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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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カード再び

 オカルリちゃんが勢いで紹介をもぎ取ったところで、お姉ちゃんが「そんなわけで、舞踏会のシーンがある作品にはなる……というのが今いえることね」と話の流れを修正した。

「ただ、今週中には打ち合わせをする予定だから、来週には発表できると思うわ」

 お姉ちゃんがそう結ぶと、春日先輩が「というわけで、演目も決まった新人戦の方をまずは進めていこうと思います」と言って続く。

 その後を継いだのはまどか先輩だった。

「さっきも話題に出たけど、配役決めのオーディションを兼ねて、全登場人物のセリフをそれぞれ演じて貰う」

 私たちが声を揃えて「「はい!」」と返事をすると、まどか先輩は軽く頷いてから「それじゃあ、明日には台本が出来るから、今日はこの後は自主練だな」と結ぶ。

 その後で、お姉ちゃんに振り返って「……ってことで良いかな、部長?」と尋ねた。

 少し間を開けてから、溜め息を吐き出したお姉ちゃんは「良いわよ」と返す。

「小夜子はいけそう?」

 まどか先輩の振りに対して、春日先輩は眉をピクピクと震わせながら「ほとんど説明が無いのに、大丈夫?って聞けるアンタが信じられないわ」と低い声で切り返した。

 対してまどか先輩は「でも小夜子ならわかるだろ?」と怯まない。

「まったく……嫌な聞き方をするわね」

 軽い溜め息と共にそう言い捨てた後で、春日先輩は笑みを浮かべて「出来るに決まってるでしょ!」と言い切って見せた。


 オーディション用の台本を用意するということで、春日先輩が部室を離れた。

 今はまだ文化祭の演目も決まっていないことや受験を控えていることもあって、お姉ちゃんとまどか先輩、春日先輩以外の三年生は今日は部活に来ていない。

 というわけで、部室には二年生のまとめ役の金森先輩、三つ編みの尾本先輩、キャラと見た目にギャップのある寺山先輩、眼鏡の松本先輩、控えめな赤井先輩、そしてかなで先輩の六人に、お姉ちゃんとまどか先輩で、先輩は八人となった。

 一方、一年生も、千夏ちゃん、史ちゃん、加代ちゃん、オカルリちゃん、委員長、茜ちゃん、ユミリン、そして私の八人いる。

 先輩と後輩が同数ということで、一人ずつコンビを組むマンツーマンの練習をすることまでは割とすんなりと決まった。


「お姉ちゃんとして、私が凛花を教えるのが良いと思うのだけど!」

 間違ったことなどなにも言っていないと言わんばかりの強い主張に、まどか先輩が「職権乱用はするんじゃない、良枝!」と冷たくツッコミを入れた。

「職権乱用なんてしてないでしょう?」

「いや、組む後輩を名指しなんて、駄目に決まってるだろう? 何度かコンビを組んでるならまだしも、まだ一年生とのコンビは君で無いんだから」

 もの凄く冷静に、正論を放つまどか先輩に対して、お姉ちゃんは「安心して頂戴! 私は凛華が生まれたときから姉妹というコンビを組んでいるから!」と言い出す。

 流石に頭を抱えたまどか先輩は、最早説得は無理と判断したらしく「はじめ」と金森先輩に声を掛けた。

「は、はい」

 二人の掛け合いに圧倒……というよりは呆れて引いていた様子の金森先輩が少し詰まりながらも返事をする。

「カードで決めよう。1~8のカードを二組用意して」

 金森先輩は「了解です」と答えて、すぐに備品入れへ駆けていった。


「ルールは簡単。ここに1~8のカードが二組ある。先輩組と一年組でそれぞれカードを引いて、同じ番号を引いた者同士が、今日の練習の相方だ」

 まどか先輩の簡潔にしてわかりやすい説明に、皆が「「はい」」と頷きと共に返事をした。

 ディーラー役は、まどか先輩が担当する。

 まずは先輩方がカードを引くということで、机の上に八枚のカードを数字が見えないように裏返しに置かれた。

 同時に自分の選んだカードを指さし、被らなかったらそのカードを貰う。

 誰かと被ったらジャンケンをして、買った方がカードを得て、負け残った組は残るカードからまた自分の欲しいカードを選び、重なったら繰り返すという先ほどのグループ決めとほぼ同じだった。


「なんで一年生からにしないのかしら?」

 お姉ちゃんの問い掛けに、まどか先輩は「無いとは思うけど、圧力でカードを交換するなんて事が起こらないための保険だな」とシレッと答えた。

「この、演劇部にはそんな事をする人はいないわよ?」

 もの凄く真面目な顔で言うお姉ちゃんに、まどか先輩は笑顔で「私もそう思っているとも」と返す。

「じゃあ」

 パッと表情を明るくしたお姉ちゃんに「じゃあ、どっちが先に番号が決まっても問題ないだろう?」とまどか先輩は断言した上に、黒板に1~8の数字を書き込んだ。

「自分のカードが決まったら、ここに名前を書いて」

 流れるように指示を出したまどか先輩は、先輩方の多くが黒板を見ている間に、手早く裏返したカードを並べてしまう。

「私は最後に余ったカードで良いよ。配置したのは私だからね。その方が公平だろう?」

 まどか先輩はそう言って笑みを見せると、先輩方に向かってカードを選ぶように促した。

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