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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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選抜方法

「演目が決まったし、台本は演劇部に遺されているモノを元に、手直しして使おうと思うのだけど、何か意見のある人はいるかな?」

 金森先輩の確認の言葉に、意見がある人はいないようで、挙手する人はいなかった。

 私としても、演目や台本について意見はない。

 が、この後の流れが気になったので「あの、いいでしょうか」と手を挙げた。

「はい、姫ちゃん……じゃないや、凛花ちゃん」

 金森先輩にそんな風に指名された私は「私が自分が呼ばれてると分ければ、呼び方はお任せしますよ」と伝える。

「ありがと」:

 苦笑しながら返してきた金森先輩に頷いてから「えっと、配役とか……諸々はどういう風に決めていくのか、確認させて貰っても良いでしょうか?」と、本題を切り出した。

「ああ、そうだね。説明するよ」

 そう言って頷いた金森先輩はチラリと一瞬だけまどか先輩を見てから「まず、配役は来週の土曜日に決めます。それに当たって、今週の土曜日までに自薦、他薦問わず、配役の希望を上げて貰う形になります」と説明してくれる。

「今回は、私が姫ちゃんのお姉さんでもある良枝部長から、新人戦の取り仕切りを任されているので、配役の希望や推薦を私の方に伝えてください」

 金森先輩に「はい」と返事をすると、皆も続いた。


「もしも、複数人の推薦や立候補があった場合はどうするんですか?」

 委員長の質問に、金森先輩は「基本的には投票だね。立候補、推薦は関係なし、名前が挙がった人は来週の部活内で、その登場人物を演じて貰う機会を設けて、皆の投票で決めます」と答えた。

「ちなみに、一人で何役も力行はしないと思うので、もし、複数の役に推薦があった場合は、その中から本人にやってみたい役を選んで貰って、投票をするので」

 金森先輩の言葉に、かなで先輩が「あー、全部姫さまの若草物語が見たいと思っても、姫様は残念ながら一人しかいらっしゃらないですものね」とおかしなことを言い出す。

 と、思っていたら史ちゃんが「かなで先輩の気持ちは私もよくわかります」と深く頷いた。

 その発言に反応して振り返ったかなで先輩は史ちゃんに歩み寄る。

 二人はそこで無言で固い握手を交わし合った。

 私の本能がその光景を見て、二人に触れてはいけないと警告を発したので、全力でスルーすることに決める。

 荷重係わらず、腕組みをして「うーーん」と唸っていた金森先輩が「流石にコンテストでもあるから、全キャスト姫ちゃんって言うのは、無理だけど……朗読劇とかなら出来ると思うよ」と言い出した。

 思わず「なっ」と声が口から飛び出る。

 そんな私に苦笑しながら金森先輩は「あ、別に姫ちゃんに無理をしろってワケじゃ無いよ。ただ、役の推薦をするに当たって、台本の朗読を聞いた後の方が、その人がどの人物の役に向いているかより判断できるんじゃ無いかと思ったんだよね」と頬を掻きながら言った。

「あー、なるほどです。確かに、満遍なく登場キャラのセリフを言うのは、わかりやすい指標になりますね」

 委員長が金森先輩の考えに頷くと、オカルリちゃんも「声優さんのオーディションで、監督さん達の前で、セリフ読むのは定番だよね」と実例を出す。

 これを聞いて「確かに、まだ顔を合わせて日数の少ない私たちがイメージだけで投票するよりも良いかもしれないですね」と松本先輩が眼鏡に触れながらコクコクと頷いた。

「んー、じゃあ、今回は皆、登場人物のセリフを読む機会を設けようよ、はじめ」

 寺山先輩はかなりやる気のようで、声を弾ませている。

 金森先輩はまどか先輩に視線を向けながら「えっと、そういう方法を加えても良いですか?」と尋ねた。

 まどか先輩は「もちろん……というか、オーディション風に各登場人物のセリフを読むって言うのはいいね。文化祭の劇の方でも役決めに使わせて貰おうかな」と笑う。

 そんなまどか先輩に、千夏ちゃんが「あの、今まではそういう方式で逸ってなかったんですか?」と質問を投げ掛けた。

 対してまどか先輩は「もちろんセリフを読んだり、演技をしたりっていうのはやっていたけどね。全登場人物のセリフを読んで参考にするっていうのは無かったんだよ」と返す。

 まどか先輩の言葉に深く頷きながら尾本先輩は「自分でも気付いていない……自分に向いている役が見つかるかもしれないってことですよね」と噛みしめるようにして口にした。

 尾本先輩が発した言葉に対して、まどか先輩は目を輝かせながら「プロの演劇の世界では、オーディションは狭き門だから、一人当たりの実力や向き不向きを見る実演の時間はそれほど多くとれない。けど、中学の部活の私たちなら、自分の向いてる役を探すために全登場人物をやってみるなんて力業も出来る……結果として、今までのイメージや得意不得意の石記を超えた出会いが見つかるかもしれない」と声を弾ませる。

「私たちだから出来る選抜方法を思い付いた以上、試さない手は無いだろう?」

 まどか先輩がワクワクしているのが伝わってくる強い言葉聞く私も含めたその場の皆は、やってみたいという心を震わす熱に見事に飲み込まれた。

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