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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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帰宅と報告

 明日の朝の約束をしたからか、今日はもの凄くウキウキした様子で、千夏ちゃんは自宅のあるマンションへ帰っていった。

 明日の朝の時間確認を、私とでは無く、何度もお姉ちゃんとしていたのが気になる。

 が、そこを掘っても、聞いて良かったと思うことは無いだろうという直感を信じて、触れないことにした。

 そんなわけで、後ろ姿を見送っていた千夏ちゃんがエントランスへと消えていったところで、私たちも再び家を目指して帰路を辿る。

 今日はまどか先輩もいなかったし、史ちゃん、加代ちゃん、千夏ちゃんと別れたので、お姉ちゃんに、私に、ユミリンの三人になった。


 三人で家へ向かって歩く途中で、私は委員長の件を持ち出してみた。

 神楽舞いをする神社の氏子のお家で、もの凄く前向きだったこと、加えて学校の先生の中にも地域の行事に熱心な先生がいて協力を申し出てくれた事を伝える。

「話が合ってから僅かな間に、大きく話が広がったわね」

 少し驚いた様子を見せたお姉ちゃんは、でもすぐに「まあ、私は凛花が頑張りたいって思うなら、全力で応援するわ」と言ってくれた。

「ありがとう。お姉ちゃん! とっても心強いよ!」

 思ったままを伝えただけだったのだけど、お姉ちゃんは「任せて頂戴!」ともの凄く張り切ってしまう。

 まあ、悪いことでは無いので、無理しなければいいなとだけ思った。


 今日は一旦自宅に帰るということで、家に辿り着いたところで、ユミリンは自宅へと戻っていった。

 お姉ちゃんと二人で、玄関に入ったところで、お母さんが出迎えてくれる。

「二人とも、お帰りなさい」

「どうしたの、母さん?」

 普段は玄関まで出てこないお母さんの姿に、お姉ちゃんが首を傾げた。

「いえ、神社の氏子総会の方から電話があってね。凛花にお話をしておこうと思って」

「え、もう!?」

 お母さんの言葉に、私より先に、お姉ちゃんが驚きの声を上げる。

 先を越されてしまったのもあるし、お姉ちゃんの驚きも大きかったのもあって、私の方は逆に驚きは霧散してしまった。

 一方、お姉ちゃんの方が強く反応をしたのもあってか、お母さんは私ではなく、お姉ちゃんに向かって「どうやら、結構深刻な問題だったみたいね。神楽舞いの後継者」と言う。

 お母さんの話に「そうなんだ」と返した後で、お姉ちゃんは首を傾げた。

「でも、神楽舞いを踊れる子を決めるだけでしょう?」

 言葉の端に『そんなに難しい話?』という色を滲ませながらお姉ちゃんは言う。

「まあ、ねぇ」

 頬に手を当てて、溜め息交じりに返すお母さんの態度だけで、面倒くさい大人の事情があるのが透けて見えた。


「同じ組織の中で、候補を立てると、これまでと『変わってしまうこと』が問題なんじゃ無いかなぁ」

 私の発言に対して、お姉ちゃんは「舞手? 踊り手? とにかく神楽をやる人が変わるのは仕方ないんじゃ無い?」と瞬き交じりに言った。

 対して、私は「そうなんだけどー、ほら、どこの家の人がやるかが問題なんじゃ無いかなぁ……氏子総会での発言力とかに影響しそうでしょ?」と返す。

 お姉ちゃんは私の返しに目を丸くした。

「おねえ……ちゃん?」

 思ってもいなかった反応に、もの凄く不安を覚えた私は、なにかやらかしてしまっただろうかと思いながら声を掛ける。

 一方、お姉ちゃんは「凛花はお姉ちゃんより頭が良いのかもしれないわね」と真面目な顔で言い出した。

「えっ!?」

「確かに言われてみれば、どこの家の子がやるかっていうのは、氏子の人達には大きな問題なのかもね」

 顎に手を当てて、うんうんと頷きながらお姉ちゃんは独り言のように、つぶやき続ける。

「次の舞手が、どこの家の子かで、牽制し合ってて決まらなかったってこと……かぁ」

 あっという間に自分の中で考えをまとめてしまったお姉ちゃんは、視線をお母さんに向けた。

 それは答え合わせを求めるモノだったんだろう。

 お母さんは「だから、氏子では無い家の子は助かるみたいね」と言いながら、私を見た。


「う~~~ん」

 靴を脱いで玄関に上がりながらお姉ちゃんは唸った。

「どうしたの、お姉ちゃん?」

 私が聞くと、お姉ちゃんは「歴史の授業とかで、権力を巡って血縁者を組織に入れた理っていう話は聞くけど、まさか身近で体験するとは思わなかったなと思って」と言う。

 お母さんは明るく笑いながら「何事も社会勉強ね」と言った。

 私が靴を脱ぎやすいようにスペースを空けながら、お姉ちゃんは「それで、凛花が氏子の家の子じゃ無いし、舞手を引き受けてくれるなら、丸く収まりそうって事ね?」と言いつつこちらを見る。

「伝統も続けたいし、氏子の家に関係していないし、お父さんと凛花がやってくれるというのなら、全力で話をまとめると、電話をくれた氏子代表の人は言っていたわ」

 私は「え、お父さんと私の意見で良いの?」と『あれ? お母さんの意見は?』と思いながら返すと、お母さんはニッと笑って「だって、私と良枝は大賛成だもの」と完全に先読みをした答えを口にした。

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