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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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ぬくもり

「ただいまー」

 先に玄関を潜ったお姉ちゃんに私も続いて、家の中へと入った。

「た、ただいまー」

 玄関の間取り自体は私の知っている林田家と変わらない。

 その一方で、今は白いコンクリートが平らに敷き詰められているのに比べて、大きめな自然の石を平らに削ったものが並べられ、その周囲を丸い砂利石で敷き詰めた上からコンクリートで固めているような見慣れない構造をしていた、

 壁も、今の白い抗菌素材の壁では無く、社会科見学や修学旅行で泊まった昔ながらの民家の壁に使われている砂壁で、かつての家の姿に軽い衝撃がある。

 築五十年以上になっているので、家にも歴史があるんだなとしみじみと感じさせられた。


 お姉ちゃんは後ろ向きに靴を脱いで、玄関から廊下に上がると、脱いだばかりの靴を手に立ち上がった。

 林田家はサイズ的に、玄関に靴箱を設置できなかったので、廊下すぐの物置の中に靴箱が設置されている。

 多少の違いはあっても、その辺は同じなのだろうと判断した私は、お姉ちゃんに倣う。

 大股で、廊下に上がって振り返って、靴を取ろうとし田のだけど、今の私にはかなり難易度が高い。

 何しろ、玄関の土間から廊下までは結構な高さがあるので、軽々とこなせるお姉ちゃんと違って、身長差のある私ではかなり前のめりになら無いと靴が撮れないのだ。

 現代の林田家には、廊下と土間の間に中間の高さの小上がりがあるので苦労してはいなかったけど、この時代の林田家には未だ小上がりが造られていない。

 そんなわけで、今にも落ちそうになりながらもどうにか靴を取り上げた私は、心配そうな顔でこちらを見ていたお姉ちゃんとバッチリ視線が交わることになった。


 憐れみに近い目に感じられてもの凄く居たたまれなくなった私は「ほら、ユミリン来ちゃうから、靴しまおう!」と、お姉ちゃんに行動を促した。

 その発言が功を奏したのか、お姉ちゃんはハッとした表情で「そうね、ユミちゃん、来ちゃうわ」と言って踵を返す。

 私の記憶と同じ場所に家族分の靴箱が設置されていて、お姉ちゃんが空いてるスペースに靴を収めた。

 お姉ちゃんに続いて、私も靴を収めようとしたところで「あら、二人とも一緒だったの?」と聞き慣れない女の人の声が耳に入る。

 振り返ると、そこにはどこかお姉ちゃん……どちらかというと今のお婆ちゃんの姿に似た女の人が立っていた。

「母さん、大変なのよ」

「ん?」

 お姉ちゃんが母さんと呼んだことで、私はやっぱり本当の……京一にとってのお婆ちゃんなんだと確信する。

 私……京一として生まれた頃には、病気でこの世にはいなかったお婆ちゃんを目の前にしているという事実に、胸がざわめくのを感じた。

 一方、お姉ちゃんは私が保健室に二回も送り込まれたことを、身振りを交えて説明している。

 あらあらと言いながら、時折こちらに視線を向けてくるお婆ちゃん……いまはお母さんに対して、会うことは無いと思っていた人に会えた感動なのか、おかしくない立ち振る舞いをしなければいけないというプレッシャーからか、私はどう反応をしたらいいのか徐々にわからなくなってきてしまっていた。

 ぐるぐると考えがまとまらない混乱状態の中、お姉ちゃんの説明が終わる。

 何か行動を起こさねばと思いながらも、行動を起こせなかった私は、気付くと、ゆったりとした動きで歩み寄ってきたお母さんのエプロンの胸元に頭を預けていた。

 

「凛花ちゃん、よく頑張ったね。偉いよ」

 そう言って優しく私の頭を撫でてくれるお母さんの声を聞いているだけで、涙がこみ上げてきた。

 泣き出さないように堪えていると、お母さんはお姉ちゃんにも声を掛ける。

「良枝もありがとうね。さすがお姉ちゃんだね」

 お母さんの言葉に、お姉ちゃんは「ま、まあね。凛花は大事な妹だしね」と照れを誤魔化すような素振りを見せた。

 この世界限定の関係かもしれないけど、明確に愛情を示してくれるお母さんとお姉ちゃんの存在はとっても暖かく、心地よい。

 リンリン様と繋がれたときよりも大きな安堵感を覚えて、自分がもの凄く不安というか、孤独を感じていたことを痛感した。

 癒されていく感覚に身を任せていたいと思っていると、不意にお姉ちゃんが「あっ」と声を上げる。

 何だろうと思いながら顔を少しだけ動かして視界の隅にお姉ちゃんを収めた。

 それを合図にしたわけでは無いだろうけど、タイミング良くお姉ちゃんは「ユミちゃん、来ちゃうよ。甘えてるところ見られちゃうよ」と言い出す。

 普段の私なら、ここで慌てて行動を開始したのだろうけど、お母さんのエプロンの胸は心地よくて、気付けば「別に良いかな」と返していた。

 そんな私の発言に、お姉ちゃんは一瞬驚いた顔をしてから、心配するような表情を浮かべて「アンタ、そんなに辛かったの?」と声を掛けてくる。

 こうなると、甘え続けるわけには行かないなと、気持ちを切り替えてお母さんから身体を離した。

「甘えたくなっただけで、辛くは無かったよ」

 私の返答が軽かったのもあってか、お姉ちゃんは安堵の表情を見せながら「あんたねぇ」と苦笑を浮かべる。

 そんなお姉ちゃんに、私は「早く着替えよー」と言ってから、お母さんに「それじゃあ、着替えてくるね」と伝えた。

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