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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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舞踏会を

 苦笑するお姉ちゃんに代わって、春日先輩が「まあ、決まっていないとはいっても、全く何も話し合われていないというわけじゃ無いのよ」と言った。

「それって、どういうことですか?」

 千夏ちゃんのストレートな疑問に、今度は金森先輩が「手伝ってくれる……というか、一緒にやってくれる部活の希望はだいたい決まってるんだよ」と答えてくれる。

「傾向があるって事ですね?」

 私がそう返すと、まどか先輩が「そそ、そういうこと」と頷いた。

「それって、どんな傾向なんです?」

 新たに委員長から出た問いには、お姉ちゃんが「簡単に言うと、舞踏会のシーンを入れること……ね」と答える。

 すると、委員長は「なるほど」と頷いてから「去年がロミオとジュリエットで、一昨年がシンデレラ……どっちも舞踏会のシーンがありますね」と口にした。

 私は驚きで、思わず「委員長、過去の演目調べてたの?」と聞いてしまう。

「そんな、ビックリすることじゃないでしょう? 過去がどうか調べるなんて簡単に出来るし」

 サラリと言う委員長に、私は「そ、そうなの?」と返した。

「まあ、凛花ちゃんはお姉さんが部員だから、調べるって発想はないかもしれないけど、過去の文化祭のパンフレットは全て図書室に保管されてるのよ。他にも文集だとか、卒業アルバムとかもね」

 委員長に言われて、私は「学校で作られたものは、図書室で閲覧できるんですね」と納得する。

 私の言葉を聞いて、委員長は「過去の冊子類を閲覧できるのは、実際に図書室を使ってみるか、図書委員でも無いと知らないことかもしれないわね」と頷いた。

 委員長から聞いた図書室に係わる内容は、完全に脱線だったので、私は慌てて話の流れを変える。

「えーと、それで、アレですよね。協力してくれる部活の方達は舞踏会があるお話しを要望しているから、今年もそうなるだろうってことですよね?」

 かなり雑で強引なまとめだけど、大筋は間違っていないはずだ。

 そう思って先輩方の反応を待っていると、春日先輩が「簡潔に言えば、その通りですね。ドレスを作ったり着たりっていうのは憧れますし、これまでの先輩方も力を入れてきましたから、私たちはどうしよう。あるいはこうしたいという考えが既にあるので、ここで急に方針を変えようとは思わないでしょうね」と言う。

「確かに、ヨーロッパの舞踏会をイメージしてるところに、急にアラビアンナイトやりますよとか、かぐや姫やりますよとか言い出したら、大変なことになりそうですもんね」

 私がそう言って返すと、史ちゃんが「も、もしかして、凛花様はそういった作品の方が良いのですか?」と真剣な顔で聞いてきた。

 これは、切り返し方を間違えると大変なことになると思った私は「希望はないよ……むしろ、どんな作品、どんな訳が来ても全力で演じるつもりだよ」とはっきりと言い切る。

「おーー、気合入ってるじゃん、リンリン」

 そう言いながらユミリンが私の肩を叩いてきた。

「ちょ、ちょっと、ユミリン、力加減!」

 少し痛かったので、肩を擦りながら苦情を入れる。

「こら、一年生、姫さまを乱暴に扱うんじゃ無いよ!」

「そうですよ。力加減を間違わないでください!」

 私の反応を切っ掛けにして、かなで先輩と史ちゃんが、ユミリンに対して怒りを見せた。

 正直、ユミリンには申し訳ないけど、史ちゃんの意識が逸れたことにホッとしてしまう。

 とはいえ、放ってはおけないので「今は話の途中だから、それくらいにしよう」と提案して、史ちゃんとか撫で先輩には矛を収めて貰った。


 なんだか変に話を中断させてしまった私は再び話を再開して貰うために、切っ掛けを作ることにした。

「えっと、ところで、舞踏会と言うことは社交ダンス……踊るんですか?」

 私がそう話を振ると、まどか先輩が「そこまで本格的なものではないけどね」と苦笑する。

「でも、安心してくれて良いわ。ダンスはちゃんと社交ダンスの大会に入賞した経験のある先生が指導してくれるわ」

 春日先輩の言葉に、加代ちゃんが「そんな先生もいるんですね」と目を丸くした。

 そんな加代ちゃんを見ながら、お姉ちゃんは「それがねぇ」と苦笑する。

「なにか、あるの? お姉ちゃん」

 私の問い掛けに対して、お姉ちゃんは「まあ、大したことじゃ無いけど、その先生、体育の先生じゃ無いのよねー」と教えてくれた。

「へ? 体育じゃないの? それじゃあ、音楽?」

 私の中では体育で無いなら、音楽辺りが相性がよさそうかなと思ったのだけど、実際はそれも違ったらしい。

 首を左右に振ったお姉ちゃんは「残念」と言って笑みを見せた。

「正解は?」

 私がそう尋ねると、お姉ちゃんは「理科の先生」と教えてくれる。

「理科かぁ……想像もしてなかった」

 私が素直にそう返すと、まどか先輩が「何でも、全日本舞踏競技選手権大会の初回だったか、第二回だったかに出場したらしいよ。今ではだいぶ太ってしまって、自分では踊れないみたいだけどね」とその先生のことを教えてくれた。

 これに、オカルリちゃんが「あー、もしかして、セキトリ先生?」と思い当たったらしい先生の名を上げる。

 対して、金森先輩が「正解」と両手を頭の上で重ねて、腕で大きな丸を作って見せた。

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