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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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この先のために

「仮にの話だけど、例えば、神楽保存会とか、神楽を研究する会という名称にして、我が家が氏子をしている神社の神楽舞いの継承を促進する会とかにすれば、メインは神楽舞いを務める凛花ちゃんでありながら、学校の先生方も顧問に立ってくれるだろうし、伝統の保全にも繋がるわけだから、学校に公認して貰える可能性は高いと思うわよ」

 委員長の口から放たれる淀みの無い話に、私はなるほどと思ってしまった。

 やり方としては、かなり際どいものの、嘘偽りは無いわけで、創部できなくは無いと思える。

 と、ここで話を聞いていた金森先輩が「おーーい。新人戦の話してるのに、違う部活作りの話は困るなぁ」と苦笑しながら割って入ってきた。

「金森先輩 す、すみません」

 私が慌てて頭を下げると、委員長も「心配をさせてしまったら申し訳ありません。可能性の話をしただけですから、気にしないで貰えると助かります」と続いて頭を下げる。

 対して金森先輩は「いや、全然安心できないよ」と返してきた。

 その返しにビックリしていると、金森先輩は「だってさ、実際に君たちの話通り、部長の妹ちゃんの部活作ったら、皆移籍しちゃうでしょ?」とジト目になる。

「そんなことは……」

 私はすぐにそう否定したのだけど、金森先輩は「妹ちゃんは、そう思ってるかもしれないけどね」と切り返してきた。

 さらに「ほら」と促されて、金森先輩に示されるまま皆の顔を見てみると、史ちゃん、加代ちゃん、そして千夏ちゃんと視線を逸らす。

 オカルリちゃんは「私はまだ本入部してないから、移籍にはなら無いよ」と言い放った。

 続いてユミリンが「私は、リンリンがいるから入っただけだし、写るなら、まあ、止めるかな」と言う。

 金森先輩に向き直った私は「確かに、移籍者多数になりそうです」と頭を下げた。

 すると、金森先輩は笑いながら「でしょう?」と言う。

「自分の影響力が想像より大きいことを自覚した方が良いよ、妹ちゃん」

 金森先輩の追加の言葉に、私は「はい」以外返す言葉が見つからなかった。


「とりあえず、皆のやる気にも繋がるから、部活を割るかもしれない話は止めて貰って良いかな?」

 金森先輩の言葉に、委員長が代表して「はい」と頷いた。

「その代わり、演劇部として、神楽舞いとか、アイドルの手助けはするからさ」

「え、いいんですか?」

 私が金森先輩にそう聞き返すと、松本先輩が代わりに、自分の掛けている眼鏡を押し上げながら「元々、林田部長……お姉さんから、その、御神楽の話とか、文化祭のアイドルステージの話は聞いていて、可能なら手伝うように言われているんです」と教えてくれる。

「まー、私たちも君たち有望株に部活を辞めて貰うわけにもいかないからさー」

 ヒラヒラと手を揺らしながら、軽い口調で寺山先輩が続けた。

「ま、まだ、その、役者の方で、さ、参加してくれてる、い、一年生は、ち、千夏ちゃんしかいなくて……」

 もの凄くビクビクしながら赤井先輩が千夏ちゃんを見ながら言う。

「そ、それに、ひ、姫ちゃんが、他の部活を作ったら、かなでちゃん止めちゃうから……」

「あー、うん、姫さまが演劇部を辞めて、他の部活に写るなら、演劇部辞めるね」

 もの凄く軽いノリでかなで先輩は平然と断言した。

 かなで先輩の容赦の無い断言に、赤井先輩が「あーうー」と意味を成さない声を漏らしたので、私は慌てて「大丈夫です、新しい部活は作りませんし、私は演劇部で頑張るつもりなので!」と宣言する。

「姫さまがいるなら、私も演劇部継続で!」

 かなで先輩が続投を宣言したことに、心底ホッとしたのか、もの凄く熱の籠もった不快溜め息を吐き出した赤井先輩は「姫ちゃん、ありがとう」と目を潤ませながら私を見た。

「き、気にしないでください」

 別に何かをしたわけじゃ無いのに、妙な罪悪感がある。

 そのせいか、赤井先輩の感謝の言葉が心苦しかった。


 いろいろ寄り道はしたものの、改めて新人戦の話を進めることになった。

 この場で、三年生であるまどか先輩やお姉ちゃんが口出しをしていないのは、新人戦は一、二年生が中心となると言うのに加えて、夏までに決めなければいけない、新部長や副部長などの役職の目星を付ける意味もある。

 一通りの流れを決められるかを見定めるワケだけど、まどか先輩はともかく、お姉ちゃんはかなりソワソワしていて口を挟みたいんだろうなと言うのが伝わってきて、私もなんだか落ち着かなかった。


「改めて、皆に確認したいんだけど、若草物語以外の演目をやってみたいって人はいる?」

 改めてそう切り出金森先輩の問い掛けに、二年の先輩方は首を振って答えた。

「一年生は、どうかな?」

 金森先輩は千夏ちゃんから順番に私たちを見ながら問い掛ける。

 二年の先輩方には申し訳ないけど、若草物語を既にやる気になっていた私たちとしては異論のある人はいなかった。

 反応……というか、異論が無いことを確認した金森先輩は「それじゃあ、配役に……」と話を進めようとする。

 すると、ここまで黙っていた尾本先輩が「はじめ、いいかしら?」と手を挙げながら金本先輩の発言を遮った。

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