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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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練習の配役と

「いいのよ、いいのよ……なんだか、ときめくし」

 頬に手を当てて笑みを浮かべる赤井先輩の表情になんだか、背筋に冷たい物が走った気がした。

 とはいえ、それほど強い感覚でも無かったので「ときめく……ですか?」と聞いてみる。

「なんか、可愛い子が所在なげに謝るのって、護って上げたくなるなって……普段の私だとこんなこともも輪無いから、部長スイッチの影響かなぁ~。妹大好きすぎるモノね」

 お姉ちゃんが私を大好きすぎると言われて、思わず「そ、そうでしょうか?」と返してしまった。

 対する赤井先輩はツンツンと私の頬を突きながら「心当たりはあるでしょう?」とお姉ちゃんの言い回しで聞いてくる。

 心当たりは確かにあるけど、素直に認めるのもはばかられて、私は何も言えなくなってしまった。

「あらあら、反論しないと言うことは認めたも同じですよ、姫ちゃん」

 そう言って今度は私の頭を撫でてくる。

 もの凄い子供扱いされているけど、決して嫌では無く、逆にそのせいで、反論も反発も出来無くなってしまった。


「と、とりあえず、練習しましょう」

 台本で顔を隠しながら、そう告げると、紙の壁の向こうからクスクスと微かに赤井先輩の笑い声が聞こえてきた。

 その微かな声ですら恥ずかしい。

 私が顔を隠したまま、恥ずかしさで震えていると、赤井先輩から「それじゃあ、姫ちゃんたち尾が用意してくれた台本のコピーで練習してみましょうか?」という提案がされた。

「は、はい!」

 思わず台本の複製である紙束を降ろして返事をしてしまった私の目の前に、お姉ちゃんにそっくりな笑みを浮かべた赤井先輩の顔が待ち受けている。

 あまりにもお姉ちゃんが重なった赤井先輩の表情に、脳が混乱をきたしてしまった。

「え……あ……」

 意味も無い言葉……いや、音が口から漏れる。

 赤井先輩は流石に私の反応の理由がわからなかったようで「どうしたの、姫ちゃん?」と、不安げな表情で私の目を見てきた。

 その心配してくれてるとわかる眼差しのお陰で、私は我に返る。

 まずは説明しなければと言う思いで「あの、赤井先輩がお姉ちゃんと重なって見えて、少し混乱してしまったというか……」と起きたままを伝えた。

 赤井先輩は少し驚いた表情を浮かべてから「部長の妹である姫ちゃんにそう言ってもらえると、スゴく自信になるわね」と笑う。

 私の説明を聞いた赤井先輩が、ちゃんと受け止めてくれたことで、より伝えたいという熱が高まった。

「本当にスゴかったです! お姉ちゃんが目の前にいるように思えたんです! でも、頭では目の前の人は赤井先輩だってわかってるので、訳がわからなくなってしまったんです!」

 かなり前のめりになっていたせいか、赤井先輩に「褒めてくれるのは嬉しいけど、余り褒められると恥ずかしいわ」と言われてしまう。

「あっ……」

 やり過ぎてしまったという実感で、後悔の念が湧き出てきた。

「姫ちゃん、大丈夫、別に嫌じゃ無いわ。でもあんまり褒められるとくすぐったくなるでしょ? 姫ちゃんも身に覚えがない?」

 いつの間にか両手を取っていた赤井先輩に、上目遣いでそう声を掛けられて、私はまともに返せず頷く。

「わかってくれて嬉しいわ」

 また頭を撫でられてしまったけど、今度は恥ずかしさはなくとても心地良かった。


「そ、それじゃあ、あの、メグとジョーが報告をするシーンから、で、良いですか?」

 何度忌めになるかもうわからない仕切り直しで、ようやく演じるシーンを決めるところまでやって来た。

 赤井先輩は私の提案に「もちろん」とゆったりと頷く。

 二人で話始めるよりも、より明確にお姉ちゃんの仕草がダブって見えた。

 私の認識が変わったのもあるだろうけど、より赤井先輩の入り込みが深くなったのかもしれない。

 そう思っていると、今度は赤井先輩から「どっちがジョーを演じるの?」と聞いてきた。

「あ、え、じゃあ、私……でも、いいですか?」

 何も考えず、ほぼ反射でそう返すと、赤井先輩は「もちろん」と先ほどと同じ仕草で答える。

 改めて、お姉ちゃんそっくりだなと思ったことで、私の中に妙な感覚というか、思考が生まれた。

 余り付き合いのない二年生の先輩相手だと、緊張もするし、恥ずかしいと思うこともあるけど、目の前の赤井先輩がお姉ちゃんだと思えば、むしろ積極的に見て貰って、ダメ出しをして貰った方が良いんじゃ無いかという考えである。

 結果として、気持ちはスゴく落ち着いて着て、私は何のプレッシャーも無く台本を見られるようになっていた。

 状況としては悪くない……というよりも、練習には最適なんじゃ無いかと思える落ち着きで、私は赤井先輩に「それじゃあ、お母さんのセリフの前まで、やってみますか?」と、とても自然に提案できてしまう。

 赤井先輩も「ええ、もちろん」と変わらずゆったりと頷いてくれたことで、配役も場面もあっさり決まってしまった。

 なんとなく肩透かしをされたような気分にはなりながらも、私はジョーのセリフを頭に入れるために、台本に目を落とす。

 私の動きを見ていた赤井先輩も同じように台本に目を向けた。

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