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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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私たちの番

 仮入部のオカルリちゃんにしても、裏方希望の委員長や茜ちゃんにしても、反対の声をあげなかった。

 緊張してるとはいえ、史ちゃんや加代ちゃんはしっかり覚悟を決めているようだし、先輩達の実力を目にした直だからであろう千夏ちゃんは静かに燃えている。

 最後に様子を見たユミリンは特に普段と変わらなく見えるので、気持ちは出来ているようだ。

 こうなってくると、後は覚悟を決めて自分に巡ってきた役を熟そうと決めて、まどか先輩がカードを並べた机の前に立つ。

 それを見たまどか先輩が「それじゃあ、せーの、で、いいかな?」と私たちに向かって尋ねた。


「運命を感じるね」

 目をキラキラさせて私にそう言ったのは、赤の4のカードを持つ千夏ちゃんだった。

 私の手に回ってきたのは、赤の3、三女のベスで、千夏ちゃんとは元々の切っ掛け担った解くの配役通りなので、運命というのもわからなくはない。

 ちなみに、私たちの赤チームで長女を務めるのは茜ちゃんで、次女のジョーはオカルリちゃんだ。

 青チームは長女メグに委員長、次女のジョーが加代ちゃん、三女のベスが史ちゃんで、四女のエイミーがユミリンだったりする。

 史ちゃんは私と同じベスだったことを喜んでいたし、加代ちゃんは主人公に当たるジョーに、それなりのプレッシャーを感じているようだ。

 委員長は平然としている一方で、ユミリンが頭を抱えている。

 これまで、千夏ちゃんと同じく、私に対して姉のような振る舞いをしてきていたので、一番末の妹というのは馴染まないんだろうなとは思った。

 なにかアドバイスなりフォローが出来れば良いんだろうけど、私だってそんなに自信があるわけじゃ無い。

 まあ、最初に話が出たときにベスと言われていたので、他の人より覚悟というか、役に向き合えてはいる筈だ。

 先輩方が使っていた台本を、皆で分け合って、8人全員が台本を持った状態になる。

 そのまま、読み合わせの前にセリフに目を通す時間を貰えたので、チーム毎で固まって準備をすることになった。


「茜ちゃんとオカルリちゃんは、その……出来そう?」

 私がそう尋ねると、オカルリちゃんは「まあ、そもそもうまく出来ると思ってないから、プレッシャーは無いかな」と笑った。

 視線を移した茜ちゃんは「私もぉ、上手くやるというよりはぁ、しっかりと台本を読むことに意識を集中しようと思ってるよぉ」と言う。

 これを聞いた千夏ちゃんが「確かに、初めてなのに、上手くやろうと思わない方が良いね。変に力むとおかしくなるからね」と頷いた。

 その上で「初めてなのにアドリブとか入れると、他の人に迷惑を掛けかねないし、ちゃんと台本通りっていう茜ちゃんの姿勢は素晴らしいと思う」と千夏ちゃんは茜ちゃんを絶賛する。

 対して茜ちゃんは、少し得意げに「自分に出来ることを~しっかりやるのは大事だってぇ教わってきたからねぇ」と返した。

 すると、オカルリちゃんが興味深そうな顔で「お、それは、仏教の教えかな?」と尋ねる。

 茜ちゃんは「んー、どっちかって言うと、芸人さんの教えかなぁ~『小さな事からコツコツと』って」と返して微笑んだ。

 オカルリちゃんは一瞬目を点にしてから「なるほどー、家がお寺だからって何でも仏教の教えとは限らないね」と手を打つ。

 そんなオカルリちゃんを見ながら、茜ちゃんは「でもぉ、学びは様々なところにあるって教えてくれたのはお爺ちゃんだからぁ、源流は仏教の思想かもねぇ」と笑ってそう結んだ。


 オカルリちゃんと茜ちゃんの話を興味深く聞いてるうちに、練習時間は終わりを迎えてしまった。

 軽くしかセリフを追えていなかったせいで、少し不安がある。

 一方、同じチームの茜ちゃん、オカルリちゃん、そして千夏ちゃんは自然体というか、緊張する素振りが見えなかった。

 皆の様子を目にした私は、自分だけが余裕がないのではないかという不安を覚え、身体が強張ってしまう。

 そんな自分に折り合いを付ける前に、まどか先輩の「それじゃあ、早速読み合わせやってみようか」という声が掛かってしまった。

 思わず台本を掴む手に力が入ってしまう。

「凛花ちゃん」

「ひゃっ!」

 ポンと背中を叩かれ、変な声が口から飛び出た。

 ドキドキと暴れる心臓を抑えつつ視線を後ろに向けると、心配そうに私を見る千夏ちゃんと目が合う。

 距離が近いお陰でどうにか聞き取れるほどの小さな声で、千夏ちゃんは「大丈夫、皆緊張してるよ」と声を掛けてくれた。

 その後で「失敗しても当然のことだし、笑う人なんていないから、落ち着いて頑張ろう!」と千夏ちゃんは言う。

 オカルリちゃんや茜ちゃんを見ながら言ってくれたことで、千夏ちゃんの言葉は、私だけに向けたものでは無く、チームに対してに映ったはずだ。

 そんな小さな心遣いに感謝しながら、私も千夏ちゃんから、オカルリちゃん、茜ちゃんと視線を向けつつ「がんばろう!」と声を掛ける。

 対して茜ちゃんとオカルリちゃんの二人が頷いてくれたことで、私たちの台本読みに挑む準備は整った。

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