表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
272/477

帰路へ

 部室に全員が集合したところで、お姉ちゃんが『それじゃあ、今日はここまでにしましょう」と練習の終わりを宣言した。

 続けて「お疲れ様でした」とお姉ちゃんが言うと、揃ってに三年生の先輩方、そして、千夏ちゃんが「お疲れ様でした」と続く。

 やや遅れて私たちも「お疲れ様でした」と続けた。

 全員が頭を上げたところで、まどか先輩が「皆、ゴメン、挨拶のタイミングを伝え忘れてたね」と両手を合わせて頭を下げる。

「確かに聞いてなかったですけど、今覚えたので、問題ないと思います~」

 明るめの声でそう口にしたオカルリちゃんが、私たちを振り返って「ね?」と首を傾げた。

「まあ、そうね」

 すぐに頷いた院長が「まどか先輩。いきなり合わせるのは無理ですが、一度見れば私たちもわかりますから、次からは合わせて見せます」と、自信に満ちた表情で言い切る。

 まどか先輩はスッと私たちを見てから「そうみたいだね。気を遣いすぎたみたいだ」と苦笑いで頭を掻いた。

 すると、委員長はすかさず「いえ、気を遣ってくれる優しい先輩に恵まれて嬉しいです」と返し、直前のオカルリちゃんのように私に視線を向ける。

 視線を向けられた私たちは、委員長と同じ気持ちだったので、ほぼ同時に頷いた。


「さて、今日は本読みだったけど、どうだったかしら?」

 校門を通り抜けたところで、お姉ちゃんにそう尋ねられた私は、赤井先輩のスイッチの凄さを一番に上げた。

 それに加えて、少しスイッチの真似みたいな事も出来たことも伝えると、千夏ちゃんが驚きの声を上げる。

「赤井先輩のスイッチって、あの人格から変わっちゃうような技のことだよね!?」

 グイグイと顔を近づけながら聞いてくる千夏ちゃんに、少し戸惑いながらも「そ、そうだよ。も、もちろん、まだまだ覚えたとは言えないけどね」と返した。

「へ~~~。人格が変わるってスゴいな」

 そう言いながら私と千夏ちゃんの間に、肩から段々と身体を入れて、ユミリンが割り込んでくる。

「ちょっと、ユミキチ、凛花ちゃんを押さないで、怪我させちゃったらどうするつもりなの!?」

 眉を吊り上げて千夏ちゃんがユミリンに噛み付いた。

 一方ユミリンもそれを受けて立つつもりか、私から身体を離して、逆に千夏ちゃんと胸で押し合うように密着してにらみ合う。

「ちょっと、二人は何ですぐ喧嘩するの!?」

 思わず声が出てしまった私の肩に誰かの手が置かれた。

 直後、視界が回転して、遅れてふわりとスカートが風をはらんで膨らむ。

「へっ!?」

 思わず声が出たところで、回転は止まり、膨らんだスカートも足に着地した。

「ま、まあ、姫、二人には二人なりに譲れないモノがあるのですよ」

 その声で要約私の肩に手を置いて回転させたのが、まどか先輩だったのだと気付く。

「え、でも……」

 強制的に身体を回転させられたことで、ユミリンと千夏ちゃんに背を向ける格好になってしまった私は、まどか先輩の肩越しに二人を確認しようと首を伸ばした。

 が、予想外にここで私の視線の先にはオカルリちゃんの顔が合って、思わず瞬きをしてしまう。

「姫様~~こんにちわ~~」

 オカルリちゃんに思わず「え、あ、こんにちわ?」と返してから、なにを言ってるんだろうと頬が熱くなってしまった。

 一方、オカルリちゃんは「練習の間、皆、姫様とお話しできなくて寂しかったので、ああやってじゃれ合って、その鬱憤を解消してるのです」と訳知り顔で語った後、後ろでにらみ合ってるユミリンと千夏ちゃんの姿が見えるように身体を半回転させる。

 オカルリちゃんが『じゃれ合っている』と評してたのもあって、確かに二人の睨み合いからは剣呑な雰囲気は感じられなかった。

「凛花様、あの二人は放って置いて帰りましょう!」

 そう言って史ちゃんが私の右手を取る。

 すぐに頷けずにいると、今度は空いている左手を加代ちゃんが取って「もう夕方だから、あんまりのんびりしていると暗くなっちゃうし、気温も下がってくるから、身体が冷えちゃうよ」と心配してくれた。

 それは確かにそうだと思った私は二人に手を引かれながら「ユミリン、千夏ちゃん。暗くなって、冷えてくるから、風邪を引かないうちに帰ろう」と呼びかける。

 すると後ろから「チー坊、帰るぞ」とユミリンが言い。

 千夏ちゃんが「このまま二人で取り残されるわけには行かないモノね」と返してから、二人の足音が追い掛けてくるのが聞こえてきた。

 やっぱり、仲が良いんだなと、オカルリちゃんの見立ての正しさに、思わず噴き出してしまう。

「凛花様?」

 不思議そうに噴き出した私を見た史ちゃんに、私は「ユミリンと千夏ちゃんは、とっても仲良しだなと思って」とわざと大きめの声で言ってみた。

 すると、後ろから「それは違うぞ、リンリン!」とユミリンの否定の言葉が飛んでくる。

 一方、千夏ちゃんは「仲良しでは無いよ! でも、まあ、一部、共感できるところはあるかも」と、全否定では無く部分的に肯定してきた。

 それを聞いたユミリンが「チー坊、変な返し方するな!」と戸惑いの色に滲んだ声を上げる。

 対して、千夏ちゃんは「ユミキチも、凛花ちゃんが好きでしょ?」と切り返した。

「え……そ、そりゃあ、親友だからな!」

 なんだか聞いているだけで恥ずかしくなってくるユミリンの切り返しに、千夏ちゃんは「私も好き」と言い放つ。

 そこから間を開けて千夏ちゃんが言い加えた「……ほら、共通点」という言葉で、言葉を向けられていないのに、私は全身が一気に熱を持ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ