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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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スイッチの作り方

 大丈夫と訴えたモノの、赤井先輩自身が大丈夫では無かったようで、微妙な表情を浮かべたまま、お見合いすることになってしまった。

 気まずい時間が過ぎたところで、赤井先輩が「……身近で、人物像を造り上げるのには、そんなに苦労しなかったのよ」と呟くように言う。

 確かにそれだけ個性的な要素があれば、人物像を固めるのは難しく無さそうに思えた。

「えっと……」

 なんと言えば良いのかわからず、言葉に詰まってしまった私をみて、赤井先輩は苦笑する。

 もの凄く申し訳ない気持ちになった私に、赤井先輩は「流石に、その、人前でスイッチを入れるのは危険でしょう?」と尋ねて来た。

 どの程度の露出きょ……らぞくっぷり七日にも寄るけど、少なくとも中学二年生の女の子が再現して良い性質ではないと思うので、私は無言で何度も頷く。

「そ、そんなに頷かなくても……」

 困り顔で言う赤井先輩に、私は慌てて「ごめんなさい」と謝罪した。


「まあ、お兄ちゃんを演じるスイッチは作れたんだけど、ちょっと使うのに抵抗があったのね」

「は、はい」

 頷きすぎて赤井先輩を不快にさせないように、軽く一回だけ頷いた。

 功を奏したかはわからないけど、赤井先輩は「そこで、次に参考にさせて貰ったのが、部長だったの」と続ける。

「そうなんですね」

 私は一度頷いてから「でも、なんでお姉ちゃんだったんですか?」と尋ねてみた。

 赤井先輩は少し気恥ずかしそうに頬を掻いてから「憧れ……てたからかしら」と照れ笑いを浮かべる。

 なんだかくすぐったくなるような柔らかな表情に、私の頬も勝手に熱くなってしまった。

 そんな私の変化を目にした赤井先輩は「ど、どうしたの、姫ちゃん?」と尋ねてくる。

 赤井先輩の表情に触発されたと素直にいうのが、なんだか恥ずかしくて、誤魔化すように話を聞いて感じた気持ちを言葉にした。

「お姉ちゃんが憧れって聞いて、なんだか嬉しいような、誇らしいような、恥ずかしいような複雑な気分になってしまって……」

 口にしてから、こっちはこっちでなんだか照れくさい。

 でも、赤井先輩が「本当、姫ちゃんが羨ましいわ」と言ってくれたことで、嬉しさの方が勝った。


「えっと、じゃあ、お姉ちゃんのスイッチ……で、いいのかな? それを造り上げた話を聞いてもいいですか?」

 私がそう尋ねると、赤井先輩は「部長のスイッチ……お兄ちゃんのスイッチ……うん。なんかその表現、凄くしっくりきたわ」と声を弾ませた。

 思った以上の好感触に動揺してしまったのか、説明の言葉が「頭の中でスイッチを入れると、その人物に切り替わるイメージだったので……ぼ、ボタンでも良かったですね」と、つい早口になってしまう。

 赤井先輩は「うーーーん」と唸ってから「スイッチの方が、いいかな」と言うので、私は大きく頷きながら「赤井先輩の好みで決めれば良いと思います」と返した。


「それじゃあ、スイッチの作り方を私の説明できる範囲で教えるわね」

 そう言って仕切り直してくれた赤井先輩に「はい、お願いします」と頷きで応えた。

「まずは、やっぱり観察からね」

「はい」

 私は臙脂をした後で「赤井先輩が一番注目しているというか、意識して観察している部分ってありますか?」と尋ねる。

 赤井先輩は「アニメのキャラクターのスイッチを作ったときは、最初に語尾だったけど、流石に実在の人はそんな特徴的な語尾の人はいないでしょう?」と笑みを浮かべながら聞いてきた。

 私は「確かに、そうですね」と頷く。

「だから、語尾に変わるモノとして、口癖に注目してみたの」

「口癖ですか?」

「そうそう。お兄ちゃんは、暑いーとか、窮屈だーとか、ね」

 裸族だと知ってしまったので、もの凄くしっくりくる口癖だと思ってしまった。

 そんな私を見て、赤井先輩は噴き出しながら「納得しちゃったのね」と言う。

 図星を刺されてしまい「すみません」と頭を下げた。

「あら、謝らなくて良いのよ。むしろ、納得して貰えて良かったわ」

「そ、そうですか?」

 赤井先輩が微笑んだまま頷いてくれたので、私はどうにか苦笑を返す。

 これ以上赤井先輩のお兄さんを話題にするのはちょっと止めておきたかったので、私は「えっと、お姉ちゃんはその、口癖とか、無いような気がするんですけど……」と話題を変えてみた。

 赤井先輩は「そうね。強いて言えば、丁寧な言葉……かしら」と言う。

 確かにお姉ちゃんは丁寧な言葉遣いだと思うので「なるほど」と頷いた。

 でも、個性としては弱いと思う。

 そう考えたのを感じ取ったのか、赤井先輩は「だから、次に間を図るようにしたの」と言った。

「間……ですか?」

 私が聞き返すと「そう、このタイミングよ」と言って赤井先輩は笑む。

 確かにどこかお姉ちゃんと話しているような感覚があった。

「ね? 私と部長は声も違うけど、ゆっくりとした話し方と、返事までの時間の長さで、雰囲気が出るでしょう?」

 赤井先輩の言葉に私は強めに頷く。

 正直、確かにお姉ちゃんを感じたのもあって、強い感動があった。

「赤井先輩、スゴイです! 確かにお姉ちゃんにそっくりだなって思いました!」

 私がそう言うと「部長の実の妹である姫ちゃんのお墨付きはスゴく自信になるわね」と赤井先輩は微笑む。

 正直そのタイミングもお姉ちゃんそっくりで、私は胸はスゴイの一言で一杯になった。

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