向で決まっているので、詳しいスケジュールを決めたりするということだ。

 うちからはお父さん、お母さん、お姉ちゃん、私と家族全員で参加する。

 付添が一杯って言うのは少し恥ずかしいモノの、皆が心配してくれているんだと思うと、嬉しく思ってしまった。


「なるほど、凛花は女優さんに向いているのね!」

 今日の話をし終えたところで、お母さんがそう言って目を輝かせた。

「い、や、そういう話は、してないよね!?」

 驚きが強くて言葉に詰まり気味になってしまったモノの、どうにかお母さんに問いただし事には成功する。

 けど、お姉ちゃんが「でも、雅子……赤井ちゃんの縁起の切り替えに似たことが出来るなら、それは女優向きの技能だと思うわよ?」と真面目な顔で言うので、私は言葉を失ってしまった。

「あら、良枝が言うんだから間違いないわね!」

 声を弾ませたお母さんに、お姉ちゃんは「あんまり褒めすぎるのも良くないとは思うけど、でも、それほどスゴイ能力なのよ! 演じ分けの域を超えているからね。使いこなせれば、それこそ、どんな役でも演じられるわ」と淡々と返す。

 問題は、私の能力じゃ無くて、赤井先輩の能力なので、強く否定しにくいことだ。

「凛花!」

 急にお母さんに呼びかけられて、私はほぼ反射で「え、はい」と返してしまう。

 そんな私の手を取って、お母さんは「神楽の舞手もそうだけど、凛花が女優さんになりたいなら、お母さんは全力で応援するからね!」と眩しい笑顔を見せた。

「凛花、もちろん、私も応援するわ!」

 ここでお姉ちゃんまでが力強く感じる笑みを浮かべて私の肩に手を置いてくる。

 二人の思いにどう答えて良いかわからずに、私は困惑することになってしまった。


 お母さんとお姉ちゃんにどう応じるか決めかねた私は、反応を選べずにいた。

 そこに、お父さんが「まあ、まあ、二人とも、凛華の気持ちもある。そんなに急かしてはいけないよ」と言って割って入ってきてくれる。

「まあ、そうね。将来のことだものね、ゆっくり決めるべきね」

 お母さんはそう言って大きく頷いた。

 お姉ちゃんも「将来の話は、確かに急ぎ過ぎね。まずは新人戦と文化祭の公演よね」と苦笑する。

 少し申し訳ない気もするものの、二人の圧が下がったことで、私はホッとしてしまった。

 お陰で少しは思考が回りはじめる。

 私は一人静かに深呼吸してから「まだ将来のことまでは考えられませんけど、それでも習得できる技術は習得して、使いこなせるようになりたいと思ってます」と偽らざる思いを伝えた。

「うーん。そうなると、雅子ちゃんとの練習を多めにした方が良いかしら?」

 真剣な表情で考え始めたお姉ちゃんを見て、私は慌てて「ちょっと待って、お姉ちゃん!」とストップを掛ける。

「一人の先輩とだけ、ずっと練習っていうのは、良くないと思います。部活動には多くの先輩も同級生もいるわけだし!」

 私の主張に対して、お姉ちゃんは「うーん」と唸った。

 一方で、お母さんは「確かに複数の子が所属してる中で、一組だけ決まった組み合わせを作ると、特別扱いになっちゃうわね」と言う。

「確かに、そうだけど、でも、役者としての技術を磨くために相性の良い先輩と組むのは、今までもあったし、凛華の成長のためにはそっちが良いかと思うんだけど」

 お姉ちゃんの意見は、頷けるところは大きいけど、お母さんが言ってくれたように特別扱いをされることで、私はともかく赤井先輩に迷惑を掛けないかの方が気になっていた。

 なので「お姉ちゃん。確かに赤井先輩の技術を学ぶのも、二人で研究するのも楽しいと思う」と口にして、少し間を取ってから「けど」と言い加える。

 お姉ちゃんは「けど?」と、私の言葉を繰り返して首を傾げ、私に続きを促した。

 私は自分なりにまとめた誤解を招くかもしれないけど、一番効果があるであろう言葉を口にする。

「もっと他にも学べる技術があるかも知れないでしょ? だったら、まだ、赤井先輩とだけの練習に固定しないで欲しいの!」

 お姉ちゃんは私の発言に驚いて目を丸くするものの、すぐに苦笑を浮かべて「それもそうね」と頷いてくれた。

 それから笑みを深めて「なかなか、貪欲なことを言うわね」と言うお姉ちゃんに、私はわざと大きく頷きながら「学べる可能性があるなら全部学びたい! もちろん、マンツーマンの練習も効果的なのはわかる。でも、出来るなら一通りの先輩方とマンツーマンの練習をした後で、固定練習の方が、ためになると思う」と返す。

 お姉ちゃんは頷きながら「凛花の言う通りね。慌てるなってお父さんに言われたばっかりなのに、焦っちゃってたわ」と言うと、再び苦笑いを浮かべた。

しばらくの間、予定が立て込んでしまったため、更新が不安定になるかも知れませんが、更新可能な日は16時に掲載しますので、予めご了承ください。

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